その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は川上明久さんの『 実践データマネジメント AI/BIの活用レベルを上げる新しい基盤・組織・運用 』です。
【はじめに】
本書の執筆に至ったのは、ビジネス変革におけるデータ活用のアジリティーを上げたいという問題意識からです。DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を認識されながら成功例が十分には生まれておらず、過大な予算をかけてデータ基盤を構築しても活用できていない例を多く見てきました。
筆者は、その要因の1つがデータマネジメントをスピード感を持って進めるノウハウが企業内に不足していることであると考え、データマネジメントの内製支援を主体とするコンサルティングを提供しています。本書はクラウドを利用してデータマネジメント業務を高速化してきた実績を基に、特にクラウドを活用した取り組みに焦点を当ててデータマネジメント業務を解説しています。
クラウドに焦点を当てるのは2つ意図があります。
1つは、クラウドがデータマネジメント業務の難度を下げてくれることです。データ活用によってビジネス変革を起こすには、自らデータ活用やデータマネジメントを理解して取り組む必要があります。とはいえ専門性が高く難解な業務も多いのが実情です。クラウドをうまく利用すると、データマネジメント業務の一部を簡易にでき、エンジニアではないビジネス人材も業務に参加できるようになります。内製化の実現性を高める手段としての利用価値があります。
もう1つは効率化です。データを扱う業務はとかく工数がかかります。少子化とエンジニア不足、特にデータエンジニアの絶対数が不足していることから活用を進めにくいのが現状です。貴重な高スキル人材に価値ある業務を担ってもらい、限られた期間とコストでデータ活用の成果を挙げるために、クラウドによってデータマネジメント業務の生産性を高めることが有効です。
本書は幅広い知識体系であるデータマネジメント業務を対象として限られた紙面で記載しているため、網羅性のある記述とはしていません。ビジネスで重要なデータマネジメント領域に、より多くの紙面を割くよう構成しています。データマネジメントの網羅的な知識は、本文で繰り返し参照するDMBOK(Data Management Body of Knowledge)2などを合わせて読んで得ていただければと思います。
本書は、一般企業でデータマネジメント業務を企画・管理・実行する担当者を主な対象読者として執筆していますが、データ活用による業務変革を企画・推進するに当たり、データマネジメントに関心を持つビジネスパーソンにも読んでいただける内容にしています。一般のビジネスパーソンもデータ活用に参加して成果を出すことが求められるようになりつつあり、関心の高まりを感じているからです。
自らが担当するわけではなくても、データマネジメントについて理解が深まると、ビジネス領域でのデータ活用の企画・推進に役立ちます。ビジネス人材とエンジニアが、互いの領域についての理解が深まることがビジネス変革につながると確信しています。
一般のビジネスパーソンにとっては本書の内容が専門的で難解に感じられる部分もあるかと思います。できるだけ理解していただけるように巻末に用語集を用意しました。ITパスポート試験程度の前提知識があれば、技術的な細部は分からなくても、データマネジメントで考えるべき原理原則、トレードオフの関係、重点的に管理するポイントなどを理解いただけるのではないかと考えています。
サービス選択の参考になるよう、主要なパブリッククラウド、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を中心として具体的なクラウドサービスを掲載していますが、アーキテクチャーやサービス選定を検討する上で参考になる情報に絞っています。
一般企業でデータマネジメントに関わるエンジニアは、兼任だったり、専門職でない方が担当することが多いのが実情です。アジリティーを高めつつ段階的に予算と人的リソースをかけて成果を出すことが求められるデータ活用において、本書は短時間でデータマネジメントを知ることができる内容となるよう心掛けました。
筆者は多くの企業がデータを活用して付加価値を付けていくことに貢献したいと考えています。高速なデータマネジメントを実現して、データ活用で成果を出す参考になればこれ以上の喜びはありません。
株式会社D.Force 代表取締役社長 川上 明久
【目次】



