その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はアンドリュー・S・タネンバウム、ニック・フィームスター、デビッド・J・ウェセラル(著)、水野忠則、相田仁、東野輝夫、太田賢、西垣正勝、渡辺尚(訳)の『 コンピュータネットワーク 第6版 』です。
【まえがき】
本書は今や第6版となった。各版は、コンピュータ・ネットワークの使い方の変わり目について対応してきた。1980年に初版が出版されたとき、ネットワークは学術的な興味の対象であった。1988年に第2版が出版されたとき、ネットワークは大学や大企業が使用していた。1996年に第3版が出版されたとき、コンピュータ・ネットワーク、特にインターネットは、大勢の人が日常生活の上で、使うようになってきた。2003年の第4版においては、無線ネットワークとモバイル・コンピュータがWebとインターネットにアクセスするための一般的なものになった。第5版では、ネットワークはコンテンツ配信(特にCDNとピア・ツー・ピア・ネットワークを使用したビデオ)と携帯電話が中心になってきた。今回の第6版は、いうまでもなく第5世代セルラー・ネットワーク、100ギガビット・イーサネット、そして11ギガbpsに至る802.11axのWiFiといった超高速のパフォーマンスに重点が置かれている。
第6版の特徴
本書第6版の多くの変更の中で最も重要なものは、共著者にニック・フィームスター教授が加わったことである。フィームスター教授は、MITで博士の学位を取得し、現在はシカゴ大学で教えている。
もう一つの重要な変更点は、第8章がアムステルダム自由大学のHerbert Bos教授によってかなりの部分が変更されていることである。主なフォーカスが、暗号からネットワーク・セキュリティに移っている。ハッキングやDoS攻撃などの問題は、ほぼ毎日ニュースの中心になっているため、Bos教授がこれらの重要な問題に詳細に対処するため、新たに章全体を書き直してくれたことに感謝している。この章では、脆弱性、それらを修正する方法、ハッカーが修正にどのように対応するか、防御者がどのように反応するかなどについて、丁寧に説明している。暗号化に関する記述は、ネットワーク・セキュリティに関して多くのページを割くため、削減されている。
もちろん、この第6版には、絶え間なく変化するコンピュータ・ネットワークの世界に対応するため、このほか、多くの変更が加えられている。主な変更点を章ごとに示す。
第1章は、以前の版と同じように導入部であるが、内容が改訂され、最新の状態になっている。IoT(モノのインターネット)に関する追記、および4G・5Gネットワークを含む最新のセルラー・アーキテクチャに関する記述が更新されている。インターネット・ポリシーに関して、特にネット中立性に関してかなり書き換えられている。
第2章では、DOCSISやファイバ・アーキテクチャといったアクセス・ネットワークで普及している物理媒体についての説明も更新された。最新のセルラー・ネットワーク・アーキテクチャと技術が追加され、衛星ネットワークの節も大幅に更新された。モバイル仮想ネットワーク事業者やセルラー・ネットワーク・スライシングに関する議論など、仮想化などの新しい技術が追加された。ポリシーの議論は再編成され、更新され、スペクトルなどのワイヤレス分野でのポリシーの課題が追加された。
第3章は、広く使用されているアクセス・テクノロジーであるプロトコルの例としてDOCSISを含むように更新された。もちろん、誤り訂正コードの多くは時代を超越したものとなっている。
第4章は、40ギガビットおよび100ギガビット・イーサネット、802.11ac、802.11ad、および802.11axに関して新たに記載されている。ケーブル・ネットワークのMAC副層を説明するDOCSISにも新たな内容が追加された。802.16については、セルラー4Gおよび5G技術に変わりそうなため、その部分は削除された。RFIDに関する部分も削除したが、これは他の話題を追加したため分量の制約があったのと、RFIDそれ自体はネットワークの直接関連していないためである。
第5章は、輻輳管理に関する議論を明確で、最新のものとした。トラフィック管理に関するところが更新および明確化され、トラフィック・シェイピングおよびトラフィック・エンジニアリングに関する議論が更新された。この章には、OpenFlowやプログラム可能なハードウェア(Tofinoなど)を含む、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)に関して新しい節が設けられた。この節には、帯域内ネットワーク・テレメトリーなどのSDNの新しいアプリケーションに関する説明も含まれている。IPv6に関する議論の一部も更新されている。
