その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は本間正人さん、松瀬理保さんの 『セルフ・コーチング入門<第2版>(新装版)』(日経文庫) 。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
「自分自身をコーチングすること」を「セルフ・コーチング」と呼びます。
ビジネスの世界で「コーチング」は、広く一般に普及してきました。今や、マネジメントにおけるコミュニケーションの基本スキルとして定着しています。管理職がコーチングの研修に参加して、そこで学んだ考え方やスキルを活用し、部下の指導に役立てるという取り組みだけでなく、経営のスピードを上げ、組織の業績の持続的向上をはかるためには、社員のセルフ・コーチング能力を高めていくことが大切です。
多くの企業の人事担当者の方から、「コーチングの重要性はわかるが、なかなか一人ひとりの部下を個別に指導している時間がない」「自分自身をコーチングする力は、管理職だけでなく、すべての人に必要なので、これを伸ばす良い方法はないか」といった声をよく耳にします。
会社の中で仕事をしていると、問題に直面することは日常茶飯事と言えるでしょう。そんな時、一人で抱え込むと、なかなか解決しません。頭の中で同じ想念がぐるぐるまわり続け、気力・体力は消耗するばかりで、一向に前に進まないのです。「押してもだめなら引いてみな」と言いますが、一人で考えていると、目の前の扉を押すこと以外に気がまわらなくなるのが、世の常です。
セルフ・コーチングは、くよくよと思い悩むのではなく、システマティックに内省し、建設的に考える習慣です。扉を「引く」という選択肢もあれば、「壊す」「回り道をする」「他の人といっしょに押す」「機械を使う」など、視点を広げれば、必ず選択肢は他にもあるはずです。
悩んでいる人にとって、「セルフ・コーチング」という言葉は、ひょっとすると自分の思考の枠・呪縛を解く呪文になるかもしれません。つまり「セルフ・コーチング」と唱えた瞬間に、こころの中に、もう一人の自分、コーチを持つことが可能になります。
本書の執筆は、日本経済新聞社の林正愛氏から、日経文庫『コーチング入門』の姉妹編として、セルフ・コーチングのポイントがつかめる手軽な入門書を書いてほしいというお話をいただいたことから始まりました。管理職だけでなく、新入社員から経営幹部まで幅広い読者を対象にしたい、そして、自らの状況をコーチの視点で見つめ直し、思考と感情を建設的に整理しながら、行動につなげていくヒントをつめこんで、実際の仕事に役立つ本にしてほしい、というご要望でした。
セルフ・コーチングをテーマにした本は、これまでにも数冊出版されていますが、枠組みは示すものの、実際にどんな質問を自分に問いかけたらよいのか、なかなかイメージしにくいという場合が多かったようです。
そこで本書では、具体的なケースを取り上げ、心内対話を描出する手法をとりました。独り言がそのまま文字になっているとお考えいただければ、わかりやすいと思います。「セルフ・コーチングの使えるガイドブック」にしたいというのが、著者の願いなのです。
このまえがきをお読みの方は、現在、セルフ・コーチングに何らかの関心を持ち、状況の打開や発展を目指していることと思います。この本を手にとり、読み始めた時点で、すでに前向きな一歩を踏み出しているのです。できれば、読むだけでなく、本書に掲載されたワークに取り組み、行動に移していただきたいと思います。
「こんな発想が自分の中から飛び出してくるとは予想外だった」「くよくよ悩むエネルギーを前向きに使うことができた」といったサクセスストーリーが、たくさん生まれてくるはずです。ぜひ、実際に活用してみてください。
本書は、章・節ごとに、二人の著者が分担して執筆し、最終的には本間が責任を持って文言の修正を行ないました。本書の上梓にあたっては、日経文庫編集長の平井修一氏、初版でお世話になった林正愛氏、編集者の金子芳恵氏をはじめ、多くの方のご尽力を賜りました。特に、『自分は自分で変えられる』(PHP研究所)の著者でコーチの小野仁美さんからは貴重な示唆をいただきました。心から御礼申し上げます。
二〇一六年一月
本間 正人
松瀬 理保
【目次】







