その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は堀公俊さんの 『ビジュアル 職場と仕事の法則図鑑』 です。

【まえがき】

 皆さんは、どんな悩みや問題を抱えながら、職場で毎日仕事をされているのでしょうか。

 問題を解決する上で一番大切なことは、優れた解決策を考えることではありません。「何が問題か?」を正しくとらえることです。そこを間違ってしまっては、すべての努力が水泡に帰してしまいます。

 たとえば、いつも計画通りに仕事が進まず、必ず最後に突貫工事を強行して、まわりに迷惑をかけている人がいたとします。本人も周囲も、「立てたスケジュールが守れない」のが問題だと思って、苦労して直そうとします。早めに着手したり、進捗を細かくチェックしたりして。

 残念ながら、それらは的外れの可能性が大です。やって悪いわけではありませんが、同じ過ちを繰り返すだけでしょう。

 私たちは、計画通り進まずに失敗した経験を持っていても、完了に要する時間を過小評価してしまう傾向があるからです(計画錯誤)。何回痛い目に遭っても、懲りずに甘い見通しを立てるのです。これは、どんなに優秀な人でも起こる、思考の落とし穴です。

 あるいは、うだつの上がらない上司の下で苦労されている方も多いことでしょう。つい「なんでこんな馬鹿がウチの課長なんだ!」と、自分の不幸を嘆きたくなります。

 これもピント外れの悩みかもしれません。どんな会社だろうと、無能な管理職ばかりになる宿命にあるからです(ピーターの法則)。よほどの幸運がない限り、無能な上司の下で働くことは避けようがありません。それを前提にして仕事をするか、嫌なら独立するしかありません。

 こんな風に、私たちが職場や社会で経験する出来事の裏には、「○○すれば△△になる」という法則が少なからずあります。科学の法則ではないので100%とは限りませんが、一定の条件を満たせばかなりの確度でそうなります。

 その多くは、実験や統計などのエビデンスを通じて検証されたものです。人生訓やことわざなどよりもよほど信頼性があります。それらを知っているのと知らないのとでは大違い。まさに、「愚者は(自分の)経験に学ぶ、賢者は(人類の)歴史に学ぶ」です。

 本書では、経営学、経済学、社会学、心理学、教育学、認知科学など、幅広いジャンルのなかから、仕事に役立つ法則69項目150種類をコンパクトに紹介しています。通して読めば、普段何気なくやっている行動や思考の陰に、実に多くの原理原則が働いていることに驚かれると思います。

 ご好評をいただいた前著『ビジネス・フレームワーク』ではビジネスを制する「定石」を紹介しました。今回は仕事の裏で働く「法則」です。いずれも押さえておかないと、間違った方向に全力で走ることになり、いくら頑張っても成果は期待できません。2冊をセットにして、手軽なハンドブックとして、常に近くにおいてもらえれば嬉しいです。

 「職場と仕事の法則」を学べば、働き方はもとより人や組織との関わり方、ひいては生き方が変わります。本書が自分や仕事を見つめ直すキッカケになったとしたら幸いです。

2020年7月  堀 公俊


【目次】

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