その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は倉嶌洋輔さんの『 自由な時間と仕事の成果が手に入るAI時間術 MAKE TIME with AI 』です。

【はじめに】

なぜ、これまでの時間術が役に立たなくなるのか

 「時間がない」──。
 この言葉が口癖になっている人も多いのではないでしょうか。
 時間をつくるには寝る時間を削るしかない、ハードにマルチタスクで仕事をこなすしかないと、無理をする人もいるかもしれません。
 「もっと時間があれば…」「移動時間であの作業を終わらせよう…」
 タスク管理術、To Do リストと重要度・緊急度による分類、ポモドーロ・テクニック。そうした手法を使っても、リストアップした大量のタスクを結果的にこなせなかったという経験はありませんか?
 従来の時間術は、1日=24時間という、変えることのできない絶対的な制約条件の下で時間を捻出する方法を提案してきました。
 しかし、「無駄を削る」「優先順位をつける」「集中力を高める」など、どんなに頑張っても、1日の時間は増えません。
 それどころか、そういったテクニックを多用することで、むしろ仕事に追われる状況を強めてしまい、逆に心も身体も疲弊させてしまうことすらあります。その結果、ビジネスパーソンの多くは時間に追われ、疲れ果てています。
 そこでまず時間不足で悩む人に、朗報をお伝えしたいと思います。
 実は、生成AIの登場によって、私たちを縛ってきた1日=24時間という制約が根底から覆されようとしているのです。
 例えば、2026年初頭に注目され始めたClaude Code(クロードコード)は、働き方の常識を大きく変え、AIを“相談相手”から“実行役”に変えました。人間が方向性を示せば、AIがパソコンやウェブ上で実務を自律的に進めていく。その結果、人間は作業そのものに追われることなく、どこに向かうべきかの“方向づけ”と、最終的な“意思決定”という、人間本来の役割に集中できるようになりました。Claude Codeについては、巻末の付録Bで解説しています。

時間は「削る」から「増やして運用する」へ──「時間の複利」とは?

 これまでの時間術は、どちらかと言うと、大量のタスクを短時間で効率よく「心身を削って」こなすことが前提で、いわゆる、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する発想でした。
 いかに多くのことを速く処理するか。できるだけ集中力を高め、どれだけ無駄を削るか。つまりそれは、限られた24時間の中で、心身を酷使して生産性を上げる方法でもありました。
 これまで、さまざまなビジネスリーダーやコンサルタント、研究者たちにより、数多くの時間術が提案され、膨大な時間術の書籍が世に出て、多くのビジネスパーソンがそれらを試してきました。
 ところが、生成AIの登場により、仕事の進め方だけでなく、プライベートも含め、私たちの時間のあり方そのものに劇的な変化が起こりつつあります。生成AIをうまく活用することで、「時間を節約する」のではなく「時間を創出して、再投資する」という、これまでとはまったく異なるアプローチができるようになってきたのです。この新しい時間へのアプローチを本書では「時間の複利」と定義し、解説していきます。

0-1 これまでの時間術vs AI時間術
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時間を創るための「適切な生成AI選び」×「普遍的なプロンプト術」

 私は複数のビジネススクールでの講座提供、大手自動車メーカー、大手広告代理店、国立病院など、約50社13万人以上に生成AIの教材や研修を提供してきました。
 そうした中で、「AIを導入したのに成果が上がらない」という悩みを抱えている企業の人材育成担当者やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進者、現場のビジネスパーソンに日々、お会いしてきました。
 その悩みの原因はどこにあるのか? 答えはシンプルです。

 そういった方々は、「①適切な生成AIツールを選ぶ」「②質の高いプロンプト(指示文)をつくる」という要素の掛け合わせで、成果の質が大きく変わるというポイント(要諦)を、まだ十分に理解されていないことが原因の大半を占めています。
 ただ単にAIが使える環境を手に入れても、時間の創出も、業務負荷の軽減も、仕事の質の向上も決して実現できません。
 そこで本書では、あたらしいスタイルで時間を創出していく「時間の複利」を実現する上で不可欠な生成AI活用のためのテクニックやメソッドをお伝えしていきます。
 生成AI選びであれば、自分の業務に特化した性能比較用のプロンプトを使って各種AIを試し、「自分の用途×各AIの成績表」をつくり、AIの強み弱みを手早く把握できるようにします。次々と新しいツールが登場する中でも短時間で自分の用途に合った適切なAIを選び、「最新=最善」とする表層的なインフルエンサーの意見に振り回されないことも、時間を失わないためには重要です。
 質の高いプロンプトのつくり方については、私が主宰する生成AIビジネススクール「リニア」や法人研修で提供しているリニア式プロンプト術をご紹介します。主に文系の人が苦手と感じやすい「#」や「{}」といった記号を使わず理解しやすい方式という特徴があります。これは、AIのハウツー本のような断片的なテクニックではなく、体系化された一生使えるリテラシーを身につけられ、さまざまなAIで使える汎用性の高い手法になっています。

