その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は平井一夫さんの『 ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」(日経ビジネス人文庫) 』です。

【はじめに】

 「どうやってソニーを復活させたんですか?」

 経営トップを退いてから3年ほどが経ちましたが、いまでもこんな質問をよく受けます。

 事業の「選択と集中」や商品戦略の見直し、あるいはコスト構造の改革……メディアでは様々な分析がなされています。

 いずれも間違いではないのですが、核心はそこではないと私は考えています。

 自信を喪失し、実力を発揮できなくなった社員たちの心の奥底に隠された「情熱のマグマ」を解き放ち、チームとしての力を最大限に引き出すこと。

 ある意味、リーダーの基本ともいえるようなことを愚直にやり通してきたことが、組織の再生につながったと実感しています。本書を執筆したのは、ソニーの再生ストーリーを通じて、経営者のみならず、部下や後輩を抱えるすべての「リーダーたち」に、そのことをご理解いただきたかったからです。

 ソニーの変革を含め、私はこれまで3度の事業再生に携わってきました。そのいずれにおいても、社員との信頼関係を築き、困難に立ち向かうためにはリーダーのEQ(心の知能指数)の高さが求められるということを痛感しました。戦術や戦略といった施策ももちろん重要ですが、それだけでは組織をよみがえらせることはできないのです。

 私がこのような考え方に至ったのは、これまでの生い立ちや仕事人生と無関係ではありません。

 少年時代、日本と海外で何度も転居し、常に「異邦人」として見られてきたこと。エレクトロニクスが主流という印象の強かったソニーにおいて、音楽やゲームの領域で出世競争とはあまりかかわりのないキャリアを歩んできたこと。

 こうした、メインストリームから少しはずれた「異端」としての人生を送ってきたことが、私のリーダーとしての哲学のベースになっています。

 ですから、本書でもいきなり経営のことについて語るのではなく、私のこれまでの人生を振り返り、紙上で再現しながら、どのようにしてそのような考えに至ったかを、なるべくリアルに、ドキュメンタリータッチでお伝えするようにしました。

 本書が、いま元気を失っている多くの企業や組織が再び輝きを取り戻すきっかけになってくれれば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。

平井一夫


【目次】

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