「自分たちが親世代より豊かに暮らせる可能性は低い」。今、そう考えている若い人たちは少なくありません。しかし、日ごろから経済活動の現場に触れて会社を見る目を磨き、働きながら投資を行うことで、「普通の人」が相当の資産を持つことは十分に可能だとビジネスコンサルタントの山崎将志氏は言います。投資家の一人として山崎氏は「アップルの株は買うが、アップル製品は使わない」と言いますが、その理由は? 『 父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。 』(日本経済新聞出版)より抜粋、内容を編集してお届けします。

時価総額世界No.1のアップル 貢献しているのは日本人?

 iPhone13シリーズが発売されたとき、それまでの新機種と比べると、新たに搭載された機能が地味であるとの意見が報道各社から流れたが、ファンには人気で、発売日にはコロナ禍ながらも直営店では深夜から大勢が行列を作っていた。

 iPhoneを展開するアップルは、10年ほど前から時価総額世界トップの座に君臨している。この10年間の株価上昇率を見ても、12倍にも膨れ上がっている。

 実は、日本人はかなりアップルの株価上昇に貢献している。スマホ市場におけるiPhoneのシェアを国別に比較すると、何とトップは日本である。アップル本社のある米国よりもiPhoneの利用率が高いのである。

出典:『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』142ページ。データは2020年6月時点
出典:『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』142ページ。データは2020年6月時点

 世界全体で見るとアンドロイドのスマホのシェアが71%であり、台数ベースで見れば「iPhoneが主流である」とは言えない。内訳を見ると、先進国のほうがiPhoneのシェアが高いことが分かる。理由はiPhoneの値段が高いからである。

 iPhoneは値段が高いだけでなく、利益率も高い。2019年のデータでは、世界全体のスマホ市場の利益のうち66%をアップルが稼いでいる。

 以前はもっと利益のシェアが高く、15年第1四半期の調べでは、スマホ市場のアップルの営業利益シェアは92%もあった。当時は世界で1000社以上がスマホの本体を製造していたが、利益を出していたのはアップルだけと言ってもいい状態だった。台数だけで見ればアンドロイドスマホのほうが多く流通しているにもかかわらず、だ。

 ここまで見れば、アップルの時価総額が高い理由はとてもシンプルである。そう、めちゃめちゃ儲(もう)かっているからだ。

なぜアップル製品には、うちの敷居をまたがせないのか

 アップルはとんでもなく儲かっている。だから消費者としての私は、アップル製品は買わない。

 私の家ではアップル製品は一つも使われていない。その理由は、「利幅があまりに大きい商品を買ってはいけない」という、消費者としてのお金に対する我が家のルールが徹底されているからだ。

 同じ結果が得られるのであれば、払うお金を最も少なく済ませるのが、賢い消費者であり、賢い投資家であると私は考えている。

 例えばスマホで検索するとしよう。検索バーに文字を打ち込んで表示された結果をタップしてブラウザで見る。これはどんなスマホを使っても同じである。他にもアップルミュージックでなければ聴けない音楽はほとんどない。YouTube、Spotify、アマゾンミュージックで同じ音楽が聴ける。LINEもインスタもメールも、アンドロイドのスマホでできる。アンドロイドではエアドロップができないが、写真を共有するという結果を得るのが目的なら、他の方法で送ればいい。

 PCも同様である。私のMacフリークの友人に言わせると、Macはウィンドウズアップデート的なものがないからストレスフリーだとか、ウイルスを心配しなくていいとか、画面がきれいだとか、質感がいいとかいろんなことを言うが、私にはあまり響かない。本稿の原稿料はウィンドウズPCで書いてもMacで書いても同じだし、書くスピードも変わらない。書く時間より考えたり調べたりしている時間のほうが圧倒的に長いからである。

「iPhoneにしかできないこと」は意外と少ない

 こう考えると、「アップル製品でしかできないこと」はあるようでない。細かいことを言えば、少し前に話題になったクラブハウスには当初アンドロイド版がなくiPhone利用者しかダウンロードできなかった。このようにアップル製品でしか使えないアプリなど、なくはない。でもスマホの目的をより大きく捉えれば、基本的にはない。

 ちなみに、大手携帯電話会社の通信サービスについても、利益率が高すぎるのではないかと個人的には思う。だから私は10年以上前に「月々の支払いは高く見えないが、長い目で見ると大金を払わされる」大手携帯電話会社が提供するサービスの利用をやめ、SIMフリー端末と格安SIMをそれぞれ個別に買っている。中学生になった頃から持たせた子供たちのSIMと端末もそうしている。大手キャリアでも格安SIMでも、結局、スマホから得られる結果は同じだからだ。

