その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は高橋伸夫さんの『 組織の思想史 知的探求のマイルストーン 』。「まえがき」をお届けします。

【まえがき】

 「組織論」

 日本ではごくシンプルにそう呼ばれている学問分野がある。経済学の一分野に産業組織論があるので、それと区別するために経営組織論と呼ばれることもあるが、普通はシンプルに組織論と呼ばれる。日本には組織論を探究するために、これまたごくシンプルな名前の組織学会があり、1959年設立で、現在、経営学系の学会としては、日本最大の会員数を誇っている。

 組織論は、20世紀中にほぼ主要な概念が出揃い、体系が構築されたといっていいが、21世紀に入っても発展は続いており、いまや組織論の全体をカバーするような教科書を書くことは至難の業である。それ以前に、もともと組織論が持っていたその学際的な性格が災い(?)して、そもそもどこまでが組織論なのかを線引きすること自体が難しい。そして、21世紀に次々と出現している新しい研究業績を見ていると、論文を書かんがために、隙間を探して書かれた枝葉の研究が多い印象をぬぐい切れない。

 しかし、「組織とは何か」。その原点ともいえるリサーチ・クエスチョンにまで立ち返れば、その探究の道筋には、何冊かの難解な古典が、まるで里程標(マイルストーン)のようにほぼ10年おきに現れてきた。本書では、20世紀に出現した「組織論の里程標」とでも呼ぶべき5冊の古典を、現代からの目線で深読みし、「組織とは何か」に答えていきたい。そうすることで、読者は組織論の太い幹の部分を、ある意味効率的に理解することができるはずだ。そうすれば、その「組織論の幹」に自由に枝を生やし、どんどん好きなだけ葉を茂らせることができる。

 ただし、予告しておくが、本書はかなりマニアックである。そして、本書を読めば、この5冊の古典に対する、これまでの表面的な理解が、かなりの部分で間違っていたり、誤解だったりしていたことが分かるはずだ。ところが、不思議なことに(かつ、ありがたいことに)、5冊の古典は芯の部分ではぶれていない。5冊で一貫して「組織とは何か」を探究し続けてきたことが分かる。

 21世紀に、この後の幹を継ぐ者は出てくるのか。あるいはもう既にどこかに出現しているのか。流行に押し流されることなく、流れを横切り泳ぐ勇者たちを、読者も読後は私と一緒になって探してほしい。

   2024年11月

高橋伸夫

【目次】

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