その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小宮一慶さんの 『プロがやっている これだけ!会計&会社分析』 です。

【はじめに】

 ビジネスパーソンや経営者たちは、会計の基本知識やそれにもとづいた会社分析の方法を知らなければ、経営や事業の状況を把握することも、正しい方向づけを行うこともできません。

 自分の会社や取引先の会社が危ないかどうか。どの事業がどれだけの利益を出し、どれだけの損失を出しているのか。財務の安定性はどうなのか。自社やお客さまの会社の内容を分かっていなければ、正しい判断はできません。株式投資をする場合も、銘柄を選ぶ際に決算状況を表した財務諸表を読めるようにしておけば、損をする確率を下げることができます。

 AI(人工知能)やビッグデータを活用したデジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼ばれるデジタル化の急速な進展によってビジネス環境はますます変化が激しくなっており、経営状況を正確に把握する会計や会社分析の知識はいっそう重要になっています。

 しかし、会計や財務諸表という言葉を聞くと、多くの人は「専門家じゃないからよく分からない」「難しそうだ」という印象を持たれるのではないでしょうか。私自身、これまで会計大学院での講義やセミナー、講演会などでたくさんの人たちに会計を教えてきましたが、苦手に思う人が多いなという実感があります。

 しかし、多くの人が思うほど、会計や財務諸表は難しいものではありません。難しいと感じるのは仕分けなどの財務諸表の「作り方」を学ぼうとするからで、大方のビジネスパーソンは読み方が分かればいいのです。

 基本的なルールと読み方はそれほど難しいものではありません。本書をじっくり読めば、財務諸表を読めるようになりますし、仕事で使える会社分析の基本も押さえることができるでしょう。


 本書では、第1章から第4章にかけて、実際の決算書を使いながら、財務諸表の読み方を解説していきます。そして第5章では、ビジネスパーソンが、最低限身につけておくべき「管理会計」の知識について説明します。

 管理会計とは、本書前半で解説する財務諸表で表される「財務会計」と対をなすもので、部門別の採算を計算したり、製品やサービスを提供するときにかかる経費を正確に把握したり、どれだけ売上げをあげれば利益が出るのかといった採算性を調べたりするときなどに役立ちます。これは会社全体だけでなく、個別の事業や工場ごとのパフォーマンスを見る経営のための会計でもあります。

 財務会計と管理会計をしっかり理解したうえで、最後の第6章では、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)、WACC(加重平均資本調達コスト)といった経営を見るうえで重要な指標について解説します。

 本文内の随所に、「一歩踏み込む」というコラムを設けて応用的な分野を取り上げています。こちらもぜひ参考にし、知識を深めてください。

 なお、本書は、ロングセラーとなった日経文庫『これだけ財務諸表』をもとに、大幅に加筆・修正して再構成を行ったものです。

 本書には、私が経営コンサルタントとして、たくさんの会社の経営を見てきた経験から得られた知見をふんだんに盛り込みました。机上の理論ではない実務にもとづいた解説が、きっと読者の皆様のお仕事に活きると信じています。お役に立てば幸いです。

2021年4月  小宮一慶


【目次】

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