その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はNIKKEI GX(編)の『 GX(グリーントランスフォーメーション)経営大全 150兆円市場の道しるべ 』です。
【はじめに】
GX=グリーントランスフォーメーション。ここ数年、新聞やテレビ、ウェブなどのメディアで毎日のように目にするようになった言葉だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)に続いて、またよく分からない横文字が出てきたと思う人も少なくないだろう。環境負荷を軽減するための厄介な枠組みと認識しているならもったいない。対応が遅れると競争に出遅れることになりかねない一方、先行できれば企業や事業を成長させるチャンスにもなり得るからだ。
猛暑でもエアコンを使わないといったような痩せ我慢ではなく、二酸化炭素(CO2)を出さないために事業活動を減らすという縮小均衡の考え方でもない。政府が閣議決定をした「GX実現に向けた基本方針」も踏まえ、なるべく簡潔にその目的をまとめるなら、GXは脱炭素と経済成長の両立となる。政府は今後10年間で官民合わせて150兆円を超える脱炭素投資を進め、そのうち20兆円を政府が支援する方針を示している。
「失われた30年」という言葉に代表されるように、事業の伸び悩みに直面してきた日本企業は少なくない。一部は伸びしろを求めて海を越え、グローバル化で食いぶちを創出してきた。その海外で、中でも欧州を中心に一大テーマとなっているのが環境対応だ。GXは日本企業が国内外に築いた足場を守り、さらには次なる成長の種にするための手段でもある。
GXはいま、ほぼすべての産業の大半の職種の人にとって、業務上、無関係ではいられない分野になりつつある。ただ、新しい分野だけに用語からして簡単ではない。人事異動などで、新たにGXやサステナビリティーに関わるようになった人も多いだろう。本書は、予備知識なしで読み始めて、読み終わる頃には自分が次に何を学ぶべきかが分かるようになっている。
テーマごとに章立てし、各章は2種類のコンテンツで構成した。一つはキーワードだ。「温暖化ガス」といった基本的なところから「DAC」など専門性が高いものまで、合計50個を取り上げた。なるべく最近の動きを織り込み、なぜいまその用語を理解すべきなのかが分かるようにしている。キーワードにはそれぞれ、3段階で重要度が分かるよう★を付けた。使う頻度が高そうなものほど★の数を多くしている。これまでGXと全く接点がなかったという読者は、まずは★3つの項目だけ読んでみることをお勧めする。
各章の後半には特定のテーマをより深く掘り下げた「もっと知りたい」を置いた。キーワードだけ分かっても、実際に企業や自治体がどのように活用しているのかの事例がなければ理解は深まりにくい。そこで、企業の具体的な取り組みや、複雑な制度やルールについての専門家の解説を紹介している。水素や洋上風力、カーボンクレジットなどを巡る国内外の最新動向も入れているので、ぜひ参考にして自社の事業に生かしていただきたい。まずは「もっと知りたい」を読み始め、分からない言葉があればキーワードを参照して確認するという使い方もできる。
本書は日本経済新聞がオンラインで配信している専門媒体「NIKKEI GX」に掲載した記事を基にしている。情報やデータ、登場人物の肩書、円換算などは掲載当時のものだ。掲載から少し時間がたったものもあるが、いまでもなお意味を持つと考えるものを選んだ。テーマごとにまとめ直しているので、NIKKEI GXを購読いただいている方にも体系的にこれまでのコンテンツを振り返るのに活用していただけると思う。
国内だけでも10年で150兆円の投資が期待される成長市場をみすみす逃すか、掴み取るか。企業や事業、あるいはそこで働くビジネスパーソン個人の成長に必ず役立つ。その伸びしろ拡大の一助として、本書を活用してほしい。「何だか難しい」と敬遠していたGXの世界を、一緒にひも解いていこう。
【目次】



