2026年2月2日には前営業日比14.6%安と急落した場面もありましたが、ここ数年、金は史上最高値を更新し続けてきました。貴金属スペシャリスト・池水雄一氏に聞くインタビュー3回目は「これから金投資を始めたい」「今からでも間に合うのか」という人に向け、金投資が分かる2冊を紹介します。

米ドル離れが進む時代の投資法は

 まず、金投資の前に見ておくべきは世界情勢と世界経済の動き。それから通貨供給量も見ておく必要があります。例えば、アメリカの通貨供給量は2025年12月には約22兆4110億ドルを突破し、史上最高額を更新しています。資本主義の宿命ですが、市場が拡大し、通貨供給量が増えれば増えるほど、お金の価値は希薄化していきます。

 また、アメリカの連邦政府債務は26年初頭で38兆ドルを超え、莫大な借金を抱えています。日本もそうですが、負債を抱える国の通貨は下がる傾向にあります。もし、国債を買う場合はGDPに対して何%ぐらいの借金があるかはチェックしておくべきです。

 そうした点から見ると、アメリカドルは決して盤石な通貨とは言えません。ロシア、中国、アフリカ諸国では米ドル離れが進み、ドルの代わりに金を購入する国が増えています。

 これまで投資というと通貨、株式、債券が主役で、金はあくまで「オルタナティブ資産」でした。ただ、通貨、株式、債券は発行元である国や企業が破綻したら、共倒れになる危険があります。

 その点、金には人類が過去5000年にわたって認め続けてきた価値があり、さらに金は1000年たっても劣化しない奇跡の金属と言えます。

 以前、経済評論家の故・山崎元さんは「金はきれいだけれども働かない奥さん」とおっしゃっていました。彼の共著である『 【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術 』(朝日新書)は良い本で、私も愛読していますが、こと金に関してはここ数年で状況が変わってきた。これから投資をするなら「米国株式とオルカン」ではなく、「金とオルカン」という割合にしてもいいかもしれません。

 では、具体的に金投資を始めるにはどうすればいいのかが分かるのが、私が書いた『 金投資の新しい教科書 』(日本経済新聞出版)です。10年以上前の本ですが、今も電子書籍で読むことができます。

『金投資の新しい教科書』(画像クリックでAmazonページへ)
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 「そもそも金の価値とは」「何の目的で金を買うのか」「預金や債券や株式と、金とでは何が違うのか」「金本位制に戻る可能性はあるのか」「金に税金はかかるのか」といった金投資にまつわる疑問を一問一答形式で解説しています。好きなところから読めますし、入門書としても最適です。

 実はこの本を書いたとき、自分でも改めて「金はすごいな」と思い、御徒町で金の地金を購入しました。当時、1グラムの価格が3000円程度でしたが、今は2万7000円程度に上昇しています。

対談形式で金投資の今が分かる1冊

 そして、もう1冊が25年2月に出版した『 日本貴金属マーケット協会代表が教える 今こそ、ゴールド(金)投資! 』(ビジネス社)です。

『日本貴金属マーケット協会代表が教える 今こそ、ゴールド(金)投資!』(画像クリックでAmazonページへ)
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 この本ではさらに詳しく金の価値、なぜインドや中国が「金の爆買い」を続けているのか、金の現物と金ETFならどちらを選べばいいのか、といったことについて解説しています。共著者の大橋ひろこさんは私が代表理事を務める日本貴金属マーケット協会の理事で、この本は私と大橋さんの対談形式になっているので読みやすいと思います。お互いに言いたいことを本音で言っていますし(笑)、いつも我々が開催しているような金投資セミナーに参加しているような臨場感が味わえるかもしれません。

 私がセミナーを開くと必ず聞かれるのが、「これからも金は上がりますか」「投資してプラスになりますか」という質問。

 もちろん、金投資には元本割れするリスクもありますし、現物を買えば盗難の心配、貸金庫で保管するコストもかかります。それでも世界情勢と世界経済の動きを見れば、金の価格が上がり続けるのは宿命です。

 Never too late.

 「今日より安い日はないかもしれない」というのが、私の答え。そして、一度金を買ったら、多少の価格の変動では一喜一憂しない。「一番もうけている人」は「金を持ち続けている人」なのです。

金投資セミナーに参加しているような臨場感が味わえる
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アウトプットすることで本の知識を定着させる

 ここまで今後の投資には金投資が必要だと話してきましたが、自分に投資をするなら「本」が最強です。これほど自分の知らない世界を教えてくれるものはありません。

 私は小学生のときにモーリス・ルブランの『奇巌城』『8・1・3の謎』などアルセーヌ・ルパンのシリーズに夢中になり、それ以来、本が大好きで、ずっと読んできました。椎名誠さんの本も好きで、「あやしい探検隊」シリーズに触発されて、自分でもランニングクラブをつくりました。

 会社員時代は通勤時間に本を読むのが楽しみでしたが、独立してからは通勤時間がなくなり、本を読むタイミングを逸してしまいました。自宅で机に向かうと、どうしても仕事をしてしまうので、今は1日20km以上走るランニングの最中に耳から本の内容を聞くなどしています。

 また、「これはいい」と実感したのが、格安航空会社(LCC)での海外出張。基本的にモニターがありませんから、もう本を読むしかない。久しぶりに読書に没頭できた、いい時間となりました。

 また、読書でインプットするだけではもったいないので、アウトプットも意識しています。本の感想を書き留め、SNSで発信することで、本で読んだ知識が頭の中に定着します。

 前回、橘玲さんの本を紹介したときにも言いましたが、人は金融資本、人的資本、社会資本の3つがバランスよく保たれたときに幸せになれる。金融資本のために金投資をすることも大事ですが、自分への投資も続けたい。そのために「本」を読み続けたいと思っています。

取材・文/三浦香代子 構成/細谷和彦(日経BOOKプラス編集) 写真/小野さやか