その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は永井康徳(著)、日経ヘルスケア(編)の『 たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル 第9版 2026年度診療報酬改定完全対応 』です。
【はじめに】
介護保険制度が始まった2000年、私は愛媛県松山市でたんぽぽクリニックを開業しました。以来25年余りにわたり、在宅医療の現場に立ち続けながら、この制度の変遷を見つめてきました。その間、国策として在宅医療が推進され、在宅での看取りも少しずつ増えてきました。しかし、多死社会が本格化する今なお、多くの地域で病院での看取り率は7割を超えています。在宅医療がどれほど発展しても、「人は必ず死ぬ」という事実に社会全体が向き合わなければ、真の意味での在宅医療の普及は難しい。私はそう感じ続けています。
2026年度の診療報酬改定では、在宅医療充実体制加算が新設され、その厳しい施設基準を満たせない場合は、従来の在宅緩和ケア充実診療所・病院加算を算定できなくなり、経営に大きな影響が生じる可能性があります。また、在宅時医学総合管理料の月2回訪問区分に重症度割合の要件が新設されました。これは、軽症患者を多数診療している医療機関の適正化として機能し、重症度に応じた在宅医療を促す狙いがあります。今回の改定には、このような意図が込められています。
ただ、ここで私が強調したいことがあります。点数が付いたからその方向に動き、点数が付かなかったからやめる、という発想では本質を見失います。社会に本当に必要な医療を実践していれば、報酬は後から付いてくる。私はそう信じています。大切なのは、地域や社会が何を必要としているかを問い続け、それを愚直に実践していくことだと考えています。重症患者を受け入れる覚悟と、それを支える知識・体制を整えることは、点数のためではなく、目の前の患者にとって最善のケアを届けるためにこそ、求められるのです。
そのためにも、複雑な在宅医療制度を正確に理解することは、私たち専門職の責務です。知識の欠如は患者への不利益に直結します。本書は2012年の初版以来、診療報酬改定のたびに改訂を重ね、おかげさまで第9版を迎えました。今回は2026年度改定を踏まえ、重症度要件をはじめとする重要項目を分かりやすく解説するとともに、改定の重要度ランキングを改めて整理しました。また、これまで発出された疑義解釈を関連する章ごとにまとめました。さらに、レセプトチェックや個別指導対策などに関する新たな章を設け、より現場で役立つ情報を盛り込んでいます。
本書が、制度を理解する手掛かりとなるだけでなく、在宅医療の理念を大切にしながら、社会に必要とされる医療を実践していくための一助となれば、これ以上の喜びはありません。
2026年6月24日
医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック
永井 康徳
【目次】