「アップルの株を買い、格安スマホを使う」のが私の基本姿勢だ(写真:ImageFlow/Shutterstock.com)
「アップルの株を買い、格安スマホを使う」のが私の基本姿勢だ(写真:ImageFlow/Shutterstock.com)

 このように書くと筋金入りのアップル嫌いのようであるが、アップルの株は買う。アップルに対しては尊敬の念しかない。iPhoneやMacには信者がいる。使い心地、画面の美しさ、質感の良さなど、今や「アップルらしさ」とは何かについて、利用者のほうが深く理解しているのではないかと思う。アップルのビジネスには、全ての経営者が実現したいと切望する要素が体現されている。

 私にとってアップルは株を買う会社であって、製品やサービスを買う会社ではない。機能だけを求める私のようなユーザーにとっては、高い車に乗っても安い車に乗っても、到着時間は一緒だからである。

消費者として大ファンではあるが、株は買わない会社

 この逆で、「消費はするが株は買わない」という会社もある。

 例えば、「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービス。以前の肉マイレージシステムのお得感は抜群だった。1万円以上チャージ(前払い)すると15%のプレミアが付き、肉を20kg以上食べることで入手できるプラチナカードを持っていると、来店ごとにお酒が1杯無料だった。それを組み合わせると、300グラムの牛肉100%のハンバーグとビール1杯が850円プラス消費税で飲み食いできた。驚異のコスパである。いくらハンバーグがそれ用の肉で作られていると言っても、とても儲かるとは思えなかった。

 コロナ禍が始まってからチャージのシステムが廃止されるなど、いろいろと特典の条件が変わったが、コロナはきっかけにすぎず、どうにか利益率を改善する方法を探っていたのだろうと私は想像する。 

 各種特典が変更になった後でも、十分にお得感のある「いきなり!ステーキ」、私は今でも大ファンである。

 しかし株は買わない。消費者にとってあまりにお得感の大きい会社というのは、投資対象としてはそれほど魅力的ではないことがままある。

「利益率が高くて消費者にとって魅力の大きい会社」に投資する

 投資家の視点では、会社は次の4つに分けられる。

出典:『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』146ページ
出典:『父さんが子供たちに7時間で教える株とお金儲けの教養。』146ページ

 いい会社というのは、②の「利益率が高くて消費者にとって魅力の大きい会社」である。ちなみに消費者として魅力を感じるかどうかは主観的、つまり好き嫌いだから、どの会社がどこに分類されるかは人による。私にとってのアップル社は③の「利益率が高くて消費者にとって魅力が小さい会社」だと思うが、②だと考える人もたくさんいるはずだ。

 我々庶民がどの株を買うか投資対象を検討するなら、②に当てはまる会社の中から探していくのがよいだろう。 前回「ニトリ、かつや、セリアが好きな人は投資でお金持ちになれる」 の記事中、トピックとして触れた丸亀製麺(トリドールホールディングス)、かつや(アークランドサービスホールディングス)、セリアなどは消費者としてのお得感と会社としての利益率のバランスがいい会社だと個人的には思う。

 また②の中には「その会社の製品を買わざるを得ない」会社も含まれる。例えばマイクロソフトのオフィスは私にとっては仕事上買わざるを得ないものである。現在では、グーグルのスプレッドシートのように、マイクロソフトオフィス製品の代わりになるものが提供されているため、学生やBtoCで完結する仕事であれば、これらの無料または安価な代替品を使えば事足りる。しかしBtoBの仕事をしていると、取引先がマイクロソフトのオフィスで作られたファイルしか開けないケースも多々あり、「魅力を感じる感じないにかかわらず使わざるを得ない」というのが正直なところである。

 私はアドビのサービスにも毎月利用料を支払っている。フォトショップやイラストレーターなどのソフトは、今のところ代替品が見つかりにくいため、買わざるを得ない。1ライセンス当たり毎月1万円近い料金を払って「高いなぁ」と文句を言いながらも、自分と同じような利用者がいて、かつそれがこれからも増えていくだろうという予測を基に、しっかりとマイクロソフトやアドビの株を買う。

 あなたもこんな視点で身の回りのビジネスを評価してみてはどうだろうか。

※記事内で個別の企業について触れていますが、当該企業の株式の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。

日経ビジネス電子版 2021年10月28日付の記事を転載]

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