その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はアクセンチュア Anthropic ビジネスグループ (編)の『 Claude活用大全 AIと共に学び働き遊ぶ実践ガイド 』です。
【はじめに】
約40年前のビジョンが今現実に
1987年、ある一本の短いビデオが上映された。タイトルは『Knowledge Navigator』。直訳すれば「知の航海者」だ。ビデオの中身は、ある大学教授の朝の優雅な風景から始まる。
教授がデスクの上で薄い折りたたみ式のディスプレイを開くと、画面の中の蝶ネクタイをした執事のような人物がにこやかに語りかけてくる。「メッセージが3件あります。先生の研究員チームがグアテマラから連絡してきました。大学三年生のロバート・ジョーダンが期末レポートの提出を再延長してもらいたいとのこと。そして最後に……」。教授は身支度をしながら、必要なものだけ口頭で指示を出す。
「今日12時に学部内の昼食会があります。2時にキャシーを飛行場まで連れて行き、 4時15分からアマゾン雨林における森林伐採について講義です」
教授が午後の講義の準備に取りかかると、画面上の執事は資料を探し、参照すべき最新の論文を要約し、関連する研究データをグラフに変換し、別の都市にいる同僚に映像で連絡を取り、その同僚と画面越しに議論を交わしながら講義スライドを完成させる。すべてがほんの数分のあいだに、自然な会話の流れの中で進んでいく。
そして教授は、満足そうに席を立ち、昼食に出かける。
最後に画面に映し出されるのは、リンゴのマークとひとつのスローガンだ。
The power to be your best.
(あなたが最高の自分になるための力)
アップル(当時の正式社名はApple Computer, Inc.)からこのコンセプトビデオが発表された当時、これは「夢物語」と評され、実現可能性を疑う声のほうがずっと大きかった。
それから約40年。私たちはこのビデオを別の感覚で見直している。
なぜなら、ここに描かれていたほぼすべてのことが、すでに現実になっているからだ。しかも、特別な研究施設の中だけの話ではない。あなたや、あなたの同僚が今この瞬間に使えるツールとして、手元にある。
その中心にあるのが、本書の主役“Claude”だ。
気づいた人はすでに動き始めている
Claudeに「おはよう」と話しかけるだけで、メールとチャットとカレンダーをまとめて読み込み、優先度の高いものだけを提示してくれる。会議のあとには文字起こしされたテキストをもとに、決定事項とToDoが整理された議事録が作成される。さらに、そのToDoの中でAIが実行できる部分は複数のエージェントが並列で動き出し、リサーチ・資料のドラフト作成・関係者へのフォローまで次々とタスクを遂行してくれる。
そうして仕事を早めに終え、自己学習の時間にあてたり、同僚や友人や家族とゆったりと夕食を楽しんだりする。
「そんなことが本当にできるのか」と思われるかもしれない。だが、すでに動き始めている人たちはいる。
あるプログラミング知識のない起業家は、「エクセルのSUM関数がギリギリ書けるくらい」なものの、ため込んだクレジットカードの経理処理を、Claudeに「このカードのCSVをfreeeに記帳できる?」と話しかけることで、毎月2-3時間かかっていた経費処理を5分で終わらせられた。
ある給与所得者は、投資による配当/売却益やふるさと納税・医療費控除・生命保険料控除等があり確定申告をする必要があったが、Claudeに「確定申告を助けて」と伝えるだけで、例年丸一日かかっていた作業を30分で終えることができた。
ある非エンジニアの副業ブロガーは、Claudeと「こんなサイトを作りたい」と会話することで、コードは1行も書かずにお店のホームページを1時間で作成・公開できた。
仕事だけでなく、プライベートの旅行の日程表をGoogle MapsやUberと連動するWebサイトにしたり、個々人のスキルや趣味嗜好に合わせたパーソナライズドトレーニングプランのアプリを作ったり、あらゆるアイデアを執事のようなAI同僚に話しかければ、現実になる。それに気づいた人はすでに動き始めているのだ。
BC(Before Claude)とAC(After Claude)──「答える」から「実行する」へ
