その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大櫃直人さんの『 「伝説のバンカー」と呼ばれた男 スタートアップを圧倒的に成長させる仕事術 』です。

【はじめに】

 「伝説のバンカー(銀行員)」──
 「リアル半沢直樹」──
 最近はいろいろな場面で、私のことをこんな言葉で紹介してもらうことが増えた。
 私は2025年3月末をもって、前身の富士銀行を含めて37年間勤めたみずほ銀行を退職し、新たな道に踏み出した。銀行員時代の仕事ぶりを今でもこうして評価してもらえることは少し照れくさく感じる一方、感謝の思いでいっぱいになる。

 私の銀行員生活の大きな分岐点は、50歳手前で迎えたスタートアップ企業との偶然の出合いだ。メガバンクがほとんど見向きもしなかった新興企業に日本を変える可能性を感じた。

 小説やドラマの銀行員、半沢直樹のように「倍返し」はしないが、ときには行内の反発と闘いながら、名も無き起業家たちに融資し、伴走してきた。いつしか「大櫃(おおひつ)は人に貸す」と言われるようになった。
 そこからメルカリ、マネーフォワード、タイミー、そしてビズリーチを擁するビジョナルなど日本を代表するスタートアップが次々と巣立っていった。私は金融業界におけるスタートアップ融資の先駆者として認知してもらえるようになり、「スタートアップ支援なら、みずほ」というイメージの定着にも何かしらの貢献ができたかと思う。

 一方で、お客さんからは「銀行員らしくない銀行員」とよく言われた。銀行員には付き物の融資の話はいったん横に置き、経営者とのさりげない会話の中から真に伸びる企業を見極めようとした。
 ときには嫌われるようなことでもはっきり言ったり、お客さんのために体を張ったりした。だからこそ、信用してもらえたということもあるだろう。
 こんな破天荒な男を、常務執行役員という行内3番目の地位まで引き上げてくれたみずほ銀行には感謝の思いしかない。詳しくは第3章でお話しするが、私は若手時代に仕事で大きな不祥事を起こし、懲戒解雇寸前の処分を受けた。そんなどん底から何とかはい上がってこられたのは、大事な局面で上司に恵まれたほか、何よりもお客さんからの温かい励ましや応援があってこそだった。

 「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。「人生は何が幸せで、何が不幸せに転ぶか予測がつかないものだ」という意味で、私の人生はまさにこれの繰り返しだ。だから何か悪いことが起きても、最後にはプラスに転じると考えて努力してきた。
 私が銀行員の仕事を通じて経営者たちから何を学び、彼らのどんな逆境を垣間見て、そして自らも悩みながらどのように成長してきたのか。そうした経験をお話しすることは、日々、仕事や勉学に奮闘している皆さんにも何かしらの参考になるかもしれないと考え、この本を書くことにした。

 そんな男の波瀾(はらん)万丈の物語に、これからしばらくお付き合い願いたい。私はコテコテの大阪人なので、関西弁丸出しの部分はご容赦いただければ幸いだ。

【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示