その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は田尻望さんの『 「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術 』です。

【はじめに】

 「サボっているわけではないのに、上司や同僚に評価されない」「なかなか部下が育たない」「自社、自部署の業績が上がらない」……。仕事の中で、そんな悩みを抱えていないでしょうか? 私の元には、そのような方がたくさん来ます。しかし、本書で紹介する方法で「ChatGPT」を正しく活用すれば、そんな悩みは一気に解決していきます。現時点で、ChatGPTに関する知識がゼロでも全く問題ありません。実は、本書に書いてあるテキストをまねするだけで、仕事上でChatGPTは使いこなせてしまうんです!

 本書ではChatGPT(などの生成AI)が仕事で活用されるようになるこの時代に、最速、最短で成果を上げていくためのノウハウを紹介します。ChatGPTを使える人とそうでない人の差は、従来の仕事ができる人・できない人というレベルとは異次元の差になっていきます。使いこなせる人の中でも、作業を効率化するだけのツールとして使うのか、成果に直結する使い方ができるのかで、さらに差が付くでしょう。

 分水嶺となるキーワードは、私が新卒で入社したキーエンスという企業の考え方に基づく「付加価値」です。キーエンスは「最小の資本と人で最大の付加価値をあげる」という経営理念を掲げ、そして営業利益率50%以上という脅威の結果を出しています。

 この、成果の肝となる付加価値をつくるために、実はChatGPTを大いに役立てられるのです。これは断言しますが、付加価値創造にChatGPTなどの生成AIを使える人〝だけ〞が今後、飛躍的に成果を上げられる人材になっていきます。

 私はキーエンスから独立した後、一度起業に失敗し、7年前に再度起業をしました。現在は経営コンサルタントとして、年商数十億円規模から数百億円規模の企業のセールスやマーケティング事業のコンサルティングをし、お客さまの付加価値向上に貢献しています。その中では、経験したことがない領域を含め、多岐にわたる業界やビジネス課題に関する情報を迅速に集め、解決策を提案することが求められます。コンサルティングファーム出身ではないので、独学で日々問題解決のための調査をし、仮説を立て、改善を行っていく。その繰り返しの日々でした。

 そんな私ですが、ChatGPTとの出合いは衝撃でした。

 例えば、特定の業界の動向や改善事例などの情報が必要なとき、ChatGPTに質問すると、即座に大まかな答えや有益な情報が手に入ってしまったのです。また、新たなビジネスモデルやアイデアを考える際も、ChatGPTと「会話」を重ねることで多角的な視点が生まれ、自分の発想がアップデートされたのです。部下の育成やチームビルディングの課題に直面したときも、ChatGPTが第三者の視点からアドバイスをくれました。

 2023年3月14日(現地時間)に発表された「GPT-4」(ChatGPTの基盤となる大規模言語モデル)を数時間使ってみて、まず「ChatGPTの使い方をお客さまがマスターすれば、単なるコンサルタントの自分は必要なくなってしまう」と確信しました。だからこそ私は、「遅かれ早かれお客さまもChatGPTを使う。ならば、自分自身が『コンサルタント×ChatGPT』の第一人者となり、そしてお客さまにもChatGPTの使い方をマスターしてもらい、圧倒的な成果を出してもらおう」と考えたのです。私が今、経営コンサルタントとしての業務を拡大し、大手の企業様からもご相談がいただける背景には、ChatGPTの活用が大いに寄与しています。

 ChatGPTから前述した〝魔法〞のような知識やソリューションを取り出し、かつ付加価値を生むための仕事で最大限生かすには、考え方やプロセスを知る必要があります。しかし現状、世の中にあるChatGPTの解説本や講座の内容は、あくまでツールとして「ChatGPTを使う」ことはできても、「仕事の成果に直結させる使い方をマスターする」という部分が足りないと感じています。なぜなら、使いこなす私たちが成果を上げるための「成果直結の原理原則」が語られていないからです。この、成果直結の原理原則を知ったうえで、ChatGPTを的確に使えれば、仕事のスピードと質は異次元のレベルになります。

 私自身、研修の場などでもお話ししていますが、私が教えたChatGPTの使い方をマスターした人の1年後に、私は生身では勝てませんと断言しています。みなさんも本書で解説していくノウハウをマスターすれば、事務処理の効率化や営業活動の改善、さらに戦略コンサルタントが行うような分析・戦略立案や新商品の企画まで、すべて可能になっていきます。

 最大の成果を上げるための具体的なノウハウを、本書でみなさんにお伝えしていきます。

立場によって異なる様々なメリット

 さて、ビジネスパーソンと言っても、一般社員、部下を持つマネジャー(管理職)、経営者など様々です。さらに営業、マーケティング、人事、経理……など、あらゆる立場の人がいます。本書は、どんな人も、それぞれの立場に応じてフル活用できる一冊になっています。立場によって異なるメリットを念頭に置きながら読んでいただきたいので、ここでいくつかの例を解説します。

