「EQ能力は、先天的能力ではなく、伸ばせる能力です」。日本のEQ伝道師髙山氏はそう述べます。今回紹介する『EQトレーニング』(日経文庫)は、何度も挑戦できるWebテストがついていて、時間をおいて自分のEQ能力が計測できる点が特徴です。また、AI時代のEQの有用性についても語ってもらいました。

「EQは開発可能な能力です」

 これまで2回にわたってEQ(心の知能指数)に関する本を紹介してきました。ビジネスパーソンのみなさんにとって、気になるのは「どうすればEQの能力が高まるのか」「実際に使うにはどうすればいいのか」ではないでしょうか。また、実際に試してみたけれども「うまくいかない」という人もいらっしゃるかもしれません。

 そんな方におすすめしたいのが、『 EQトレーニング 』(日経文庫、髙山直著)です。EQに関する本は数多く出版されていますが、この本の特長はWebテストで自分のEQを診断できることです。

『EQトレーニング』(日経文庫)(画像クリックでAmazonページへ)
『EQトレーニング』(日経文庫)(画像クリックでAmazonページへ)

 まず、EQには以下の4つの能力があることを知ってほしいと思います。

  1. 「感情の識別」(自分と相手の感情を正確に感じ取り、把握する能力)
  2. 「感情の利用」(課題や目標達成のために、思考や行動にふさわしい感情を創り出す能力)
  3. 「感情の理解」(感情が引き起こされた原因や背景、感情の移り変わりを理解・推察する能力)
  4. 「感情の調整」(自分と他者の感情をコントロールし、最適な方向へ修正・管理する能力)

 本書で展開されるWebテストは、4つの能力を12指標に分類し、スコア化することで可視化し、強みと弱みが把握できます。

 EQ理論の中でEQは「遺伝などの先天的な要素が少なく、後天的に教育や学習を通して高めることができる」と発表されています。

 この本はEQ理論も学術的に紹介していますが、EQ診断による自己分析とEQ開発を目的としたトレーニング本です。

 現在、本書の販売部数の約5倍の人がWebテストを受けています。中には1人で20回以上受けている人もいます。Web上で初回スコアと最新スコアが比較でき、EQの開発結果が確認できるようになっています。複数回受けている人は自分のEQ能力の変化を確認したり、定期的な受診をすることでこころの健康診断をしたりしようとしているのではないでしょうか。

 書籍購入者の中でWeb受検をしている人の年代を見てみると20~30代が6割、40~50代が3割、60代以上は、ほぼいません。つまり、若手は自分のEQ能力を知り、トレーニングをして自分を成長させたい、強くなりたいとの目的で本を購入し、受検していることがわかります。

 40~50代はおそらくマネジャーや管理職の方ですね。チームを持ち、メンバーと仕事で接する上でEQの必要性を感じた人たちでしょう。

 私は、この結果に大きなショックを受けています。これまで40~50代の経営職、管理職、マネジャーの皆さまにEQをご紹介し、EQトレーニングをしていました。EQ導入の際にも川の水の流れ同様、上流からEQを入れましょうとご提案してきましたが、それを必要と思われていた人は思ったより少なかった印象です。多くの方が、いまさらEQは必要ない、勘弁してくれと思われていたとしたら、私の話は辛い時間だったのでしょうね(笑)。

 そこで、一つ変えたことがあります。

 20~30代対象のEQプログラムを導入しました。未来を生きる、成長したい、こころを強くしたいと思う若手向けのEQ研修をご提案しています。

本書では何度も繰り返しトレーニングができます。
本書では何度も繰り返しトレーニングができます。
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EQへの揺り戻しが起こっている

 現在、EQは時代の「揺り戻し」の時期にあると感じています。かつて日本では学歴や偏差値というIQ重視、アメリカ式の成果主義、コンピテンシーが注目される時期がありましたが、そのたびに「本当にこれでいいの?」と揺り戻しが起き、その都度EQが注目されてきました。

 今回もAIの時代には、逆に人間にしかできない情緒的な知性やスキルが必要になるのではないかと、世界レベルでEQが注目されています。

みなさんの人生を豊かにするために、ぜひEQを取り入れてください。
みなさんの人生を豊かにするために、ぜひEQを取り入れてみてください。
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 1990年に生まれたEQの未来はポジティブです。

 しかし、EQに関し疑問に感じている人、また、否定的な意見もあります。それは理解しています。

 感情は自然に生まれ、職場や家庭など至る所に、そして人生のあらゆる場面であふれています。感情は情報の源であり、人生を豊かにすることができますが、その妨げになることもあります。一方、私たちは感情を上手に管理したり、利用したりする方法を、EQに学ぶこともできます

 EQ理論の提唱者のお一人、エール大学のピーター・サロベイ博士は「EQは豊かな人生の道しるべである」と言っています。「豊かな」というのは、ビジネスで成功するといった意味ではなく、よりよく生きる、社会のよりよい一員になるという意味です。

 みなさんの人生を豊かにするために、ぜひEQを取り入れてみてください。

取材・文/三浦香代子 構成/細谷和彦(日経BOOKプラス編集) 写真/品田裕美