Claudeを使い始めると、ほどなく気づくことがある。「これは、ただ質問に答えてくれるチャットツールではない」という感覚だ。
従来のチャットAIは、優秀な「アドバイザー」だった。人間が問いを立て、AIが答えを返す。その答えを使って作業するのは人間だ。コピー&ペーストして、編集して、送信する。AIはあくまで「相談相手」であり、手を動かすのは自分だった。
ところが Claudeは、その構造を根本から変える。これらは「AIエージェント」と呼ばれるカテゴリーに属し、アドバイスを返すのみならず、タスクを自ら実行して完遂する。ファイルを直接読み書きし、外部アプリと連携し、計画→ツール選択→実行→検証→修正のループを自律して回す。人間がコピー&ペーストする必要はない。あとは作業が「完了した」という報告を待つだけだ。
「自分で動く」ことの意味
この違いは、単なる機能の差ではない。仕事の構造そのものが変わる、ということだ。
チャットAIとの仕事は「1問1答」の積み重ねだ。あなたが問い、AIが答え、あなたがそれを使って次の一手を打つ。主導権は常に人間にある。これはこれで強力だが、作業の「実行」は人間が担い続ける。
AIエージェントとの仕事は違う。あなたがゴールを伝えると、AIが計画を立て、必要なツールを選び、実行し、結果を確認し、うまくいかなければ修正する。そのループを、完了まで自律的に繰り返す。あなたが担うのは、ゴールの設定と、最終的な判断・承認だ。
比喩で言えば、チャットAIが物知りで「優秀なアドバイザー」だとすれば、AIエージェントは「自分で動く万能バディ(相棒)」だ。アドバイザーにも、実行者(部下)にも、リサーチャーにも、レビュワーにも、コーチにも、トレーナーにも、メンターにもなる。頼み方次第で、いくらでも役割を変えられる。
この本が答える2つの問い
本書が答えるのは2つの問いだ。
● What──After Claude時代の仕事は、どのような姿をしているのか。
● How──その姿に向けて、自分の仕事をどう変えていけばそこにたどり着けるのか。
Whatは景色の話である。第2章体感編では、朝起きてから夜眠るまで、Claudeとともに過ごす一日をできるだけ具体的な情景として描いていく。読者の頭の中に、明日の自分の仕事のイメージが浮かぶことを目指す。
Howは実装の話である。第2章実践編では、Claudeの初歩的な活用方法について解説する。そして第3章では個人の業務をどう自動化・高度化していくか、第4章ではそれをチームでどう活かすかを、順を追って解説していく。
この2つの問いを踏まえた展望が「仕事の未来」だ。第5章では、ヒトとAIの役割モデルと方向性──答えではなく、読者が自分で考え続けるためのヒントをお伝えしたいと思う。
エンジニア知識ゼロでも大丈夫
本書はエンジニアのための本ではない。だから、プログラミングの知識は一切必要ない。営業でも、企画でも、人事でも、広報でも、総務でも、経理でも、経営企画でも、誰もが自分の仕事に置き換えて読めるよう書いた。
主に解説のベースに据えるのは、ブラウザやデスクトップアプリ・モバイルアプリから使えるClaude.aiと、デスクトップアプリから使えるClaude CoworkとClaude Codeである。Claude Codeというとエンジニア向けの機能なのでは?と思われる読者もおられるかもしれないが、エンジニア向けのコマンドラインインターフェースのターミナルの黒い画面は登場せず、コードは一行も書く必要はない。
早速Claudeでどのように仕事が変わるのかを見ていきたいところだが、その前になぜClaudeなのか。なぜ、いまなのか。第1章ではClaudeの基礎知識から始めよう。
【著者紹介】
アクセンチュア マネジング・ディレクター
AI and Data, Japan
アクセンチュア アソシエイト・ディレクター
Digital Core, Japan
アクセンチュア シニア・マネジャー
AI and Data, Japan
アクセンチュア シニア・マネジャー
AI and Data, Japan
アクセンチュア シニア・マネジャー
AI and Data, Japan
アクセンチュア コンサルタント
Supply chain and Operations, Japan
アクセンチュア コンサルタント
Digital Core, Japan
【目次】





