その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は永井康徳(著)、日経ヘルスケア(編)の『 たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル 第8版 2024年度診療・介護報酬改定完全対応 』です。

【はじめに】

 介護保険制度が始まった2000年、私は愛媛県松山市で、在宅医療に特化したたんぽぽクリニックを開業しました。私の開業した頃は、病院での看取り率が8割を上回る時代であり、在宅医療も多くの人にとって身近なものではありませんでした。ですが最近、国が国策として在宅医療を推進してきたことで、在宅医療を実施する医療機関の数は大幅に増加しました。患者さんやご家族に与えられた医療機関の選択肢の幅は広がり、自宅での看取り数も少しずつ増えていきました。しかし、そうした流れにもかかわらず現在の病院での看取り率は、いまだに多くの地域で7割を超えています。在宅医療はずっと発展してきたというのに、なぜこのような状況なのでしょうか? 私はその理由の1つに、医療関係者も住民も、「死」に向き合い切れていないことがあるのではないかと考えます。これから日本が直面する「多死社会」が意味するもの、それは医療だけではどうにも解決できない「寿命」の問題です。寿命がある以上、医学がどんなに発達しても治せないものがあります。多死社会で求められる医療とは、「人は必ず死ぬ」ということを念頭に置いて、老いや死に向き合っていける医療なのではないでしょうか。

 多死社会に向けて在宅医療の役割がますます大きくなる中、その普及を阻害する大きな要因があります。在宅医療制度の複雑さです。日本ではこれまで、外来医療と入院医療を主体として医療制度を設計してきました。そこに改定を重ねた結果、在宅医療制度は診療報酬と訪問看護療養費、介護報酬が複雑に絡み合う仕組みになってしまいました。例えば訪問看護を医療保険と介護保険のどちらから提供すべきか、医療・介護従事者ですら自信を持って答えられないこともしばしば見受けられます。2024年度は医療・介護・障害のトリプル改定となり、分野を超えての連携が強化されるなど、その複雑さはさらに増しています。制度を正しく理解していなければ、患者に適切な在宅医療を提供することができません。私たち専門職の無知は患者にとって罪であるとさえ私は思っています。私たちはプロとして、在宅医療に関わる制度の知識をしっかり身につける必要があると考え、本書を2012年から発行して参りました。診療報酬改定の度に改訂を重ねて、おかげさまで第8版となりました。今回は2024年度診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定のトリプル改定を踏まえ、巻頭カラーで重要な項目を分かりやすくチャートで解説するページを増やし、大幅刷新しました。2024年度診療報酬改定の重要ランキング10を作り、複雑な制度のポイントを明確化しています。

 本書が読者の皆様にとって、複雑な在宅医療制度を理解する糸口となり、理念を大切にしながら、新しい在宅医療の形をイメージしていくきっかけになればと思います。どうぞ、ご活用ください。

2024年6月24日
医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック
永井 康徳

【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示