健康でいたいけど、おいしいものを我慢するのも、面倒なことを続けるのもむずかしいですよね? 自分の暮らしを楽しみながら、賢く食べて優雅に生きるフランス人は食事制限もジム通いもしません。日経ビジネス人文庫『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』(ミレイユ・ジュリアーノ著/羽田詩津子訳)から「贅沢(ぜいたく)で、太らない」技術を抜粋して紹介します。2回目は、「フランス人の水の飲み方」について。

その空腹感は喉の渇きかも

 ひとつ理解しておかねばならないことは、喉の渇きはしばしば空腹と誤解されかねないということだ。少し空腹なとき、実はちょっと喉が渇いている、ということがよくある。そんなふうに、ほとんど水を飲まずに食べ物の水分に頼りすぎているとしたら、ちょっとした喉の渇きをちょっとした空腹と混同することも不思議ではない。同じ理由から、水は空腹の強力な癒やし手になる。定期的に胃に水を供給することによって、満足感を与え、同時に空腹感をなだめることができる。

 わたしはたっぷり水をとることに自分なりの考えを持っている。バッグに入れてボトルを持ち歩いているが、どちらかといえば緊急用で、その日飲む分ではない。最大の恩恵を得るためには、1日じゅう水を飲む必要があるのだ。起きたらまず1杯飲み、ベッドに入る前に1杯飲み、そのあいだにもたくさんの水を飲む。毎食30分前ぐらいに1杯飲む(それを自分に思い出させる必要もない。すぐに無意識のうちにできるようになった)。だが、食事といっしょに水を飲むことは控えている。消化を遅くするからだ(ただし、体質改善と体重の安定化の時期には水を食事といっしょにとることをお勧めする)。

 かたや、ガス入りの水は個人的にはたまに飲むだけだ。炭酸はシャンパンで十分だし、シャンパンにはシャンパンならではの喜びがあるからだ。だが夏の時期、レモン果汁をほんのちょっぴり入れた微発泡のミネラルウォーターは、とてもすがすがしい気分になれる。そしてもちろん、サンジェルマン通りのお気に入りのカフェで飲むレモンジュースは大好物だ。

コーヒー・紅茶派でなく、チザン派

 カロリーがまったくないということを別にして、水のすばらしいところは、どういう目的であれ、飲みすぎるということがないことだ。水はすべての肉体的機能に不可欠で、水を排出するという作業ですら、毒素をとり除き、ミネラルの沈殿を防ぐので体にいい(腎臓結石ができたことがあれば、絶対に水不足になってはならない)。水は体内の電解質のバランスを保つのに役立ち、筋肉痛をはじめ頭痛、虚弱、疲労を軽減する。

 さらに、年齢の襲撃とも闘ってくれる。わたしにとって水は完璧な潤滑油で、肉体と魂に生気を吹きこんでくれる。水を飲むことは、瓶に詰められたどんなハイテクの若返りの物質よりも肌のためによい。若さの泉があるなら、混じりけなしの水を噴きあげているだろう。だから水と親しくなろう。

 健康的な食生活をすれば、必要な水分の40パーセントを食べ物から得られるが、それもさまざまな種類のフルーツと野菜を食べるという前提だ。ステーキにはたいして水分が含まれていない。あとはあなたに一任されている。どれが好みにあうか、いろいろなミネラルウォーターを試してみるといい。

 もしも水道水が好みなら、浄水器かフィルターをつけよう。最終的に、可能ならどこででも、体内の水分を枯渇させないように液体を補給しよう。わたしはスープ、ハーブティー、ミルク、適度に薄めた搾りたてのフルーツジュースも好きだ。

 フランスでは通常、朝食と食事のあとにコーヒーが出されるが、アメリカ人のように、1日じゅうコーヒーのことを考えてはいない。それはぞっとする習慣である。朝のコーヒーを飲む前に水を飲んでいなければ、赤信号のまま1日をスタートすることになってしまう。というのも、カフェインがあなたの水の貯蓄を奪ってしまうからだ(すでに眠っているあいだに枯渇しているのに加えて)。

 紅茶を飲むことも、フランス人は重視しない。たしかにティーサロンは以前よりもよく見かけるが、観光客にもうひとつペストリーを食べようという気にさせるための場所でしかない! ただしチザン(紅茶以外のさまざまな植物の葉で淹[い]れたハーブティー)は自宅でもレストランでもよく飲む。ほとんど、あるいはまったくカフェインを含まず、混じりけのない水と同じぐらいおいしい。チザンは長年にわたって美食のレパートリーの一部になっていて、おもにディナーのあとか寝る前に飲んでいる。

「水を飲む」ための儀式

 わが家では、全員がハーブティーに夢中だった。たぶん母は寝る前に家族全員に水分をとらせようと工夫を凝らしたのだろうが、その経験は官能的な喜びとして思い出される。

 平日のディナーの直後、週末はもう少し遅い時刻に、香り高いお茶を淹れてカップに注ぐことは家族の儀式で、1日の最後に集まる口実になった。わたしはどのチザンにするか選ぶのが大好きだった。家には乾燥したハーブを入れたガラスの瓶がいつも6個から10個あった。アルザスに住む祖母の家の裏の森で摘むか、プロヴァンスの夏の休暇から持ち帰るかしたものだ。

水はすべての肉体的機能に不可欠だ(写真:OceanProd/stock.adobe.com)
水はすべての肉体的機能に不可欠だ(写真:OceanProd/stock.adobe.com)
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 祖母と伯母たちから、わたしは多くの民間療法について学んだ。ヴェルヴェーヌ(レモンとシトラスの香り)とティヨル(菩提樹からとれるもので、森の香りで有名)はいつ飲んでもいいが、とりわけ食後にいい。カモミール(りんごに似た花の香り)は眠りを誘う。ミントはモロッコではしじゅう出されるが(おそらく植民地時代の習慣の名残だろう)、消化を助けてくれる。そういったことだ。ときには独自にハーブをブレンドして、小袋に入れた。それと比較すると、現代のスーパーマーケットのティーバッグは、哀れなほど貧弱でそっけない味に感じられる。

 その夜の最後のお茶を飲み干すと、たいてい翌日の計画か、誰かが読むか聞くかしたおもしろいことについて話し合った。ウィークデーのあいだは15分の社交的儀式だったが、週末にはたいていお客が来ていたので、それは2時間続いた。食べ物はなしで、ただお茶だけを飲みながら。パリの学生だった頃、ひと月に一度家に帰ってきたときのことはよく覚えている。母とわたしは最後まで起きていて、チザンを何杯も飲みながら午前2時、3時までおしゃべりをした……そして、天使のようにぐっすりと眠った。

 パンと愛と冷たい水を常食にしなさい、というフランスのことわざがある。これは基本中の基本である。

食べることを愛するフランス人はどう健康を維持しているのでしょうか? 食事方法から人生を楽しむ秘訣までをひもときながら、一生ものの知恵を紹介します。付録にはすぐに作れて、心も体も満たされる40のヘルシー・フレンチ・レシピが付いています。

ミレイユ・ジュリアーノ著/羽田詩津子訳/日本経済新聞出版/990円(税込み)