あなたの会社の業務フローは「取適法(中小受託取引適正化法)」に対応していますか? 下請法は大改正により「取適法」に生まれ変わりました。業務の発注側・受注側ともに知識を備えておく必要があり、ビジネスパーソンに多大な影響を及ぼす新法です。第1回は、「取適法って、そもそもどのような法律なの?」という疑問に、実務の先駆者である弁護士がお答えします。『これだけは知っておきたい 取適法』(長澤哲也著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成し、研修用動画教材『 知らなかったでは許されない 取適法 』(長澤哲也監修)より動画も添えてお届けします。
不合理な取引が行われないようにし、その結果として中小受託事業者の利益を保護するもの。
目的は中小受託事業者を守ること?
皆さんは、取適法は何を守ろうとしている法律だと思いますか。
多くの方は、「立場の弱い委託先である中小企業を保護するものだ」というイメージをお持ちでしょう。
それも正しいのですが、実は、中小受託事業者の利益を保護するというのは結果論です。取適法が直接的に目的としているのは、取引を「公正」なものにすることです。取引を公正にすれば、その結果として、中小受託事業者の利益が保護される関係にあるのです。
「取引を公正にする」とは
取引が「公正」であるとは、どのようなことをいうのでしょうか。
取適法を主として所管する省庁の名称が「公正取引委員会」であることに示されるように、取引を公正なものにすることは、競争政策の根幹をなすものです。
取引を公正にするとは、自由市場経済のメカニズム、すなわち、競争を通じて取引が行われることにより、需要者にとってより有利な条件で商品やサービスが提供される仕組みを円滑に機能させることをいいます。
逆にいえば、市場メカニズムが円滑に機能することを妨げるような行為は「不公正」な行為として、公正取引委員会により取締りを受けることとなります。
取引を公正にすることと取適法の関係
それでは、取引を公正にすることと取適法とはどう関係するのでしょうか。取適法は、取引上の立場が強い委託事業者が、立場の弱い中小受託事業者に対して、通常であれば受け入れないような不合理な行為を行うことを規制しています。
競争が健全に機能するためには、その前提として、取引に参加する当事者が、自らの意思と判断で、誰とどのような条件で取引をするか(しないか)を決めることができなければなりません。
そのような前提があってはじめて、各当事者は自分にとって有利となる取引を選択することができ、それによって市場メカニズムは円滑に機能するのです。取引の相手方が本心に反して不利益を押し付けられることは、市場メカニズムを歪(ゆが)めるものとなります。
取適法は、不合理な行為を規制することにより取引の公正さを確保し、それにより、市場メカニズムの機能を維持しようとするものです。
実は長い正式名称、略称に込めた法の趣旨
取引を公正なものとすることは、最近では、「取引の適正化」とも呼ばれています。
取適法の正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」ですが、その略称として、公正取引委員会は、あえて「中小受託取引適正化法」と呼んでいます。
「取引適正化」という用語は、正式名称や法律の本文にも用いられていませんが、これは、法の趣旨が「取引の適正化」にあることを端的に示すものなのです。

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