第6章は、TCP CUBIC、QUIC、BBRなどの最新トランスポート・プロトコルに関する新しい内容を説明するため大幅に改定されている。パフォーマンス測定に関する記述は、コンピュータ・ネットワークのスループットの測定に焦点を当てるように完全に書き直された。ここには、アクセスするISPの速度が上がるにつれて、アクセス・ネットワーク全体を測定するという課題に関する広範な議論が含まれている。この章には、パフォーマンス測定の新たな分野であるユーザーの体感品質の質の測定に関しても新たに説明されている。
第7章は大幅に改訂されている。コンピュータ・ネットワークに直接関連しなくなった60ページを超える部分が削除された。DNSに関しては、それを暗号化し、プライバシー特性を全般的に改善するという現在進行中の傾向を含め、DNSの最新の開発を反映するようにほぼ完全に書き直されている。DNS-over-HTTPSやその他のDNSに対するプライバシー保護技術などの新しいプロトコルについて説明する。Webに関する議論は大幅に書き改めた。これはWebで暗号技術がますます浸透していることと、トラッキング(追跡)などのWeb上のプライバシーの問題が至る所で提起されていることを反映している。この節には、Webプライバシーに関するまったく新しい項が追加され、最新のコンテンツ配信テクノロジー(コンテンツ配信ネットワークなど)に関するより広範な議論、およびピア・ツー・ピア・ネットワークに関するいっそう充実した議論が収めた。インターネットの進化に関する項も、分散型クラウド・サービスへの傾向を踏まえて更新した。
第8章は完全に見直された。以前の版では、セキュリティを扱う本章の焦点は、暗号化による情報セキュリティが中心であった。しかしながら、暗号化はネットワーク・セキュリティの一つの側面にすぎず、実際のセキュリティの問題発生を見ると、通常、暗号化は関係しない場合が多い。このために、セキュリティの原則、基本的な攻撃手法、防御、およびシステム関連のさまざまなセキュリティ問題に関する新しい内容を追加した。さらに、今や時代遅れのいくつかの暗号化技術を削除し、より新しいバージョンのプロトコルと標準規格を導入することで、既存の内容を更新した。
第9章では、推奨図書と包括的な関連文献が最新の内容に更新された。さらに、演習問題と参考文献が新たに数多く追加された。
頭字語のリスト
コンピュータの本は頭字語でいっぱいである。本書も例外ではない。本書を読み終える時には、下記の頭字語を理解できるようになっている。
AES、AMI、ARP、ARQ、ASK、BGP、BSC、CCK、CDM、CDN、CRL、DCF、DES、DIS、DMT、DMZ、DNS、EAP、ECN、EDE、EPC、FDD、FDM、FEC、FSK、GEO、GSM、HFC、HER、HLS、HSS、IAB、IDS、IGP、IKE、IPS、ISM、ISO、ISP、ITU、IXC、IXP、KDC、LAN、LCP、LEC、LEO、LER、LLD、LSR、LTE、MAN、MEO、MFJ、MOW、MIC、MME、MPD、MSC、MSS、MTU、NAP、NAT、NAV、NCP、NFC、NIC、NID、NRZ、ONF、OSI、PAR、PCF、PCM、PCS、PGP、PHP、PIM、PKI、PON、POP、PPP、PSK、RAS、RCP、RED、RIP、RMT、RNC、RPC、RPR、RTO、RTP、SCO、SDH、SDN、SIP、SLA、SNR、SPE、SSL、TCG、TCM、TCP、TDM、TLS、TPM、UDP、URL、USB、UTP、UWB、VLR、VPN、W3C、WAF、WAN、WDM、WEP、WFQ、およびWPA。
しかし、心配する必要はない。これらの頭字語は、使用される前に太字で記載され、しっかりと定義されている。楽しいテストとして、あなたが本書を読む前に、どれほどの頭字語を把握できているかを数え、そして、本書を読んだ後に、もう一度ためしてみるとよい。
教員用教材
以下の保護された教員用教材は、発行元のWebサイト(
www.pearsonhighered.com/tanenbaum
)で入手できる。ユーザー名とパスワードについては、その地域でピアソンの代理店となっている会社にお問い合わせのこと(訳注:日本語版の読者のための教員用教材の提供方法については日経BPのWebサイト「日経BOOKプラス」での本書の紹介ページを参照のこと)。
● 演習問題解答集
● パワーポイント講義スライド
学生用教材
学生のための教材は、
www.pearsonhighered.com/tanenbaum
のWebサイトでオープン・アクセスとなっており、下記のものが利用可能となっている。
