新年、年度末、新生活、目標の達成……大きな節目を意識しすぎず、何があっても何を成し遂げても、一喜一憂せず淡々と日常を続けていく。これこそ自律神経を乱すことなく、常に安定したパフォーマンスを発揮するコツ。自律神経研究の名医が実践する「自律神経を整え、心地よく暮らす」行動術とは。日経ビジネス人文庫『はじめる習慣』(小林弘幸著)から抜粋・再構成してお届けする。
「人生の節目」を意識しすぎない
人生において達成感は大事だと思われがちです。たしかに、何かを成し遂げる経験は人を成長させ、自信をつける源泉となるでしょう。
しかし、自律神経の観点からすると「達成感で生きない」のは案外大事な考え方です。
逆にいえば、何があっても、何を成し遂げても、一喜一憂せず淡々と日常を続けていく。
これこそ自律神経を乱すことなく、常に安定したパフォーマンスを発揮するコツです。
誤解のないようにいっておきますが、何かに向かって努力したり、結果を目指してがんばったりするのはいいことです。
大きなプロジェクトを任されている人なら、やはりそのプロジェクトを成功させることが大きな目標であり、モチベーションとなっているでしょう。
資格取得を目指したり、業績ノルマを達成したりすることに向かってがんばっている人もいるでしょう。
それはそれで素晴らしいことです。
ただし「それが達成されたとき、大きな区切りを迎える」と考えるのはおすすめできません。いわゆる燃え尽き症候群になりやすい発想だからです。
自律神経を整え、コンディションよく生活していくために、毎日が新鮮であることは大事ですが、大きな節目を迎えることはむしろ流れを悪くします。これまでの流れを止めてしまうと表現してもいいでしょう。
私は自分のコンディションを一定に保つためにも、大みそかも、元日も病院に勤務します。1年の節目をつくらず、淡々と日常を続けていくためです。
もちろん、ここまでする必要はありませんが、何かしらの「達成感に向かって生きる」のではなく、何かを達成したり、節目を迎えたりすることがあったとしても、すぐに次のアクションを続けることは大切です。
大きな意味での流れを止めず、常に次に向かうことが自律神経を整えるポイントです。
夕食に納豆やヨーグルトを食べる
年末年始の食べすぎ・飲みすぎで体調が優れないまま仕事始めを迎えたという方も多いでしょう。
より健康で、より元気で、より前向きな「新しい自分をつくる」。これも「今日から新しい人生をはじめる」ことです。
健康のためには、腸の状態を整えることが大事。「腸のゴールデンタイム」を知っておくのは大切です。
じつは腸は夜10時から深夜2時までの間、活発に働きます。食べたものを消化し、吸収する働きがこの時間に活発になるのです。
この時間がまさに「腸のゴールデンタイム」。
つまり、この時間に腸が活発に活動できるよう、余計な負担をかけないことが大切なのです。
そのために、ゴールデンタイムがはじまる2時間前、すなわち夜の8時までに食事を済ませておくことです。また、腸が活発に活動するには交感神経が適度に下がり、副交感神経が高まっていることが理想です。
だからこそ、あまり夜遅くまでテレビやスマホを見て交感神経を高めるのではなく、リラックスして、のんびりと1日を振り返ったり、明日の準備をしたりしながら睡眠の準備をするのもおすすめです。
そんな「腸のゴールデンタイム」を目指して発酵食品を摂る。
これもなかなかいい習慣です。
基本的に発酵食品はいつ食べてもいいのですが、腸のゴールデンタイムは栄養をよりしっかり吸収することが分かっているので、そのタイミングを目指して発酵食品を摂るとより効果的です。
例えば、
- 便秘気味で排便が毎日ない
- 便が硬かったり、下痢気味だったりする
- 便意を突然感じる。または便意をまったく感じない
- 排便後、お腹に張りや便が残っている感じがする
