パンにチョコにワイン。好きなものを楽しんでいるのに、スリムな体形を保っていることが多いフランス人。2024年、約20年ぶりにフランスを旅行したという日経ビジネス人文庫『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』訳者の羽田詩津子さんがその経験を語ります。後編は外食の工夫について。
前編「
夜中のごほうびは『敵』 コロナ太り脱却のきっかけになった本
」
フランス人は「シェア」しない?
2024年秋、20年ぶりぐらいにフランスを旅してきた。心配だったのはレストランの食事の量だ。約20年前に旅行した当時、フランス人は基本的にシェアをしない、と聞いていたので、ビストロのランチで前菜とメイン料理というボリュームのある食事をすると、夕食はおなかがすかないのでテイクアウトのサラダだけになった。旅が進むにつれ、しだいに胃も疲れ、日本から持っていったどん兵衛をホテルの部屋ですすったこともあった。
今回はちょっとドキドキしていたが、大人3人、子供1人というメンバーで、注文のときにシェアしたい、と伝えれば、取り分け皿を人数分快く持ってきてくれた(ちなみに星つきの高級レストランに関してはコースが決められている場合もあるし、そういう店には一度も行っていないので、あくまで気楽なレストランの場合だ)。
リヨンでは味に定評のあるビストロを「ブションリヨネ」として認定している。おじさんの顔のロゴマークが入り口についているので、すぐにわかる。そういうビストロの一軒で、リヨン独特のクネルという料理やレバー料理などをランチにいただいた。
クネルというのは、魚の白身をすりつぶした分厚いはんぺんのようなものに、ザリガニなどの濃厚ソースをかけ、グラタン皿で焼いたものだ。ボリュームもあり、1人でメイン料理として食べたら、途中で濃い味に飽きてしまっただろう。4人で少しずつ分け合って食べたので、とてもおいしくいただけた。またレバー料理も大量に運ばれてきたので、これもシェア。癖のある味だし、ひと切れかふた切れでちょうどよかった。というわけで、今回はシェアをしたおかげで、郷土料理もあれこれ食べることができた。どうやら、レストランの方も、シェアというやり方を受け入れているようだった。
また、コースにしても、とても少量のコースが設定されているのは大きな発見だった。ボーヌで葡萄(ぶどう)畑を見晴らすヴィラに3泊し、最終日に大好きなワインの作り手、オリヴィエ・ルフレーヴのビストロにランチを食べに行った。その晩は近所のスーパーで買いこんできた肉や野菜でバーベキューをする予定だったので、ランチは軽めにすませたかった。メニューを見ると、前菜+メイン+デザートのふつうのコースの他に、メイン+デザートという少量のコースも設定されているではないか。これなら夕食に響かないと考え、ありがたくそれを選択した。
もっとも3品でも2品でも、値段的には4ユーロしかちがわないので、わたしたち以外のお客は、ほぼ全員が3品コースをワインと合わせてゆっくり楽しんでいた。昼間からワインをそれほど飲みたくない場合もあるし、選択肢があるのはうれしい。
「いろんなものを少しずつ食べる」
2024年12月に新装版として出た拙訳『 フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか 』で、著者のミレイユ・ジュリアーノは「1回の食事で何かを250g食べたら多すぎる」と警告している。となると、20年前、必死に平らげた大盛りのコック・オ・ヴァン(チキンの赤ワイン煮込み)はあきらかに量が多すぎた気がする。「いろんなものを少しずつ食べる」というミレイユの教えを守るには、シェアというのはすばらしい方法だ。
旅の最終日はパリで、2025年から改修工事に入り、しばらく閉館するというポンピドゥー・センターに行った。その屋上には、ジョルジュというおしゃれなレストランがあり(エントランスの案内係が超イケメン)、前菜にエスカルゴを2人でシェア、メインはそれぞれ好きな物を頼んだ。デザートはなし。それでも充分に満足できた。夜景が美しい店で、隣は若いカップル。二度見するほどウエストも腕もほっそりした美女は、メインのパスタ料理を残していたし、男性の方も肉料理に添えられた大量のフライドポテトを半分ぐらい残していた。みんな、頭を使って食べているんだなあ、と感心した。
わたしは外食だともったいない気がして、つい胃に詰め込んでしまう。ふだんも一人暮らしなので、料理を多めに作ってしまい、本当にほしい分以上に食べてしまいがちだ。それが体脂肪となって日々、体に蓄積されているにちがいない。最近は、その日食べる分以外はタッパーに入れて、すぐに冷蔵庫にしまうことにしている。
ミレイユはフランス女性は毎日体重計にのらず、ジッパーで体形をチェックする、と言っている。たしかにフランス滞在の最後にはジッパーがきつくなって、自分のデブ化が実感できた。食事もワインも多めだったうえ、車移動だったので運動不足も大きかったと思う。帰国後、食事についてはミレイユの教えを実践して多少は体重が戻ったが、締め切りに追われて一歩も外に出ない日々が続き、なかなか体脂肪は減らない。ワンピースのつかえたジッパーを上げようとして、息を止め、右に左に体をくねくねさせながら、2025年こそ、1日8000歩をめざすぞ! と誓ったのだった。
『 フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか 』
ミレイユ・ジュリアーノ著/羽田詩津子訳/日本経済新聞出版/990円(税込み)

