その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は堀公俊さんの『 ビジネススキル図鑑 』です。
【はじめに】
「今あなたはどんなスキルを持っていますか?」
「どんなスキルがあれば、あなたの仕事ははかどりますか?」
「これからあなたが身につけたいスキルは何ですか?」
これらの質問にスラスラと答えられるビジネスパーソンは少ないのではないかと思います。
ある意味、仕方がないことなのかもしれません。山のような仕事を片づけるのに没頭して、スキルについて思いをはせる時間がとても持てないからです。せいぜい、たまにある研修のときくらいでしょうか。
よくあるのが、転職を考えるときになってはじめて、他の会社でも通用するスキルがないことに気がつく、というパターンです。メンバーシップ型の長期雇用が中心の日本企業でよく起こる悲劇です。
ビジネスを遂行する上で必要な技能を「ビジネススキル」と呼びます。仕事で高いパフォーマンスを出すための技術です。しっかりと身につけないと、武器を持たずに戦場に赴くようなもの。人柄とコネとガンバリズムで世渡りしていくしかすべがなくなってしまいます。
これから日本でも、専門性を持つことが求められるジョブ型の雇用にシフトしていくことは避けられません。複雑化するビジネス環境のなか、高度なスキルを持った人材が求められています。ビジネススキルをいかに高めていくかは、個人にとっても組織にとっても焦眉の課題となります。
最初の質問に話を戻します。これら3つの問いを考えるに当たり、共通で必要なものがあります。それは、仕事に必要なスキルの全体像を知ることです。そうでないと、場当たり的に思いついた答えを発するだけになります。
ところが、一つひとつのスキルについて教えてくれる本や研修は山のようにあっても、総合的に語るものはほとんど見当たりません。
仕方なく、偶然書店で見かけた本を手に取ったり、たまたま上司から勧められる研修を受けたりするのが、スキルアップの現状ではないかと思います。これでは、主体的かつ計画的な能力開発ができません。
そこで本書では、ビジネスパーソンが必要なスキルをすべて結集させ、分かりやすく解説することを目指しました。それが『ビジネススキル図鑑』です。
この図鑑では、職種を問わず必要となる50種類(+15種類)のビジネススキルをビジュアルに紹介しています。
そのなかで、スキルの標準的な考え方と具体的なスキルセットを、図解をふんだんに取り混ぜながら明らかにしています。さらに、スキル習得の着手ポイントを解説し、すぐに実践に結びつけられるようにしました。
巻末には、各々の職種で必要となるスキルの一覧表や、さらに学びたい方に向けてのブックガイドもつけています。まさに、ビジネススキルに関する百科事典です。
使い方は第1章に書いてあります。そこだけざっと目を通して、後はお好きなところから読んでください。
順番に読む必要はなく、パラパラとめくってみて、関心のあるところだけ読むので結構です。あるいは、思いついたときに辞書代わりに使うのでも構いません。常に近くにおいて、長く役立ててもらえればうれしいです。
今、私たちは大きな困難と技術革新に同時に直面しています。無事に乗り切るには、仕事のやり方や働き方を根本から見直さざるをえません。逆にいえば、それができた個人や組織が次の時代で活躍できます。
まさにピンチはチャンス。ビジネススキルに磨きをかけ、新たな時代を切り拓く人材を目指して、未知の時代に一歩踏み出しましょう!
2021年7月
堀 公俊
【目次】