沼上幹・一橋大学名誉教授、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授の著書、日経文庫『組織デザイン』は、機能する組織をつくるための発想と対策を解説し、2004年の刊行から約20年たった今も多くの読者に支持されてロングセラーとなっている。本書から抜粋・再構成してお届けする連載第6回は、組織がいつでもどこでも一定の質をもったアウトプットを生み出すための標準化について解説する。

組織の本質的な側面

 組織を構築する理由の1つは、時間・空間を超えて、1人の人間の努力では達成できないような目標を達成することである。分業・調整・統合の結果である組織のアウトプットが、時間を超えて何年、何十年にもわたって同じ品質を保ち、日本ばかりでなく海外でも同じ品質を保つ。時空を超えた調整・統合の手段があるが故に、組織はいつでもどこでも一定の質をもったアウトプットを生み出せるのである。

 この時空を超えるという特徴を支える最も重要な要素が、標準化という調整・統合手段である。組織という言葉を聞くと、多くの人がまずヒエラルキーを思い浮かべるようだが、実はそれと同程度に標準化も組織の本質的な側面であり、標準化とヒエラルキーの2つがそろうことで組織の基本が成立すると言っても過言ではない。

 標準化(standardization)とは、何らかの標準(standard)を多数の人や部署で共有したり、時間を超えて共通に用いたりすることである。標準的な作業手順を共有したり、機器同士をつなげるプラグの内径・外径を共有したり、といったように、何かを「標準」として設定して、それを組織内・外で共通のものにしていくことで、組織は分業の結果が自然に調和のとれたものになるように方向づけることができる。

 たとえばハンバーガー・チェーンのマクドナルドは、いろいろな側面で標準化が進んだ企業である。同社は全国どこへ行っても、ほぼ同一の商品を共通の設備で共通のマニュアルに基づいて製造・販売している。単に空間的に広がりがあるばかりではない。ある程度長期にわたって同じマニュアルに基づいてタスクを遂行させているのだから、時間的にも広がりのある共通化が行われている。ハンバーガーを調理する作業者は代わっているはずだが、5年前も1年前も現在も、ほぼ同一のハンバーガーを食することができる。このような時間的・空間的な共通化を標準化と呼ぶ。

マクドナルドは、いろいろな側面で標準化が進んだ企業だ(写真:Mariia/stock.adobe.com)
マクドナルドは、いろいろな側面で標準化が進んだ企業だ(写真:Mariia/stock.adobe.com)
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 標準化には多様なものが含まれる。たとえば会社がMBA(経営学修士)を募集・採用して、その人たちに経営管理の仕事を任せたとするならば、採用する人々をすべてMBAという共通のものにしていくことになるから、これも広い意味での標準化に入ることになる。あるいは従業員の業績を皆一律同一基準で評価したり、すべての事業部をROI(投下資本収益率)で評価したりする標準化もある。

投入・処理・産出の各ステップの標準化

 これら多様な標準化が存在するので、簡単に分類しておいた方が理解しやすいだろう。いま、図1にみられるように、組織の活動を投入(インプット)・処理(スループット)・産出(アウトプット)という3つのステップに分け、そのステップに合わせて、標準化を分類してみよう。

図1 インプット・スループット・アウトプット
図1 インプット・スループット・アウトプット
(出所)日経文庫『組織デザイン』
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 通常、標準化という言葉で最も頻繁に思い浮かべられるのは、マクドナルドの作業マニュアルに代表されるような作業手順の標準化であろう。人々の作業手順を時間・空間両面で共通化し、そうすることで分割されたタスクのアウトプットを統合しようというのだから、図1に基づいて考えれば処理プロセス(スループット)の標準化を行っていることになる。

 マクドナルドの例では作り方も標準化されていたが、最終的に提供される製品そのものも標準化されていた。ハンバーガーやマックシェイクなど商品そのものが標準化されているばかりでなく、個々の支店の営業成績を測定・評価する項目もすべての支店に共通のものが用いられる。こういった「アウトプットそのもの」や「アウトプットに関連する部分」での標準化もある。

 さらに、インプットやインプットに関連する部分での標準化がある。雇い入れるアルバイトを同じマニュアルで教育したり、同じ原材料を用い続けたり、などといった工夫がここに分類される。

日経文庫『 組織デザイン
生産性の高い組織はこうしてつくる!

業務範囲、分担、監督の仕組み。組織改革、新組織がつまずくのは、これらをきっちりと考えていないからだ。分業の決め方、調整をスムーズにする様々な標準化など、機能する組織をつくるための発想と対策を解説。

沼上幹著/日本経済新聞出版/1045円(税込み)