生成AI活用時間マトリクスと学びのステップ

 本書では仕事以外での時間創出も重要視しているため見取り図となるコンセプトをもう1つご紹介します。それは、私たちの時間を4つのカテゴリーに分類した図「時間の複利マトリクス」です。
 このマトリクスは、下記の2軸で、4つの時間を定義します。
 横軸〈答えのない領域 ↔ 答えのある領域〉
 縦軸〈ビジネス ↔ プライベート〉
 それぞれの時間の特徴を踏まえ、AIの活用法を第3章と第4章で体系的に解説していきます。

0-2 時間の複利マトリクス
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本書の構成──あなたを導く「時間創造」へのガイド

 本書は、数年経てば内容が古くなってしまうような、表面的なテクニック本ではありません。日々のタスクに追われる状態から抜け出し、時代が変わっても一生の資産となるリテラシーを身につけて連鎖的に時間を生み出すことで、仕事と人生における「時間の主導権」を取り戻すための実践的なガイドです。
 全5章を通じて段階的に学びを深めながら、最後は「AIと共に生き残るための近未来予測と対策」までを解説していきます。以下に、大まかな構成をご紹介しておきましょう。

0-3 AI時間術の習得のガイド
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1 理解する
 第1章では、スタート地点に立つための基礎知識で土台を整えます。生成AIを「知性の自転車」として捉え、私たちがどのような視点(ロール)を持ってAIを使いこなすべきかという本質を学び、AIで時間を創出し、生まれた時間を再投資する「時間の複利」という新しいアプローチを理解します。その上で、最近注目されている時間術「タイムボクシング法」を生成AIと掛け合わせる「攻め」の手法を紹介します。一方、AIを使い倒して自分が倒れた苦い経験からの教訓とすぐに実践できるお勧めの休息法を解説します。この章を読み終える頃には、あなたは生成AIとの適切な付き合い方の指針を手にしているはずです。

2 身につける
 第2章では、AIを使って質の高いアウトプットを出すための方程式や、AIを使いこなすための基本フレームワークを学びます。具体的にはどのAIにも通用する普遍的なプロンプト技術として「2軸で考えるプロンプトキャノンモデル」や「3段落のR・P・Aフレームワーク」「用途を広げる5Hフレームワーク」を解説します。これらのフレームワークは、AIの種類やバージョンが変わっても使い続けられる、あなたの一生の資産となるでしょう。
 なお、5Hフレームワークについては巻末の付録Aで詳細に解説していますので、プロンプトテクニックを深めたい方はこちらも参考にし、時間の複利の効果を最大化させてください。

3 実践する
 第3章と第4章は、実践のステージです。これまでに学んだベースをもとに、具体的な活用の考え方や例を解説します。「仕事とプライベート」「答えのない領域と答えのある領域」という、2つの軸で時間を区切り、4つの象限に分類し、それぞれで具体的にAIをどう活用するかを解説します。その後AI活用の大前提となる「ハルシネーション(AIの嘘)」への対策を学んだ上で、第3章では「こなす」時間と「まなぶ」時間という答えのある領域の仕事とプライベートでのAI活用法をご紹介します。続く第4章では、仕事における「つくる」時間とプライベートにおける「あそぶ」時間という答えのない領域での実践法をお伝えします。
 2つの章を読み終える頃には、生成AIで時間が時間を生む「時間の複利」のポイントを押さえ、あなたの24時間は従来よりも、心身共に持続可能で豊かな質と量を持つようになっているはずです。

4 深化する
 第5章は「AI活用」の先にある働き方と生き方の未来について考えます。生成AIが普及し、誰もが使いこなせるようになったとき、皆が高品質なアウトプットを出せる時代が訪れます。つまり、AIの性能が高まり、高性能のAIやプロンプトテクニックが普及するほど、私たちがAIから引き出すアウトプットは「ハイレベルでありながら画一的なもの」へと収束していきます。そのとき、どうすれば他者と差別化できるのか。3つの視点から、AIが当たり前になった世界での「生き残り方」を示します。

 このような4階層の5章構成になっています。生成AIは、私たちの時間の使い方、働き方、そして生き方そのものを変革する可能性を秘めています。しかし、その可能性を引き出すには、「土台となる」知識と体系化されたテクニック、そして何より「自分の時間 をどう使いたいのか」という明確な意志が必要です。
 本書を通じて、あなたが時間の複利を活用し始め、心身を休める余裕を持つことで持続可能な活力を保ち、これまで諦めていた夢や目標に手が届くようになることを心から願っています。
 では第1章から、生成AIがもたらす「時間の複利」で、あなたの働き方と生き方を変革する旅に出ましょう。

株式会社Focus on 代表取締役 倉嶌 洋輔

【目次】

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