2026年の投資相場を読み解き、あなたのNISAやiDeCoのポートフォリオを考える参考書『資産運用の論点2026』(日本経済新聞出版)から、一部を抜粋してお届けします。今回は、2026年の日本マーケットを展望します。
1回目
「債券自警団」がリスクに? 2026年世界経済の景気を展望
2回目
2026年の米国経済展望 雇用鈍化と消費堅調が示す二面性
3回目
2026年の日本・欧州・新興国の経済を展望する
4回目
米国一極集中に変化の兆し? 2026年の米国相場の展望
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相対的に良好な位置づけの日本株
米国株や欧州市場に過熱感や一段の相場押上げ材料が必要とされる一方、日本株は相対的に良好なポジショニングにあるでしょう。その背景には、構造改革の進展やガバナンス改善に加え、マクロ環境と制度面の後押しが重なっている点が挙げられます。具体的には、以下の5つの要因が株式市場を支えています。
① 政治は積極財政に動くか
与党はすでに少数与党の体制にあり、公明党の連立離脱によって政権基盤の不安定さはさらに強まりました。その後、高市早苗氏の下で自民党は日本維新の会との距離を実質的に縮めたものの、政権基盤の脆さそのものが解消されたわけではありません。そのため、財政・経済政策を進めるうえでは野党との協調が不可避となっています。野党側では減税や給付拡大、公共投資などの積極財政路線が支持を集めており、自民党内にも「規律ある積極財政」を掲げる勢力が台頭しています。自民・維新の連立に踏み切っても、与党はなお国会過半に届かず、法案処理・予算運営では他党との調整も不可避であり、連立の枠組み自体も強固ではありません。
こうした構図から判断すれば、政策として支出拡大・減税に向かう方向性は回避しがたいものとなっています。短期的には、拡張財政は景気刺激・企業業績・家計負担緩和を通じて市場に歓迎される面がある一方、長期的には債務の持続性や国債市場の信認を揺るがすリスクを伴います。直近でもフランスでは、政治的停滞が財政再建を遅らせ、その不安が国債利回り上昇という形でコスト化しており、日本も無関係ではありません。債務膨張と統治機能への疑念が同時に表面化すれば、市場は迅速に反応する可能性があります。
さらに、日本の場合、積極財政へ動くとしても、主張の異なる複数の野党との調整が不可避であり、合意形成が滞れば政策の停滞そのものがリスクとなります。高市政権は維新との合意を梃子に安定化を図る一方で、政策実行段階ではなお多党間調整が不可欠であり、その流動性が基礎的不確実性として残存しています。すなわち、拡張方向が「望ましいか否か」以前に、それを実行可能な政治的合意、そして市場の信認を損なわない設計が確保されるかどうかが問われており、難しいかじ取りが迫られている状況にあります。
② 設備投資の拡大
日本企業は、長らく設備投資を抑制してきた反動もあり、ここ数年で投資意欲が高まっています。とりわけデジタル化に向けた構造転換は待ったなしであり、電池、再生可能エネルギー、データセンター、半導体製造装置といった分野で投資が急増しています。さらに人手不足が慢性化するなか、省力化や自動化に向けた機械投資、AI導入による業務効率化も進展中です。こうした投資は単なる設備更新ではなく、将来の生産性や企業競争力を高める戦略的な動きであり、中長期的に企業収益の底上げにつながります。
③ 賃上げと消費回復
2024年の春闘では、賃上げ率がバブル期以来の高水準となり、労働者の可処分所得を押し上げました。さらに2025年の春闘においても、大企業を中心に5%前後の賃上げが相次ぎ、中小企業にも波及しつつあります。二年連続で高水準のベースアップが実現したことで、単発ではなく持続的な賃上げサイクルが定着し始めたと評価できます。
名目賃金の伸びが物価上昇率を上回る見通しが強まっており、実質購買力の改善が期待されています。耐久消費財の買い替え需要やサービス消費の回復が内需を押し上げ、企業収益に波及する好循環が形成されつつあります。賃上げの継続は、国内経済の安定成長を支える最大の要素のひとつとなっています。
④ インフレの定常化
日本経済にとって長年の課題だった「デフレの常態化」からの脱却が、ようやく現実味を帯びています。これまでの物価上昇は原材料高や円安など外部要因による一時的なコストプッシュ型が中心でした。
しかし現在は、賃金上昇と物価上昇が相互に作用する「賃金―物価連動」型への移行が始まりつつあります。さらに、サプライチェーン再編やサービス価格の粘着的な上昇が下支えとなり、適度なインフレが経済に根付きつつあります。このような環境は企業にとって投資や賃上げを正当化する基盤を提供し、結果として株式市場全体の成長期待を押し上げています。
⑤ 株主還元と市場改革
東京証券取引所の「PBR改革」を契機に、企業の資本効率改善への意識が一段と高まっています。ROEやROICを意識した経営戦略が広がり、配当や自社株買いによる株主還元も急拡大しました。
実際、2024年度の自社株買い枠は過去最高の19兆円に達し、時価総額比でも約2%という規模感です。こうした積極的な株主還元姿勢は株価の下支えとなり、海外投資家にとっても日本株を再評価する契機となっています。さらに、NISA拡充を背景に「貯蓄から投資へ」の流れが個人マネーを市場に呼び込み、中長期的に需給面の安定化をもたらしています。
2026年の相場を読み解き、あなたのポートフォリオ戦略を考える。「既存の投資方針をプロの視点で見直すための参考書」として、プロの現場で培ってきたポートフォリオ構築の思考プロセスを、誰もが実践できるよう体系化。
塚本 憲弘著/日本経済新聞出版/2,200円(税込み)

