その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は藤吉豊さん、小川真理子さんの 『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』 です。
【はじめに】
本書は、文章術の名著「100冊」のエッセンスを1冊にまとめたものです。
「一流のライター(コピーライター)、作家、ジャーナリストの多くが身につけている書き方のコツを1冊にまとめてみよう」
「『文章のコツ』として、多くのプロが大切にしているルールから順に、身につけてもらおう」
というコンセプトに従っています。
文章には書き手の個性が強く出ることもあって、書く技術は職人的なものだと思われがちです。ですが実際は、小説家たちの個性的な文章ですら、「共通のノウハウ」が意外に多くあります。
「共通のノウハウ」とは、ライターのAさんも、作家のBさんも、ジャーナリストのCさんも、編集者のDさんも大切だと思っているコツのことです。
たとえば、「1文の長さを短くすると、読みやすくなる」と数冊の本に書かれていたら、それは「共通のノウハウ」となります。
現役ライター(文章を書くことを職業とする人。これまでに、女性誌・男性誌・ビジネス誌・企業広報誌・業界専門誌・ウェブニュース・書籍など、さまざまな文章の編集・ライティングに携わってきました)の筆者2名(藤吉豊(ふじよしゆたか)、小川真理子(おがわまりこ)が名著100冊を真剣に読み込み、文章のプロが持つ共通のノウハウを洗い出し、ランキング化したのが本書です。
ランキングの決め方
本書では、より多くの文章のプロが「大切だ」と考えている共通のノウハウを集めるために、次のような手順を踏みました。
(1)「文章の書き方」をテーマにした本(文章読本)を「100冊」購入
文章読本のベストセラー、ロングセラーなど。選定の基準は218ページに詳述(書くことはコミュニケーションの手段なので、一部、コミュニケーションに関する本も含めています)。
(2)どの本に、どのようなノウハウが書かれているのかを洗い出す
本を読み込み、「これは大切」と書かれているコツを見つける。
(3)共通のノウハウをリスト化する
洗い出したノウハウを「似た内容」ごとにまとめる。そのノウハウが掲載されていた本の「冊数」を数える。たとえば、
●「主語と述語の関係」について書いてあったのは、○冊
●「接続詞の用法」について書いてあったのは、○冊
●「ひらがなと漢字の割合」について書いてあったのは、○冊
●「形容詞の使い方」について書いてあったのは、○冊……など。
(4)ノウハウをランキング化する
ノウハウを「掲載されていた本の冊数」によって順位付けする。
このような手順で作成したのが、次のページのランキングです。
◆ランキングの活かし方と、本書の構成
100冊から抽出した40項目を、本書では3つに分けました。
●1~7位(➡Part1へ)
多くの著者が「大切」だと説く7つのノウハウ。文章の目的を問わず、すべての人に必要な基本ルールが集まりました。
●8~20位(➡Part2へ)
「1位から7位まで」を理解した上で、さらにスキルアップを図ったり、文章の内容を豊かにしていくために必要なノウハウ。
「文章を書くにあたっての準備や心構え(★の項目)」も多く見られる結果となりました。
●21~40位(➡Part3へ)
文章のプロでもつまずいたり、意見が分かれたりするノウハウ。「20位まで」をおさえた上で取り入れてみてください。
このランキングは、文章一本で生計を立てている私たちにとっても、腹落ちする結果といえます。とくに、1~7位で紹介しているルールを意識するだけで、どんな場面でも「わかりやすく、正確な文章」が書けるようになります。
項目ごとに完結しているため、どこから読んでいただいてもかまいません。「とにかくわかりやすい文章を書きたい」という人はPart 1から、書く前の準備段階の人は★の項目から目を通していただければ、それぞれのポイントを体系的に理解できます。
◆本書のメリット
「文章の書き方の本100冊を、1冊にまとめてみる」のは、正直にいって、とても大変な取り組みでした。けれど、それでも成し遂げようと決めたのは、理由があります。
「『文章の書き方』を本で勉強したいです。たくさん出版されている本のうち、どれを選んだらいいでしょうか?」
この質問は、私たちが主宰(しゅさい)している「文章の書き方」講座の受講者から寄せられたものです。
たしかに、ここ30~40年の間に、日本では膨大な「書き方の本」が刊行されています。それらは、作家やライター、ジャーナリスト、ブロガーなど、それぞれの「文章のプロ」が、それぞれの立場から「文章の書き方」を説明しているため、どれが自分の役に立つ本なのかがわからない、そんな悩みです。
この質問に真面目に答えるならば、「自分が書きたいジャンルの文章のプロ」で、かつ「こんな文章を書きたい」と思える人の本を選んでください、となります(99ページで詳述)。
ですが、専門のジャンルに分かれる前に、文章のプロたち皆が「大切だ」と思っていることをまとめられないか、文章を書く上で普遍的で大事なノウハウを身につけられないか、と考えました。こうして始まったのが、文章術の名著「100冊」のエッセンスを「1冊」にまとめてみる、という取り組みです。
ですから、本書の特徴であり、一番のメリットをまとめると、次のようになります。
●あらゆるジャンルの「文章のプロ」が「大切だ」と考えている文章のコツを、重要なものから順に、身につけられる。
そのほかに、「文章の書き方」を伝える1冊として、次のメリットも付け加えておきます。
本書の9つのメリット
①文章を書く上で普遍的で大切なコツが、重要な順に身につく
②正確でわかりやすい文章が書ける
③読み手の感情を動かす文章が書ける
④読み手を不快にさせない文章が書ける
⑤速く書ける
⑥「何を書いたらいいかわからない」という悩みが解消される
⑦文章に対する苦手意識がなくなる
⑧文章によるミスコミュニケーション、誤解、気持ちのズレを防ぐ
⑨ポータブルスキルが身につく
⑨の「ポータブルスキル」とは、直訳すると「持ち運び可能なスキル」のことです。業種・職種の垣根を越えて、どの職場でも活用できるスキルです。
「書く力」は、時代や環境の変化に左右されにくく、いつでも、どこでも、どのような仕事をしていても役に立ちます。ライターになるためだけでなく、キャリアチェンジやキャリアアップをするためにも、「書く力」は必要です。
◆本書の対象者
本書は、職業・年齢・目的を限定せず、多くの人の文章力向上に役立つように構成しています。
●報告書・日報・議事録・提案書・稟議(りんぎ)書・プレゼンテーション資料・プレスリリース・顛末(てんまつ)書など、業務上「書くこと」が必要なビジネスパーソン
●入学試験・就職試験を受けたり、論文・レポートなどを書く学生・受験生・就活生(本書は、「中学生でも理解できる」ようにわかりやすく要点をまとめました)
●ブログやSNSで情報発信をしている(したい)方
●メールやチャットなど、「テキストコミュニケーション」をベースに会話をする機会が多い方
●プロのライターや編集者
本書で紹介するノウハウは再現性が高く、誰にでも使いやすい(真似しやすい)と思います。
「文章術の本がたくさんあって、どれを読んでいいかわからない」という人の最初の1冊として。あるいは、「文章の書き方をもう一度学び直したい」という人の振り返りの書として。
本書が「文章の書き方」に悩む多くの人の助力となれば、これほど嬉しいことはありません。
株式会社文道 藤吉豊/小川真理子
【目次】
【関連記事】
●はじめに:『話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』
●はじめに:『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』