● 本書の図、表、およびプログラム
● 電子透かしデモ
● プロトコル・シミュレータ
それ以外にも学生用の教材が、
www.computernetworksbook.com
に用意されている。
謝辞
第6版の執筆に関しては、多くの方々に協力していただいた。特に、Phyllis Davis(St. Louis Community College),Farah Kandah(University of Tennessee,Chattanooga),Jason Livingood(Comcast),Louise Moser(University of California,Santa Barbara),Jennifer Rexford(Princeton),Paul Schmitt (Princeton),Doug Sicker(CMU),Wenye Wang(North Carolina State University),そしてGreg White(Cable Labs)。
タネンバウム教授の学生のEce Doganer,Yael Goede,Bruno Hoevelaken,Elena Ibi,Oskar Klonowski,Johanna Sanger,Theresa Schantz,Karlis Svilans,Mascha van der Marel,Anthony Wilkes は、本書原稿において、アイデアとフィードバックを提供していただいた。
Jesse Donkervliet(Vrije Universiteit)は、読者に役立つ新しい演習問題を考えていただいた。
Paul Nagin(Chimborazo Publishing,Inc)には、インストラクター向けのパワーポイント・スライドを作成していただいた。
ピアソンの編集者Tracy Johnsonは、大小さまざまな点で助けてくれた。彼女のアドバイス、意欲、そして粘り強さがなければ、この第6版は実現しなかったであろう。Tracy、ありがとう。本当にありがとう。
最後に、最も大切な人々に感謝する。Suzanneの忍耐と愛に感謝する。BarbaraとMarvinは、良い教科書と悪い教科書の違いが今ではすっかりわかっており、常に良いものを作るための刺激となってくれている。DanielとMatildeは私たちの家族への素晴らしい仲間である。Aron、Nathan、Olivia、Mirteはすぐにはこの本を読みそうにないが、彼らは私にやる気を起こし、将来の楽しみをもらっている(アンドリュー・S・タネンバウム)。Marshini、Mila、Kira:私のお気に入りのネットワークは私たちが一緒に作り上げたものだ。応援と愛、ありがとう(ニック・フィームスター)。KatrinとLucyの絶え間ない支援のおかげで、私はいつも笑っていることができた。ありがとう(デビッド・J・ウェセラル)。
アンドリュー・S・タネンバウム
ニック・フィームスター
デビッド・J・ウェセラル
【訳者まえがき】
2013年8月に本書の第5版を上梓した。それから10年経ち、コンピュータ・ネットワークは時々刻々と多大に変化してきている。
コンピュータ・ネットワークの発展は、まさに世の中の動きと連動している。本書の第1版が出版された時点ではまだ、コンピュータ・ネットワークとは一体どのようなものであろうかといった興味の対象でしかなかった。その後の第2版を経て第3版が出版された時点では、コンピュータ・ネットワークは広く一般に浸透し、もはや珍しいものではなく、生活の基盤技術であり、なくてはならないものになった。言い換えると、コンピュータ・ネットワークも、電気、ガス、水道、道路、橋といった従来からの社会基盤に劣らない重要な社会システムになってきた。例えば、電子メールも少し前であれば、便利なものという程度であり、使用できないときがあっても仕方がないとあきらめていたが、いまや人と人がコミュニケートする上でなくてはならないものとなり、一時でも電子メールが不通になると、パニックに陥る人が増えている。もちろん、銀行でのお金の引き出しや飛行機の予約など、数時間でも使用できなくなれば、大騒ぎになることが現実の世界で実証されている。
その後、第4版の時代では、携帯電話、モバイル、無線LANなど、どこでもネットワークでつながる時代となった。次に、第5版の時代では、スマホ、タブレット・マシンなど、ネットワークに常時接続され、音楽、動画などのコンテンツもネットからのダウンロードも当たり前の世界になってきた。
今回の第6版の時点では、通信回線の速度が急激に速くなっており、リアルタイムでテレビの中継のような形でネットワークでも利用できるようになった。
