幸せな生活を無理なく維持するために、年金にプラスして月々10万円程度の収入を持続的に得ていくことを目標にしよう。そのために大事なのは「成長より持続性」「見栄(みえ)を張らずにスモールスタート」「棚卸しで言語化」だ。各種メディアで人気の副業評論家が教える具体的ヒント。日経ビジネス人文庫『副業・複業・ひとり社長で年金に月プラス10万円を得る方法』(藤木俊明著)から抜粋・再構成してお届けする。

成長ではなく持続性

 ビジネス社会においては、個人も組織も「成長」が何より重視されます。
 しかし、これから年金生活に向けて、月に10万円を副業で稼いでいこうという人にとっては、成長より「持続性」(サステナビリティ)が重要なポイントです。

 いろいろな学びを通じて人間的に成長していくということは大事ですが、経済的に大きく成長していくことを第一の目標にしないほうがいいでしょう(もちろん営業方法を工夫するなどした結果、経済的に成長したというのはありです)。

 これからは、自分と家族の幸せな生活を無理なく維持していくために、年金にプラスして月々10万円程度の収入(「年金プラ10」)を持続的に得ていくことを目標にしませんか。

見栄(みえ)は張らない

 大企業にずっと勤務してきて、定年近くになり背水の陣で事業を始めたAさんがいます。
 部下や取引先に声をかけて協力をお願いし、少し早めに退職、退職金をつぎ込んで都心に事務所を立ち上げました。

 あちこちに挨拶回りをして、会社設立パーティーを開いて、事業を大きくしていくという話をしていたようです。
 そんなとき、周囲はよいことしか言わないのです。

 しかしいざ事業を始めてみると、うまくいきません。
 こうなると、協力を約束してくれた人たちは何もしてくれないものです

 事業が回らなくとも、事務所の高い家賃や社員の給与、リース代などがAさんを圧迫したようです。金策に走った末、会社は潰れたと聞きました。

 もちろんAさんの心の中はわかりませんが、立派な事務所を開き、設立パーティーを行ったのは、ある種の見栄だったのではないでしょうか。
 最初はよけいな経費をいっさい削り、人も雇わず、信頼できるパートナーと少ない人数で事業を開始すればよかったのではないでしょうか。

 定年退職後、事業を始めようとする人の反面教師としたいものです。

自分に合った方法でスモールスタート

 「いや、そんな苦境から立ち直るのが起業家というものだ」
 こんな声があるかもしれません。
 確かに世の中の起業家の成功談には逆転満塁ホームランのような話がよく出てきます。

 しかし、起業家が語る成功談には、おおむね何らかのバイアスがかかっているものです。

 もちろん本書を読まれている方の多くは、身の丈に合わないことを考えてはいないと思います。

 これからは、「自分のゆとりある生活を維持するため」に働くのです。
 そのためにどんな方針を立てるべきか? そこで必要になるのが、自分の棚卸しです。

「向いている」と言われたことは何?

 セカンドライフでは、「自分はこれができます」ということを言語化し、大げさに言えば、社会に向けて発信しなくてはなりません。

 会社を離れた自分は何なのか?
 自分ができることは何で、それをどう伝えると相手に伝わりやすいのか?

 おおまかに自分自身を「棚卸し」して言語化しておくと、いろいろな場面で役に立ちます。

 ここで悩みすぎると、前に進みません。あくまで「ざっくり」で大丈夫。
 お風呂にでも入りながらぼんやり考えてみるといいでしょう。

 「やりたいこと」も意外と言語化するのが難しいかもしれません。やりたいことが浮かばない人もいるでしょう。
 そんなときは「人から“向いているね”と言われた仕事は何だったっけ?」と思い起こして、「それで人からお金がもらえるだろうか?」と、お風呂で頭でも洗いながら考えてみましょう。

楽しく妄想してみる

 たとえば、書類作成が得意だね。メールがとてもわかりやすい。つまり、「書くこと」が向いていると人から評価された場合です。
 「書くこと」で人からお金をいただけるものなのか? シャンプーを流しながら、考えてみます。

 まず思いつくのは、「ライター」です。
 就業しながら、あるいは定年退職後にライターで収入を得ていくのはどうか?

 いやいや、自分にライターなんて無理、得意なのはあくまで事務書類の作成。
 だったら資格を取得して、行政文書作成を代行する行政書士のような「士業(しぎょう・さむらいぎょう)」はどうだろうか。

 いや、自分はそもそも作家になりたかった。
 小説は無理でも、ビジネス書の作家になることはできないか。それで、本を出せたらいいな。もう一度風呂に浸かって考えます。

 このあたりになると、棚卸しというより「妄想」ですが、そういう楽しい棚卸しからスタートしたほうが無理なく進められます。できるだけ楽しくやりましょう。

自分の経験が仕事になる

 「それでも何も思いつかない」という人もいるかもしれません。
 しかし、これまで社会人として経験を重ねてきたわけです。思い出せることがいくつかあるはずです。

 「時間や約束はきっちり守るようにしている」
 副業であっても、当たり前ですが、納期や締め切りを守れないと相手にされません。

 「コミュニケーション能力があると思う。聞き上手と言われる」
 すばらしいことです。たとえばコンサルティングなどの仕事は、聞くことがうまくないとできません。

 自分ひとりで考えるのではなく、同僚や友人につき合ってもらって、「私のよいところを何でもいいから客観的に教えて」とお願いし、お礼にランチでもごちそうしてはどうでしょうか?

 人からの客観的な意見を受け止めることが大事です。
 なぜなら、副業を始めるあなたは今後、「評価する側」から、個人として「評価される側」に変わっていくのですから。

※本書は特定のサービスやサイト、職種、ビジネスを推奨するものではありません。
※副業・複業・創業に当たっては、必ず所属組織の規定などを確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。
「やりたいこと」「向いていると言われたこと」を言語化(写真:buritora/stock.adobe.com)
「やりたいこと」「向いていると言われたこと」を言語化(写真:buritora/stock.adobe.com)
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藤木俊明著/日本経済新聞出版/990円(税込み)