その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は川上明久さん、杉江伸祐さん、廣瀬真輝さん、竹村伸太郎さん、案浦浩二さん、中田晃一さんの『 クラウドデータベース入門 』です。

【はじめに】

 長年にわたりデータマネジメント体制構築や内製化支援に携わってきた経験から、筆者はデータベース技術を高速に学習して効率よく構築・運用業務を実行する方法を習得する必要性がかつてなく高まっていると考えています。

 データベース技術は、かつてのオンプレミス時代から現在に至るまで、大きな変化を遂げています。この変化は、業界の若手もベテランも同様に困惑させています。若手エンジニアにとっては、何から学べばよいのか、どのような知識が重要なのかが理解しづらく、膨大な学習時間を要するように思えてしまうでしょう。

 一方、経験豊富なエンジニアにとっても、クラウド上の新しいデータベースサービス、ベクトルデータベース、NewSQLなど、従来の常識が通用しない新技術への適応が求められています。何を「アンラーニング」し、何を新たに習得すべきか──。この問いに答えるため、新しいデータベース入門書として本書を企画しました。

 データ活用の成功には、適切なデータベース技術の理解と高速な構築、効率的な運用が不可欠です。データ活用の高まりによってデータベース関連の需要も増加しており、企業内でこれらのスキルを習得する意義は大きくなっています。AI(人工知能)やデータサイエンスとの関連性が強く、現代のエンジニアにとって重要なスキルセットの一部を形成しています。

 データベースそのものの専門家になるというより、AIやデータサイエンスなどデータを活用するスキルや、インフラ技術、SRE(Site Reliability Engineering、サイト信頼性エンジニアリング)などのエンジニアリング手法と合わせて習得し、価値を出すことに多くの企業は意味を見いだしています。

 一人前のデータベースエンジニアになるには、多くの知識と経験が必要です。データベースは複雑な機能を持ち、多様な形態・製品・サービスが存在します。技術スタックとしても、インフラからアプリケーションまで幅広い領域と関連を持ちます。ベテランエンジニアは、これらの知識についてこれまで長い年月をかけて習得してきました。

 しかし今日、学習期間とデータベース構築・運用業務を大幅に短縮できる可能性があります。ノウハウを短期間で吸収できれば、データ活用を高速に実行して企業変革に寄与できるようになります。データ活用のアジリティーを高められる人材は高い市場価値を持ちます。その鍵となるのが、クラウドと生成AIです。本書は、この2つの技術を前提とした「新しいデータベース入門」となることを目指しています。

 クラウド環境では、データベースの多くの複雑性が自動化・隠蔽されており、従来必要だった知識の一部は不要となっています。これにより学習内容自体を減らせます。重要なのは、今後も学習する価値があることと不要になることを正しく見極め、意味のある学習に時間を投資することです。

 生成AIの活用は特に開発の下流工程において大きな効率化をもたらします。さらに、生成AIは個人の高速学習ツールとしても活用できます。生成AIでの業務効率化は自社の開発プロセスに組み込んで成果を出せるものであり、発展途上の領域もあります。本書ではいくつかのサンプルを出すにとどめています。

 本書は専門領域のエキスパートとの共著としています。データベース領域でも特に新しい技術領域やエンジニアリング手法、特殊な分野は、その道のエキスパートや大規模システムへの適用経験者、みずから越境して新たな道を切り開いている先駆者の方々に、最先端の内容を分かりやすく書いていただきました。共著にすることで執筆内容の広がりとスキルやキャリアに関する多様な目線を入れることができたと自負しています。

 本書が、変化し続けるデータベース技術の世界において、習得の指針となれば幸いです。

2025年3月21日 株式会社D.Force 代表取締役社長 川上 明久


【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示