あなたの会社では、数十年来の継続取引において、価格をそのまま据え置いていませんか? それどころか、昨今の物価高に基づいた取引先からの値上げ要請をのらりくらりとかわしてはいないでしょうか? もしそのような対応をとっていたとすれば、見直しが必要です。ビジネスパーソンに多大な影響を及ぼす新法「取適法(中小受託取引適正化法)」。その中でも問題になりやすい点のひとつ、「協議に応じない一方的な代金決定」について解説します。『これだけは知っておきたい 取適法 下請法から中小受託取引適正化法でこう変わる』(長澤哲也著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成し、研修用動画教材『 知らなかったでは許されない 取適法 』(長澤哲也監修)より動画も添えてお届けします。

研修用動画教材『知らなかったでは許されない 取適法』より抜粋・再構成
<ざっくり言うと>
中小受託事業者側から価格協議の申出があった場合には、必要な説明や情報提供をするなどして、十分協議しなければならない。

代金決定プロセスが不当だと「即違反」

 いわゆる「買いたたき」がなされたと認められるためには、通常の対価と比べて著しく低い代金の額を設定するという価格水準の問題と、そのような代金の額を不当に定めるという代金決定プロセスの問題の両方がそろう必要があります。

 しかし、代金の額が「著しく低い」かどうかを判断することは、価格を引き下げる場合にせよ、据え置く場合にせよ、容易ではありません。代金の額は、最終的には需要と供給のバランスによって決まるものであり、本来あるべき代金がいくらであるのかは「神のみぞ知る」ものだからです。そのためか、買いたたきについて、勧告という法的措置にまで至った例は非常に少ないのが実態でした。

 そこで、取適法では、これまでの買いたたき規制とは別に、価格水準を問題とすることなく、代金決定プロセスが不当であるだけで違反とする「協議に応じない一方的な代金決定」についての規定が追加されました。

中小受託事業者からの申出とは?

 協議に応じない一方的な代金決定についての規定は、中小受託事業者から価格協議の申出がある場合に限って、適用されます。

 中小受託事業者からの協議の申出は、口頭であってもかまいませんが、客観的にみて、協議を希望する意図が認められるような内容の申出でなければなりません。

 また、中小受託事業者からの協議の申出は、コスト上昇による値上げを要請する場合だけでなく、委託事業者からの値下げ(原価低減)の要請に対して協議を求めるような場合も含まれます。

「協議に応じない」とはどのような状況か?

 中小受託事業者からの価格協議の申出に対し、委託事業者がそれを拒んだり、無視したり、協議の実施を繰り返し先延ばしにするなど、実質的に協議の場を設定しないことは、「協議に応じない」例の典型です。

 また、協議の機会を設けるとしても、協議の場において、委託事業者に求められる説明責任を果たさないことも問題となります。

 例えば、中小受託事業者から合理的な根拠を示して値上げの要請を受けた場合、委託事業者としては、その全部を受け入れられないのであれば、その合理的な説明や根拠となる情報提供を行う必要があります。

 それを怠り、委託事業者が、一方的に代金の額を据え置いたり、わずかに引き上げた額を代金の額としたりすることは、協議に応じない一方的な代金決定と判断されやすくなります。

協議に応じないことが許される場合も

 他方、中小受託事業者からの要請が価格協議との関連性を欠く場合や、委託事業者の営業秘密の開示を求めたり、すでに説明を尽くした事項について何度も同じ質問を繰り返したりしている場合には、委託事業者は、そのような要請に応じなくとも、問題とはなりません。

価格協議についての申出を受けた場合、委託事業者として説明責任を果たすことが求められる(写真:mapo/stock.adobe.com)
価格協議についての申出を受けた場合、委託事業者として説明責任を果たすことが求められる(写真:mapo/stock.adobe.com)
「取適法」のいちばんコンパクトでやさしい入門書! 定評ある実務家が、逐次具体例を盛り込みつつ、現場の疑問をふまえてすっきりと解説。これから自社での対応を準備するビジネスパーソンに最適です。巻末には社内研修にぴったりな確認問題付き。

長澤哲也著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)
下請法から取適法へ。これまでの商慣習が変わる大改正! 知識を身につけるだけでなく、「発注者の立場が上」「過度な値引きも会社のため」といった意識をドラマ演出で変革させる映像コンテンツ。DVD、配信、データ納入の形態で提供しています。

長澤哲也監修/日本経済新聞出版/eラーニングや集合研修など研修スタイルに合わせて、配信、データ、DVDで提供します。