内容紹介

悪人はいない、ただ不正は起こる。
そこに加担したのか、させられたのか?
仕事の重圧は、明日、あなたを襲うかもしれない!
オルツ、小林製薬、宝塚、フジテレビ……
ニュースでは報道されない「普通の組織」に潜む罠を、
コンプライアンス問題のプロが解説。

 企業不祥事が発覚すると、「ガバナンス」「コンプライアンス」が問われ、トップが詫び、お決まりの「再発防止策」を発表して事件は収束する。しかしその陰では、真面目に業務に取り組んでいた人が不正や不法行為の“犯人”として糾弾されるケースが少なくない。コンプライアンスの方向性も個別特定の問題にフォーカスされ、背景にある業界や組織の抱える根本的な課題を見えなくしてしまう。そして“同じような”不祥事が繰り返される。
 暗黙の圧力、業界“村”の慣行・しがらみやローカルルール、現場を軽視した経営判断、曖昧な指示と報告体系、取引関係……日本の組織は問題の温床に溢れているのだ。

 宝塚歌劇団、オルツ、小林製薬、三菱自動車、フジテレビ、リクナビ、セブンペイ……本書は、第三者委員会報告などをもとに話題になった企業不祥事を多方面から分析。すべてのビジネス人が、業務の実態とコンプライアンスとの板挟みで眠れぬ夜を過ごすことなく、同時に不条理な犠牲者を出さずにすむように、不祥事が起こる組織にありがちな「本当の問題点」を浮き彫りにしていく。

目次

第1章 会社の事業計画や投資意思決定に潜むリスク
  1 事業計画の失敗が現場の不正を生み出す
     ――宝塚歌劇団とダイハツ工業
   (1) 宝塚歌劇団のパワハラによる劇団員死亡問題
      ――6週間一度も休みなく1日3時間睡眠しかできなかった過酷な
        状況
   (2) ダイハツ工業の試験不正問題
      ――試験なのに不合格にできない無理なスケジュール
   (3) 事業計画の失敗は現場の不正に直結する
  2 ポイント・オブ・ノーリターンは、ずっと前
     ――取引先の横暴に屈した損保ジャパン、テレビ局
   (1) 損保ジャパンはなぜビッグモーターに屈したのか
      ――「一時の判断ミス」では済まされない構造的敗北
   (2) なぜテレビ局はジャニーズ事務所を批判できなかったのか
      ――代替できる発注先を育てなかった代償
   (3) 「売り手が強すぎる市場」では、健全なガバナンスも言論も機能し
     ない
  3 データ偽装の真因は、風土ではなく“撤退しない無策”
     ――勝てない領域で戦った東洋ゴム工業、三菱自動車、三菱電機
   (1) 東洋ゴム工業――社内売上の小さい部門のデータ偽装
   (2) 三菱自動車――燃費不正は必然の着地点
   (3) 三菱電機――撤退も投資も促進しないルールの生んだ結末
   (4) 東洋ゴム、三菱自動車、三菱電機におけるデータ不正問題の共通点
  4 間違ったルールは普通の人を犯罪者にする
     ――科研費、かんぽ生命、コスト+αの間違ったインセンティブシ
       ステム
   (1) 科研費不正使用――単年度の精算がもたらす不正使用の誘惑
   (2) かんぽ生命不適切販売
      ――「国民を守るはずの保障」が販売ノルマにのみ込まれた経緯
   (3) コスト+α方式の付け替え不正
      ――お金を使えば使うほど利益が増すという誘惑
   (4) ルールは人を守る盾にも、足を踏み外させる坂道にもなる

第2章 経営者の意思決定に潜むリスク
  1 トップが“素人”の“新規ビジネス”は危険がいっぱい
     ――急いて事を仕損じたリクナビ、セブンペイ、WELQ
   (1) リクナビ問題――「内定辞退率」が合否に影響しないと考えていた
     社長
   (2) セブンペイ問題――二段階認証を知らなかった社長
   (3) DeNAの医療・健康情報サイト「WELQ」の誤情報問題
   (4) 「素人トップ」 × 「過度のスピード重視」は要注意
  2 「大風呂敷」と「実力」の差――上場ベンチャーの悲しい粉飾決算
     ――グレイステクノロジーとオルツ、異なる性質の2つの事件
   (1) 経営者の自爆売上による入金――グレイステクノロジー
   (2) オルツ――売上の約9割を構成した循環取引
   (3) 経営者の噓とどう向き合うか
  3 事件を矮小化した現場と、リーダーシップをとらない経営者
     ――危機管理に失敗した小林製薬とみずほ銀行
   (1) 小林製薬――食品会社としての対応ができなかった「紅麴事件」
   (2) みずほ銀行のATM取り込み事件
      ――世の中の騒ぎほどには危機感がなかった社内
   (3) 共通して浮かび上がる〝三段重ねの落とし穴”
  4 「名誉にこだわり、財務に無頓着で、哲学を語る」経営者には要注意
     ――東芝の西田厚聰氏、カネボウの伊藤淳二氏
   (1) 東芝元会長・西田厚聰氏の人物像と経営判断ミスの検証
   (2) カネボウ粉飾決算――伊藤淳二会長の人物像と経営スタイル
   (3) 西田氏と伊藤氏――2人の経営者に共通する構造的病理

第3章 時代の変化と自社のあり方との不適応に潜むリスク
  1 コロナ禍で追い詰められた旅行業界と、不正という〝静かな選択”
     ――踏みとどまれなかったKNTとHIS
   (1) KNT――“請負”の法解釈を徹底しなかった“痛恨の失敗”
   (2) HIS――ノルマが空気をねじまげた“現場型不正”
   (3) 旅行業界全体に広がっていた〝グレーな慣行”
  2 社会の異端者は引きずりおろす。理由は何でもよい
     ――漢検、リクルート、ライブドア
   (1) 漢字検定事件をめぐる構造的分析――ガバナンスなき時代の利益相
     反
   (2) リクルート事件――情報誌の“過剰な成功”と嫉妬の連鎖
   (3) ライブドア事件――ネット資本主義の〝数字マジック”と古い勢力
     の逆襲
  3 “フジテレビ問題”はあなたの会社でも起こる
     ――性役割意識や説明責任が欠如していたフジテレビ