その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は佐伯徹さんの『 DX失敗学 なぜ成果を生まないのか 』です。
【はじめに】
このたびは、数ある書籍の中から本書をお選びいただき、誠にありがとうございます。
本書はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を会社から指示され実施してみたが、うまくいかなかったり、指示されてプロジェクトを始めたもののうまくいくか不安にかられていたり、といった方に向けた本です。筆者が長年「失敗学」で培った経験から作成した、失敗の真因を究明するためのツール「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」を使って過去の失敗例を分析し、真因を追究しています。これを使って読者自らが究明することで、次に向かって進んでいただきたいという思いで書きました。
本書の構成としては、まず、序章でDXプロジェクトの大部分は失敗していることを可視化し、多くの企業においてDXがうまくいっていない現状をお伝えしています。DXを簡易的に確認できるチェックシートを使って、読者自ら現状を把握いただけるようにしています。次に、第1章では、多くの組織が失敗から学んでいないことを、事例を使って説明します。また、どうすれば失敗の真因にたどりつけるのか、「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」を使うと何が分かるのか、自分だけでも解決に導けるのかについても解説します。
そして、第2章ではDXに果敢に挑戦し、うまくいかなった事例を使い、「ITプロジェクト版失敗原因マンダラ図」でどのように真因の糸口を見出せるか、筆者が実際に分析を行った結果をお伝えしています。
事象のケースとして6つのカテゴリを設定しました。まず、ケース1では、顧客拡大を狙ってセキュリティーレベルを下げたことで招いた失敗として、7pay(セブンペイ)とドコモ口座、ケース2では要望を柔軟に取り入れすぎたことで招いた失敗として、LINE Bankとブルースターバーガーを取り上げます。
ケース3では、パンデミックなどの経済変化を軽視したことで招いた失敗として三菱UFJフィナンシャル・グループのGO-NET、ケース4では文化の違いを軽視したことで招いた失敗としてOYO LIFEを分析します。
ケース5では技術力の過信で招いた失敗としてマウントゴックスとCoincheck、ケース6では委託先への仕様丸投げで招いた失敗として野村証券と旭川医科大学を取り上げます。ケース6の2事例については、委託先管理の失敗やパッケージソフトのカスタマイズの失敗といったことから他のDXの失敗事例とは異なっています。しかし、パッケージソフトによって早期導入を狙い失敗した点では現状のDXの失敗事例にも通じるところがあり取り上げることとしました。
最後に第3章ではDXの失敗はDXに固有のものなのか、他のITプロジェクトと同じなのかについて考察を行っています。プロジェクトを途中で振り返って失敗を未然に防ぐためのチェックシートの使い方についても解説します。また、失敗を恐れるだけで何もしないのではではなく、敏感に違和感を感じとるような社員の育成を行っている企業を紹介します。貴社での取組みへの参考にしてください。
そして、本書を読み終えた後、失敗を恐れるだけでなく、真因をつきとめ、対策を講じたうえで同じ失敗に陥ることなく進めることができるように、また、危ないことを察知する能力を持った組織を作るための「違和感を持つ力」が芽生えていることを期待しています。
失敗学会 理事
佐伯 徹
【目次】




