その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は深沢真太郎さんの『 数学女子 智香が教える 「数字に強い人」の仕事の進め方(日経ビジネス人文庫) 』です。

文庫化にあたって

 インターネットで検索をすれば、あるいは生成AIに疑問をぶつければ、「正解らしき情報」は簡単に手に入る時代になりました。そんな時代に、本を読むことの意味はなんでしょう。

 僕の答えは、“体験すること”です。とりわけビジネスや仕事に関係するテーマならば、できるだけ「本番」に近いことを事前に体験することです。たとえば新人がオンライン会議の進行に関するノウハウを学んでも、実際に体験しないと自分のものにはなりません。

 ではそれを読書で叶えるためにはどうすればいいか。
 僕が作家として考え続けているテーマの1つですが、現時点での答えをお伝えします。

 物語を読んでいただくことによって、追体験していただく。

 本書は、2014年に上梓した『数学女子 智香が教える こうやって数字を使えば、仕事はもっとうまくいきます。』(日本実業出版社)に新章を書き下ろしたほか、改稿・アップデート、改題した文庫版です。『数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日経ビジネス人文庫)に続く位置づけでありつつ、本書からでも問題なく読み始められるようになっています。

 時代の変化により、大切なことや必要なことは変わっていきます。一方で、どんな時代であろうと変わることのない普遍的な本質というものもあります。
 本書で表現されていることは後者。「はたらく」という人生を選んだ人にとって永遠に大切な2つのことです。1つは「数字」を使うこと。物語を通じて、その使い方と感触を“追体験”してください。そしてもう1つは……。巻末で答え合わせをしましょう。
 ぜひ最後まで、物語を通じた“体験”をお楽しみください。

 2026年3月 深沢真太郎

はじめに

 「仕事をうまく進めていくためには、やっぱり数字の活用って大切なんですよね」
 「でも、数字をどうやって使えばいいかが、わからないんです……」
 「正直、数字を見ただけでなんだか具合が悪くなります(苦笑)」

 これらは企業研修やビジネスセミナーでお会いした皆さんが実際におっしゃったことです。この言葉に共感する人は間違いなく本書の読者であり、そして僕がもっとも会いたかった人です。

 「どうやって使えばいいか……」という悩みは、裏を返せば使い方さえわかればすぐに解決できる悩みでもあります。それは決して難しいものではありませんし、中学生の数学レベルで十分理解できます。それくらい簡単なことで誰もが仕事の質を上げられるのに、知らないなんて本当にもったいないことです。

 前作『数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日経ビジネス人文庫)を読んだ皆さんから、「やってみようと思います」や「ちょっと感動しました」など、たくさんのコメントを頂戴しました。でも僕には、まだ伝えたいことがたくさんあります。

 その想いが、再び1冊の本になりました。
 今回も数学女子・柴崎智香(しばさきともか)と超文系男子・木村斗真(きむらとうま)の2人を中心としたストーリー展開により、数字を使ってもっとうまく仕事を進める方法をたっぷり学んでいただきたいと思います。そして、正反対な2人がビジネスパーソンとしてどう成長していくのか、温かい目で見守っていただければ幸いです。なお、前作と世界観を共有していますが、どちらから読み始めても無理なくお楽しみいただけます。

 そろそろ物語が始まります。エンディングでまたお会いしましょう。

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物語のはじまり、そしていま

 中堅アパレル企業「株式会社ブライトストーン」の営業部に所属する木村斗真(きむらとうま)はファッションが三度の飯より好きと公言する同社のエース。そのセンスと情熱は誰もが認めるところです。
 しかし(いわゆる)ド文系であり、自分の感覚を何より大切にするタイプ。とにかく「数字」に対する苦手意識が強く、数字をベースにしたロジカル思考やコミュニケーションはほぼ皆無に等しい状態でした。

 社長である佐野賢太郎(さのけんたろう)は職場のエース・木村を筆頭に、営業部のメンバーが皆〝数学的〟に仕事ができないことを心配し、1年前にある作戦を思いつきます。

 それは、かつてビジネススクールに通っていたときに知り合った柴崎智香(しばさきともか)のヘッドハンティング。智香は大学の数学科を卒業し、経営コンサルティング会社に勤務する敏腕コンサルタント。佐野はその活躍ぶりを聞きつけ、「ウチの会社を助けてもらえないか」と打診。智香も新しい環境でのチャレンジを求めて了承しました。

 転職し、事実上、木村の「教育係」となった智香。キレ者の「数学女子」と感覚とノリ(?)だけで生きる「文系男子」。価値観や正義がまったく異なる2人は衝突しながらも徐々に互いを認め合い、職場の業務改善や大胆な人員配置を成功させていきました。

 そして1年後。対極的とも言える2人が再び……。


【目次】

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