① 一般社員のあなた

 頑張って仕事をして成果を上げたい、出世したい──。また、仕事の頑張り方が分からず悩んでいる人は、本書で紹介するChatGPTの活用法を実践すれば正直、〝チート〞(ずる)をしているかのように、みるみる成長していけます。「そもそも、自分が分からないことさえ分かっていなかった」が一瞬で解決でき、「仕事ができる!」とはどういうことかを理解できます。仕事ができる人はなぜあれほど楽しそうに働いているのか、仕事の目的は何なのか、これらすべてが分かるようになります。しかも、日々の仕事を時短で終えられるようになります。本書の内容をマスターすれば、1年後には「仕事ができる人だね」と言われるようになる。そんなきっかけと支援になる一冊です。

② マネジャー(管理職)のあなた

 部下を持つ立場のみなさんへ質問です。部下の提案や報告、連絡、相談などに対して「もっと自分で考えてから相談してきてよ」と思ったことはないでしょうか? もちろん私はあります。しかし、疑問点の調べ方さえ分からない部下をむげにはできず、結局は自分の時間が奪われてしまう──。自分の時間と部下の成長を天秤にかけなければならず、忙しい日々を送っていることと思います。もし、本書で解説するスキルを部下が身に付ければ、一人ひとりが自分の仕事の目的、目標を理解して仕事するようになるので、一定以上練り上げられた提案ばかりが上がってくるようになるはずです。しかも、部下が抱いた疑問点はChatGPTを使い、皆が自力で解決できるようになるので、教育のための余計な時間も減ります。マネジャーの立場で、最もストレスに感じる仕事の一つと言える部下指導が、とても楽になるのです

 部下が成果を上げられるようになるので、チームの業績も上がっていくでしょう。ただ、1つだけ注意すべきなのは、ものすごく仕事ができるようになった部下に、立場を逆転されてしまうリスクがあることです。私自身が、私が教えたChatGPTの使い方をマスターした人の1年後に、私は生身では勝てませんと断言しているように、もしみなさんがChatGPTを使うことなく、部下だけが本書を読みChatGPTを活用すれば、ものすごい速さで、仕事で上げる成果が追い越されていくことになります。

 だからこそ! 部下より先に本書を手に取ったみなさんは幸運です。本書を先に読み、ChatGPTを徹底的に活用して、これまで以上の速さで成果が上げられるようになってください。

 なお、マネジャーの立場になると、リスキリングを含め、何かについて新たに学ぶ必要も出てきていると思います。膨大な仕事を抱えていて、あまり時間が取れない場合でも、ChatGPTを活用すれば学習にかける時間を一気に短縮できます。そんな学習のためのプロンプトや流れも本書の中にはふんだんに紹介していますので、ぜひご期待ください。

③ 経営者のあなた

 私自身も経営者ですが、GPT-4が登場した約5カ月前から、本書で紹介するノウハウを実行しています。この短期間で、私自身と私の組織の生産性は一気に2倍以上になりました。経営判断など、日々あらゆるタスクをこなす必要がある経営者の人は、ChatGPTを使いこなすことで、自身と組織の生産性が1.5倍から2倍になることは間違いありません。

 さらに、経営する企業に所属する社員全員が、本書の内容を実行することができれば、組織全体の生産性も圧倒的に上がります。社員全員が、自分がしている仕事の目的と目標を立て、達成するために必要な問題を的確に分析し、最短距離で目的達成に突き進むようになるのです。そんな企業になれば、業績はあっという間に上がります。経営者のみなさん自身が抱えるストレスも減っていくことでしょう。

 ちなみに、本書で紹介するスキルがすべて身に付いていて、実践できている人がいれば、私は年1000万円以上を支払ってでも雇います。なぜなら、それができる人がいれば、会社全体の効率が上がるからです。年商10億円の企業だとしたら、業務効率が10%向上すれば、年商は利益ベースで1億円上がることを見込めます。つまり、経営者のみなさんや社員が本書のスキルを身に付け、実践することは会社の利益向上に直結します。そして、自身や社員の年収アップにもつながっていくのです。

ChatGPTで「キーエンス思考」のサイクルを回す

 今は成長できた私ですが、実はキーエンスに新卒で入社した頃はとても苦労しました。正直、当初は落ちこぼれと言っても過言ではなかったと思います。目の前にある仕事を何とかこなし、「いつになったら完了するのか」と悩む日々でした。入社してから4年間、安心して仕事をした記憶はありません。優秀な同期にはあっという間に置いていかれました。当時を振り返ると、その優秀な同期は、本書で紹介する〝仕事の目的〞を理解して、その目的を達成するために一直線だったのです。一方で私は、仕事の目的を理解せず、たくさんの無駄な「作業」をしてしまっていたのです。

 つまり、付加価値(仕事の目的)をつくる仕事ができていなかったのです。

 そんな私が、なぜ圧倒的なスピードで成果を上げることが可能になったのでしょうか。それは仕事で付加価値をつくり、成果を上げるためには欠かせない、目的をいち早く設定し、目的達成のための問題をあぶり出し、解決を繰り返して目的を達成する──という成果を出すための不変のサイクルを理解し、かつ最速で回していけるようになったからです。このスキルはコンサルタントだけではなく、経営者や社員としても、成果を上げるために必須となるスキルです。