本書はこのように時代に即応した形で、第1版、第2版、第3版、第4版、第5版、そして第6版、と順次改版されてきた。その表紙には、セキュリティ関係で、誕生日攻撃、DoS攻撃、フィッシング、中間者攻撃、PGP、盗聴、監視、高速通信関係で、高速イーサネット、ギガビット・イーサネット、マイクロセル、そしてマルチメディア関係で、ストリーミング・メディア、ブロードキャスティング、コンテンツ配信などが登場している。まさに、これらの用語がこの数年、脚光を浴びてきたものである。
なお、今回第6版の翻訳に関しては、読みやすくすることに留意し、次の点を変更している。
(1)索引
原著の索引は、段下げを利用した階層構造、そして、参照のページも、単一ページでなく、a-bのように、場合によっては範囲を示している。海外の図書はほとんどその形式になっており、以下世界方式とよぶ。それに反して、日本の図書は、一対一対応で、明確に用語で本文に出てくるものを対象にしており、以下では、日本語方式とよぶ。
本翻訳書に関しては、原本の世界方式でなく、日本方式を採用していたが、第6版では世界方式を採用した。世界方式では、段下げと範囲指定により、その用語自身が出てこない場合がある。一方、ただし、直接対応する用語がなくても、通常一般的に出てくる用語を、補足する感じで索引対象となっている。
例えば、Fifth-generation cellular networkも、それ自身の用語は直接原著には出てこないが、ユーザーがその用語に関わる場所を見つけるには便利となっている。段下げも、基本となる用語が一番上に出てきて、それに関わる用語が群として列挙されている。
(2)訳語
第5版では、日本語訳で一般化しなかった用語、例えば、皆さんご存じのURL、元の英語は、Uniform Resource Location,これを統一資源位置指定と訳していたが、第6版では、ユニホーム・リソース・ロケーターとした。また、頭字語の訳に関しては、第5版までと同じ頭字語(英語:日本語)の形式が原則としているが、適切な日本がない場合は、日本語は付さない(例:DOCSIS(Data over cable service interface specification))。
(3)訳語統一
日本語と英語の両方が一般的に使われている場合、第5版では両方が入り交じっていたが、今回統一した。主なものとしては、資源とリソースはリソース、機構とメカニズムはメカニズム、エラーと誤りは誤り、バイナリと2進は2進としている。
(4)訳語の使い分け
英語は一つでも、対応する日本語は複数存在する。第6版では、次のように使い分けることとした。例えば、mediaは、物理層では「媒体」、それ以外は「メディア」とする。bandwidthはHzで測られるアナログの場合は「帯域幅」、bpsで測られるデジタルの場合は「帯域」とする。broadcastは、一般的に使っている放送は「放送」、ネットで使用する場合は、「ブロードキャスト」する。pathは、「経路」を原則とし、グラフ理論などの経路が不適の場合は「パス」とする。
(5)原文に統一性がなかったものの対応
原著では、リンク層とデータ・リンク層が混在している。本書で用いるアーキテクチャはリンク層としているが、第3章のタイトルにあるように、リンク層でなく、データ・リンク層の用語が数多く用いられている。このため、本書ではTCP/IPの層においてはリンク層とし、それ以外はデータ・リンク層の用語を用いることとした。
本書は、激動のコンピュータ・ネットワークについて、表面だけでなく、その裏付けとなる技術を詳細に紹介しており、大学、企業においてコンピュータ・システムに携わる人にとって、まさになくてはならない本と言える。多くの方が本書を基にコンピュータ・ネットワークの真髄を勉強され、次世代の新しいコンピュータ・ネットワークが構築されることを期待する。
本書の翻訳に当たっては、大阪大学、静岡大学、東京大学の関係研究室の皆さんと日経BPの出版担当の皆さんには、大変お世話になった。ここに感謝の意を表する。
2023年3月 訳者代表 工学博士 水野忠則
●著者紹介
アンドリュー・S・タネンバウム(Andrew S. Tanenbaum)は MIT を卒業し、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した。現在は、アムステルダム自由大学のコンピュータ・サイエンスの名誉教授で、40年以上に渡ってオペレーティング・システムやネットワーク、それらに関連する内容を教えている。コンパイラ、分散システム、セキュリティなどについて長年研究をしてきたが、主たる研究テーマは高信頼オペレーティング・システムである。その研究成果は、200編以上の査読付き論文としてジャーナルや国際会議で発表されている。
