内容紹介

「一国の経済成長と密接な関係があるのは、株価ではなくて生産性上昇率である。2010年代も含めて日本を『失われた30年』と言うなら、米国も大局的には『失われた30年』であり、米国の方が途中で少し良い時期があっただけにすぎない。」(本書第2章「正しい『成長戦略』の難しさ」から)

著者は、白川方明、黒田東彦の2人の総裁を支えた元日本銀行理事。現在はエコノミストとして活躍している。デフレ脱却を目指したアベノミクス、日銀による異次元の金融緩和の前提としてあった日本経済をめぐる「通説」が果たして正しかったのだろうか。この10年の金融財政政策を総括し、新たなフレームを提示する。

●内容
第1章 アベノミクス景気の日本経済
   金融政策の大転換
   成長率が最低の景気回復
   ゼロに近づく潜在成長率
   誠実さを欠く「中長期試算」
   内部留保のため込み批判は的外れ
   個人消費はなぜ弱い
   人手不足でも上がらない賃金
   格差のマクロ経済的な含意
第2章 正しい「成長戦略」の難しさ
     日本の生産性は低いという通説
   生産性上昇率は米欧も低い
   ミクロからはわからないマクロ
   財政金融政策が成長を弱めているのか
   中小企業への政策支援には課題あり
   デジタルやグリーンは成長戦略なのか
   労働者の対抗力は高められるのか
第3章 2%物価目標と異次元緩和
   「日銀は変わった」というメッセージ
   本当は異次元ではなかった異次元緩和
   その「歴史的な功績」は何だったのか
   1%でも珍しい日本の低インフレ
   物価が上がりにくい本当の理由
   短期決戦から持久戦への大転換
   イールドカーブ・コントロールの光と影
   2%物価目標をやめられない理由
第4章 強まる金融政策の限界
   自然利子率の低下
   金利の実効下限とリバーサルレート
   現金をなくしても金融緩和の地平は広がらない
   「日本化」を恐れたFRB
   金融緩和はバブルを生むか
   「中立性」が金融政策の限界を画す
第5章 重要性を増す財政の役割
   日本の財政は破綻するのか
   金利が上昇する「何らかの理由」とは
   政府債務残高は減らすべきなのか
   「賢い支出」への違和感
   MMTに欠けている視点
   真の財政規律に向けて