その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は淵邊善彦さんの『 契約書の見方・つくり方<第3版>(日経文庫) 』です。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
本書は、主にビジネスパーソン向けに、契約書に関する必要不可欠な知識やセンスを身につけてもらうための入門書です。本書の第2版が出た2017年6月から約9年が経ちました。この間、生成AIやリーガルテックの進化やオンライン会議の普及により、契約書の作成やレビューは格段に効率化されました。しかし、取引の実態を理解し、自社に有利な契約内容にするためには、契約の基本を理解し、応用する人間の能力が不可欠です。
ひな型集や契約の解説書はたくさん出ていますが、出来上がった契約書について解説されているものがほとんどで、実際の作成の過程が理解しにくいという難点があります。本書は、「交渉」という観点から、契約書作成のダイナミックな側面を理解してもらえるように工夫してあります。
企業間取引の契約書に日々接していると、契約書についての知識や経験がどれだけあるかによって、取引が有利にも不利にもなることを実感します。当該取引のリスクやリターンがどこにあるのかをよく理解し、自社に有利になるようにリスクヘッジやリターン確保につながる契約内容にすべきです。契約書は、主に紛争を回避し、会社に「損害」が生じるのを防ぐために活躍しますが、よく考えられた契約書は、積極的に会社に「利益」をもたらすツールにもなりえます。本書を読んで契約書の見方・つくり方をしっかりマスターすることが、企業の競争力を高めることにつながるのです。
本書の構成としては、まず第Ⅰ章と第Ⅱ章で、契約書に関する基礎的知識や形式面の理解を確認し、第Ⅲ章で、売買基本契約書を例にとって重要な条項について解説します。第Ⅳ章では、企業間取引でよく使われる各種契約書のポイントを検討し、最後の第Ⅴ章で、実際の交渉場面も想定して、ライセンス契約書の作成過程をシミュレーションすることにします。
契約書に関する知識は、弁護士や法務部員だけが知っていれば足りるものではありません。AIが進化する時代だからこそ、それを使いこなすための基礎的な知識やセンスが求められるようになります。本書では、取引の最前線で活躍している経営者やビジネスパーソンにも読んでもらえるよう、実務に即してわかりやすく解説しました。また、ロースクール生や法学部生が読んでも十分理解できる内容になっています。幅広い読者の方に本書をご活用いただけるよう願っています。
最後に、本書の編集・改訂に際し、日経BPの平井修一氏、石純馨氏に大変お世話になりました。ここに厚くお礼申し上げます。
2026年6月
淵邊 善彦
【目次】