タネンバウム教授は共著を含め5冊の本を執筆し、版の数は24に及ぶ。また日本語をはじめ、バスク語、中国語、フランス語、ドイツ語、韓国語、ルーマニア語、セルビア語、スペイン語、タイ語など21カ国の言語に翻訳されている。
彼は、当初は学生のプログラミング・ラボで使うことを意図したUNIXクローンであるMINIXの開発者である。MINIXはLinux開発の直接的なきっかけになり、またLinuxが最初に開発されたときのプラットフォームであった。
タネンバウム教授はACMフェロー、IEEEフェロー、Royal Nether1ands Academy of Arts and Sciencesの会員である。ACM、IEEEそしてUSENIXから数多くの表彰を受けており、それらは彼のWikipediaのページに載っている。彼はまた二つの名誉博士号を有している。
タネンバウム教授のホームページは http://www.cs.vu.nl/~ast/ である。
ニック・フィームスター(Nick Feamster)はシカゴ大学のコンピュータ・サイエンスの教授であり、また同大学のデータおよびコンピューティング・センター(CDAC)のセンター長である。彼の研究はコンピュータ・ネットワーキングやネットワーク・システムのさまざまな側面に渡るが,中でもネットワークの運用、ネットワーク・セキュリティ、インターネット検閲、コンピュータ・ネットワークへの機械学習の応用などに焦点があてられている。
彼は2005年にMITでコンピュータ・サイエンスの博士号を取得した。また電気工学とコンピュータ科学の学士号を2000年に、その修士号を2001年にMITで取得している。彼は初めの頃(後にAltaVistaのディレクトリ・サービスになる)Looksmartに勤め、会社で最初のWebページ巡回プログラムを作成した。またDamballaに勤務したときには、会社で初めてのボットネット検出アルゴリズムの設計を支援した。
フィームスター教授はACMフェローである。ネットワーク・セキュリティへのデータ駆動型アプローチへの貢献により、米国の「科学者とエンジニアのための大統領早期キャリア賞」(PECASE)を受賞した。ルーティング制御プラットフォームに関する彼の初期の仕事はソフトウェア定義ネットワークへの貢献が評価され、USENIX Test of Time賞を受賞した。彼はこのトピックに関する最初のオンライン・コースを作成した。彼はまた、ジョージア工科大学のオンライン・コンピュータ・サイエンス修士プログラムの創設インストラクターでもある。
彼は熱心な長距離ランナーであり、ボストン・マラソン、ニューヨーク・マラソン、シカゴ・マラソンなど20回のマラソンを完走している。
デビッド・J・ウェセラル(David J. Wetherall)はグーグルに勤めている。それ以前にはシアトルのワシントン大学のコンピュータ・サイエンスとエンジニアリングの准教授であり、シアトルのインテル研究所のアドバイザーであった。彼はオーストラリア出身で、西オーストラリア大学電気工学科を卒業し、MITからコンピュータ・サイエンスの博士号を取得している。
ウェセラル博士は20年間に渡りネットワーク関係の分野で仕事をしてきた。彼の研究は、ネットワーク・システム(特に無線ネットワークとモバイル・コンピューティング)、インターネット・プロトコルの設計、およびネットワーク測定に関するものである。
彼は新しいネットワーク・サービスを素早く導入するためのアーキテクチャであるアクティブ・ネットワークのパイオニアであり、ACM SIGCOMM Test-of-Time賞を受けた。彼はインターネット・マッピングのブレークスルーにより、IEEE William Bennett賞を受けた。彼の研究は2002年にNSF CAREER賞で認められ、2004年にSloanフェローになった。
ウェセラル博士はネットワーク研究コミュニティにも参加している。彼はSIGCOMM、NSDI、MobiSysなどのプログラム委員会の共同代表を務め、ACM HotNetsワークショップを共同で設立した。彼は数多くのネットワークに関する国際会議のプログラム委員会の委員であり、ACMコンピュータ・コミュニケーション・レビューの編集委員でもある。
●訳者
はじめに、第9章 水野忠則 静岡大学名誉教授
第1~3章 相田仁 東京大学大学院工学系研究科教授
第4~5章 東野輝夫 京都橘大学工学部情報工学科教授・副学長
第6章 渡辺尚 大阪大学大学院情報科学研究科教授
第7章 渡辺尚 大阪大学大学院情報科学研究科教授
太田賢 株式会社NTTドコモ サービスイノベーション部 部長
第8章 西垣正勝 静岡大学創造科学技術大学院教授
【目次】