その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は中野ジェームズ修一さんの『 大人気フィジカルトレーナーが本気で考えた 疲労回復の習慣(日経ビジネス人文庫) 』です。

【はじめに】
疲労に悩むすべての人へ──
フィジカルトレーナーが語る疲労回復法

 近年、リカバリーウェアやマッサージガンが話題になっています。リカバリーウェアは遠赤外線で血行を良くする目的のウェアで、マッサージガンは筋肉や筋膜に高速で振動を加えるマッサージ機器。ともに疲労回復が期待できるとされています。
 リカバリーウェアやマッサージガンが人気なのは、それだけ疲れている人が増えているからでしょう。

 全国10万人を対象とする一般社団法人日本リカバリー協会の「日本の疲労状況2025」によると、約8割(78.5%)もの人が何らかの疲労を感じていると答えています。日本は疲労大国なのです。
 そこでこの本では、疲労に悩むすべての人たちに、エビデンス(科学的な証拠)のある疲労回復法と疲れない体づくりをお伝えしたいと思います。

 ここで自己紹介をさせてください。
 私はフィジカルトレーナーとして、オリンピック代表選手、青山学院大学や実業団の駅伝選手、その他多くのプロアスリートの体づくりのサポートをしています。並行して、減量や腰痛予防といった目的に応じて、女性や高齢者を含めた一般の方々にもトレーニング指導しています。

 「そんなフィジカルトレーナーがなぜ疲労回復を語るのか?」
 そう疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

 フィジカルとは、肉体のこと。フィジカルトレーナーというと、アスリートにつらいトレーニングを課して”しごく”のが仕事だと誤解されているようです。“しごく”ことはないものの(笑)、一人ひとりに必要なトレーニングの処方が大切な仕事であることは確かですが、それ以上に重要な役割を担っています。それが疲労からの回復を促すことなのです。

 つねに上を目指しているアスリートたちは、日々ハードな練習に打ち込んでいます。その姿に応えたい監督やコーチは、限界に迫るような過酷な練習メニューを提示しがち。そのうえ、私のようなフィジカルトレーナーが処方する筋力トレーニングをこなそうとすると、真面目なアスリートほど疲労を溜め込みます。オーバートレーニングとなり、頑張っているのに成績が伴わないという苦しい状況に追い込まれることもあります。

 「練習は裏切らない」という言葉もありますが、疲労が蓄積しすぎると練習が裏切ることもあり得るのです。むしろ「休むのもトレーニングのうち」。それは一般の方々でもまったく同じ。
 私たちは、負担が最小限に抑えられるようにトレーニングを工夫したうえで、自分で疲労を回復する方法を指導しています。本書では、アスリートや一般の方々に長年指導してきた疲労を溜めない方法、疲労から回復するメソッドをお伝えしたいと思います。

 そもそも、「疲労」とは、心身に大きな負担がかかり、パフォーマンスが低下すること。また、疲労によって心身が訴える疲労したという自覚を「疲労感」と呼びます。疲労と疲労感は別物ですが、私たちは通常、区別なく使っています。
 一口に疲労といっても生理的・肉体的なものと精神的なものがあります。さらに、肉体的な疲労でも広く全身的なものと、筋肉など狭く部分的なものがあります。

 疲れている人が多いことから、疲労回復をテーマとした書籍は数多く出版されています。その大半は肉体的な疲労への対処法の紹介に重きが置かれており、精神面に対処するノウハウについてはあまり触れられていません。しかし実際には、両者は1枚のコインの表裏のように混在しているもの。そのため本書ではあえて両者を区別せず、両面で疲労から回復する方法を紹介していきます。
 心技体という言葉があるように、アスリートにはメンタル面のケアも不可欠。ですから私はフィジカル面(体)だけではなく、メンタル面(心)のサポートにも力を入れています(残る技=スキルに磨きをかけるのは、監督やコーチの役割です)。

 こうした背景から、私はフィジカルだけではなくメンタルに関しても専門的に学び、アスリートのメンタル面の疲労回復に活かしています。運動不足の働き盛り世代の疲労はメンタルに由来するものも多いでしょうから、私の経験がお役に立てるのではないかと考えています。

 本書では、皆さんに今日から手軽に取り組んでいただけるように、工夫を凝らしています。
 疲労のメカニズムや回復法、体づくりについて解説しながら、ご紹介するメソッドごとに、「具体的に何をすればよいのか」「実践するうえで大切なことは何か」を「ToDo」として一言でまとめています。加えて、皆さんの理解が深まるように、本文中で重要なポイントを図解とイラストで展開しています。

 リカバリーウェアやマッサージガンを使うのも悪くありません。でも、そうした他力に頼る前に自身でできることはまだまだたくさんあります。自分にあったもの、できそうなものから1つでも多く日常生活に取り入れてみてください。そして忙しい毎日も、軽やかな体と心で健康的に楽しみましょう。

フィジカルトレーナー 中野ジェームズ修一


【目次】

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