……などセルフチェックで感じた人は特に、生活習慣を整え、適度に運動することはもちろんですが、夕食(8時までに食べ終える)に納豆やヨーグルトなどの発酵食品を意識して食べるのもおすすめです。
さらにひとつ加えるならば、「よく噛(か)むこと」。あまり噛まずに飲み込むのは胃腸に負担をかけるので、とにかく腸に負担をかけないように、いい状態で、いい栄養を送り込む。この意識によって体の状態は確実に整ってきます。
電車移動では「あえて歩く乗り換え」を
私たちの成果は「ストレス要因」にあふれています。ストレス要因になりそうなものを少しでも回避するための知恵や工夫も「はじめる」ことには欠かせません。
例えば、移動は誰にとってもストレス要因のひとつです。特に電車移動は何かと自律神経を乱す要素も多いでしょう。満員電車は不快ですし、夏でも冷房が効きすぎて寒かったり、冬でも暖房や混雑具合で汗をかいたりすることもしばしばです。
そして、忘れてはならないのが乗り換えです。
乗り換えがうまくいかず時間をロスしたり、目的のホームまで距離があることにイライラしたりすることもあるでしょう。
ずいぶん前から、どの乗車口で乗り降りすると出口やエレベーターに近く、乗り換えに便利かが駅のホームに掲示されるようになりました。非常に便利な表示です。
しかし、私はその表示を使い、あえて「乗り換えに不便な乗車口」で乗り降りするようにしています。
これをいうと「どうしてそんなことをするんですか!」と驚かれることもあるのですが、理由は単純。どうせ乗り換えるなら、歩く距離を少し増やして、それを自分なりの運動にあてたいからです。
時間に余裕がないときはその限りではありませんが、できるだけ「あえて歩く乗り換え」「あえて階段を使う乗り換え」をするようにしています。
これによって運動することができるのは大きなメリットです。
さらに、通常なら「ここの駅は乗り換えが不便で嫌だ」と気分を害し、自律神経を乱してしまうところでも「これはたっぷり歩けるぞ」とポジティブに捉えることができます。
気持ちがポジティブになり、適度な運動もできるのですから、こんなに自律神経にいいことはありません。
これを「毎回やりましょう」とはいいませんが、ときには実践してみてはいかがでしょうか。けっこうな満足感があり、悪くない方法です。
「おはよう」「ありがとう」と口にする
自律神経を乱すことなく生きていく上で、邪魔になるもののひとつが「人の評価」です。
結論からいえば、人の評価を気にすることなく、「自分がどうしたいか」を常に見つめていくことが大事です。
といっても、なかなかうまくはいかないでしょう。
講演をしていても、「どうしたら人の評価を気にせず、暮らすことができますか」と質問されることがよくあります。非常に難しいテーマです。
ただ、私がそこで思うのは、どんな場面においても「自分にできることをやる」。
それが第一です。結果や評価は自分のコントロール外なので、そこはしっかり切り分けることです。
そして、自分ができることの中で、私が一番おすすめしているのは「おはよう」と「ありがとう」を気持ちよくいうことです。
あなたは今日、何回「おはよう」と「ありがとう」を気持ちよくいったでしょうか。
明日これを意識するだけで、今日よりもはるかにたくさんの「おはよう」と「ありがとう」をいうことができるでしょう。
自分ができることに目を向けるとは、そういうことです。
人に評価されないとき、誰だって愚痴のひとつもいいたくなります。うまくいかないことがあれば、気分が落ち込むこともあるでしょう。
しかし、そんなときでも「おはよう」と「ありがとう」だけは気持ちよくいう。
とてもすてきな習慣だと私は思います。
あなたが考える豊かな人生とはどういうものでしょうか。
少なくとも、私は「ありがとう」と「おはよう」を日々、気持ちよくいっている人の人生は豊かだと感じます。
小林弘幸著/日本経済新聞出版/880円(税込み)

