世界のマネジメント界に巨大な足跡を残したピーター・ドラッカー。95歳で亡くなるまでに30冊以上の書籍を刊行し、マネジメント分野での指導者としての地位を確立しました。その偉大な業績を『 マンガ 経営戦略全史〔新装合本版〕 』(三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画)から抜粋してお届けします。
28歳 アメリカに渡る
37歳 GMを研究し『会社という概念』出版。GMを出禁になる
46歳 『現代の経営』でマネジメント分野のリーダーに
65歳 『マネジメント』出版。日本だけで400万部以上
『会社という概念』でGMの危うさを示す
●ピーター・ドラッカー(Peter F.Drucker、1909~2005)は20世紀初頭のウィーンに生まれ育ち、95歳で亡くなるまでに30冊以上の著作を発表し、世界のマネジメント界に巨大な足跡を残しました。
●1946年の『Concept of the Corporation(会社という概念)』(※1)は、GMがドラッカーに依頼した自社研究のレポートです。GMが採用していた事業部制の素晴らしさがわかります。大企業を管理する分権経営の手法として見事でした。
しかしドラッカーは、「GMは作業者を利益追求のための(削減すべき)コストとして考えているが、作業者は活用すべき経営資源である」「GMは命令と管理を重視する官僚主義に陥っており、将来の急激な変化に対応できない」とし、従業員たちへのさらなる権限委譲と自己管理の必要性を提起しました。
●GM幹部たちからは大いに不興を買い「禁書」扱いもされましたが、GM以外では「分権化」の必読書として賞賛され、危機に陥っていたフォード再建の教科書ともなりました。ドラッカーが、当時まだなじみの薄かった「マネジメント」というものの専門家として認められた出世作が、この本でした。
彼は問いました。企業を中心としたこの「産業社会」は、社会として成り立つのだろうか? そして「社会的存在としての人間」は、この産業社会において幸せになれるのだろうか? と。「分権化とマネジメント」が彼の答えでした。
『現代の経営』でマネジャーの存在意義を示す
●8年後の『
現代の経営
』(ダイヤモンド社)でドラッカーは、シアーズやAT&Tという「新しい」成功企業たちを詳細に紹介しながら言いました。経営管理者の仕事こそが事業に命を与え、そのリーダーシップがあってこそ資源たるヒト、モノ、カネが動き出すのだと。
この本は「マネジメント」を独立した機能として捉え、「マネジャー」たちの役割を明示しました。内容としてはフェイヨルのそれと似たものでしたが、機能ではなくマネジャーという個人たちに向けて語ったことでその共感を得ました。
●さらにドラッカーは、企業経営を「機械的な内部管理」だけでなく、大きく3つの側面から考えるべきだと主張しました。
(1)企業は顧客に価値を創造するためにある(顧客の創造)
(2)企業はヒトを生産的な存在とするためにある(人間的機関)
(3)企業は社会やコミュニティの公益をなすためにある(社会的機関)
●いずれも現代に通じるコンセプトであり、(1)はマーケティングの根本であると同時にイノベーションの勧めであり、(3)はCSR(Corporate Social Responsibility<企業の社会的責任>)としてまさに今現在のテーマです。
●裏返せば、彼のコンセプトに現実の企業が追いついていけなかった、ということでもありますが、それはドラッカーのせいではありません。彼は研究家であり教育者であり、そして何より著述家・文筆家なのです。有用なコンセプトをつくり、まとめ、伝えることこそがドラッカーのミッションだったのです。その実現はわれわれの仕事です。
シナリオ/星井博文 画/飛高翔 編集協力/トレンド・プロ
シリーズ累計30万部のベストセラー『経営戦略全史』の新装マンガ版が発売! ティール組織、両利きの経営、パーパス経営などの最新の経営トピックについても加筆し、新装リニューアルの大型合本版がついに発刊。
三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画/日本経済新聞出版/2090円(税込み)