臨床心理士の中島美鈴さんによる新刊『 会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動 』から、不安から仕事に集中できない時にどうすればよいか解説します。連載第3回。
明日のプレゼンがうまくいくか不安でたまらない
誰しもうまくいくか心配で眠れない日はありますよね。
プレゼンだけでなく、これまで順調に商談を進めてきた取引先の返事が急に遅れる、などという仕事上のもやもやも心配の種です。
相手からの反応(返事、評価、好意など)が気になる時の“待っていられない感じ”は慣れないものですね。
こうした未来に対する不安について、認知行動療法のテクニックで少しでも和らげる方法を紹介しましょう。
- 明日のプレゼンがうまくいくか不安である
- 不安すぎてスマホを触って現実逃避してしまう
認知行動療法の視点で捉える
ナナさんはプレゼンを前に、「不安」を感じています。
不安への対処は、その恐怖の対象が「何か」を明確にすることからスタートします。
ナナさんは一体何を恐れているのでしょうか。プレゼンの最中に皆に注目されるのがつらいのでしょうか? それとも、プレゼンについて上司に批判されたくないのでしょうか?
私たちが不安な時には、知らず知らずのうちになんらかのイメージが頭の中に浮かび、そのイメージが最悪の事態にならないように、一時停止しながら、考えないようにしていることが多いそうです。
ナナさんはプレゼンして、皆の前で上司から批判されることを恐れていました。
「全然だめだ。君、何年目だっけ。もう新人じゃないよね」
こんなセリフを言われる場面が浮かびます。その後ここがだめだ、あそこがだめだと具体的な指摘も受けるのですが、毎回ナナさんが予想もしなかった箇所で、その予想のつかなさが怖さの原因でもあるのです。
こうしてナナさんは、現実逃避していくのです。

一般的に、怖いものに対しては、正面から立ち向かわずに避ければ避けるほど、恐怖の感情が強くなるそうです。
例えば、強迫性障害の患者さんが手にばい菌がついたという恐怖にとらわれて、手が洗いたくてしょうがない状態にあるとします。手を洗うことを耐えて、そのままでい続けると、90分間ほどで、徐々に不安の感情が薄れていくそうです。一方で、恐怖に耐えかねて手を洗った場合、不安は一瞬なくなりますが、その後「洗い残しがあったかも」などと考えだしてしまい、結果的に、手を洗わなかった人たちよりも、不安が収まらないことがわかりました。
ナナさんの場合も同じです。ナナさんは明日のプレゼンが不安で、現実逃避のためにスマホを見ていました。ナナさんはスマホでメイク動画を見るのが好きで、そこで紹介されているコスメを買うと、新しい自分になれる気がして、ついついたくさん買ってしまいます。この美しくメイクアップされる映像とコスメを所有する達成感や喜びのおかげで、一時的には明日上司に批判されるかもしれないという不安から逃れることができて、ちょっと安心できているというわけです。
さて、不安の仕組みがわかったところで、対処です。後編では、認知行動療法の手法を使った解決策を伝えます。
中島美鈴著、日経BP、1760円(税込み)