 このスキルは本書の第1章から、詳しく解説しています。そして、ここでみなさんに伝えておきたいポイントは、ChatGPTを使うことで、この成果を出すためのサイクルを、誰でも最速で回せるようになったということです

〝才能〞がなくても成果は出せる

 仕事で成果が上げられないことに対して、生まれ持った才能や、これまでの学歴を言い訳にしてしまう人がいます。しかし、本書を読めば、それらを成果が上がらない言い訳にはしなくてよくなります。

 そして、成果を上げるために大切なのは〝知識〞だと理解できます。例えば、前述の成果を上げるためのサイクルを知っていることも知識です。そして、知識は後天的に身に付けられます。何より、今はChatGPTを活用すれば、世の中にあるほぼすべての仕事で、成果を上げるために欠かせない知識が短時間で得られます。すると、みなさんは「みるみる成長するね」「仕事に慣れるのが早いね」「もうできるようになったの」と言われるようになります。ぜひ、その変化を楽しんで欲しいのです。

 私がコンサルタントとして注意すべきだと思うのは、「自分の仕事で身に付けておくべき知識」を正しく理解していない人が多いということです。例えば、経理の仕事で成果を上げるために、経営論やDX(デジタルトランスフォーメーション)の知識が必要だと、本気で考えている人はどれだけいるでしょうか。実は、経理に関係する作業の効率化、企業の生産性向上のためには欠かせない知識です。しかし、「エクセル(Microsoft Excel)」の知識だけあれば十分だと考え、エクセルのマスターに終始している人がほとんどではないでしょうか。つまり、学ぶテーマ自体が間違っている、もしくは足りないのです。

 「難しそう」という印象から避けてしまっているのであれば、それも勘違いです。例えば、経営論はほとんど四則計算レベルの計算しか出てきません。しかし、総論から各論までを誰かがしっかりと教えてくれるわけではないので、身に付く知識が断片的になり、難しく感じてしまうだけなのです。分からないことがあるときはもちろん、断片的な情報を体系化する目的でも、ChatGPTに質問すればすぐ教えてくれます。ChatGPTを活用できるこれからの時代は、専門書を読むなどして、難しい知識を100%知っておこうと思う必要はありません。そこに時間をかけるのであれば、ChatGPTを使いこなせるようになることに時間を割きましょう。

 私はコンサルタントとして、お客さまにChatGPTの活用を推奨しています。そのときによくある誤解の一つに、情報漏洩などのリスクを恐れすぎていることがあります。第4章でも触れていますが、個人情報などは入力しないように、ルール化しておけばよいと思います。個人や企業の細かい情報を入力しなくても、ChatGPTから有効な回答を得ることは可能です。また、あなたが経営者であれば、あらためて社員の全員がChatGPTを使えるようにしておくことをお勧めします。業績アップのためだけではありません。むしろ今、企業側がChatGPTをはじめとする生成AIの利用を禁止して、ルールも作らないままにしておく方が、リスクが高いと思います。社員が個人的に使った際に、それこそメリットがないのに個人情報や秘匿情報を入力してしまうケースがあるかもしれません。

 企業(の全社員)を「AIネーティブ」(AIを使うことが普通)の状態に変えることは、圧倒的な生産性を生む基礎となります。そして私は、そのメリットはリスクを避けながら実現することが可能だと思っています。

圧倒的な生産性が実現する世界

 私はGPT-4が発表された約2週間後から、プレゼン資料の作成やセミナーで話す内容のたたき台の立案、メールの返信など、あらゆる仕事にChatGPTを使うようになりました。新しい商品や事業などの考察にも使いますし、人事制度などの調査・検討にも活用しています。ChatGPTを味方に付けたことで、仕事の生産性が一気に2倍以上になったことを実感しています。

 私は正直、これは間違いなく〝チート〞だと感じています。本書を読めば、そのすごさが分かるはずです。

 これは私がコンサルタントとして教訓にしている言葉なのですが、私はあるとき、尊敬する人から、「報酬は権威に従う。権威は(○○)能力に従う」という言葉を教えてもらいました。これは報酬は権威のある偉い人(経営者など)によって支払われるものだということです。つまり、報酬の金額を決めるのは偉い人(経営者や、人事評価する上司など)となります。

 しかし、そんな権威でも従うのが〝ある能力〞だと教えてもらいました。私は、何かの権威の元に生まれたわけではありません。だからこそ、その教えは晴天の霹靂(へきれき)でした。そしてその能力は──「状況定義能力」だと教えてもらったのです。つまり、様々な状況を定義することができれば、その能力に偉い人(権威)だったとしても従ってしまうということです。

 例えば、一般社員のみなさんが上司に対して、自分の意見を通すのが難しい状況だったとしましょう。確かに一般社員のみなさんだけの意見では、上司を動かすことはできないでしょう。しかし大口顧客になり得る企業の社長とのミーティングの場を、上司に提案できるとしたらどうでしょうか。上司の目的は、部署の業績アップです。大口顧客と取引できる可能性があるとしたら、それは部署の業績アップのチャンスです。上司自身の目的と合致するわけですから、提案に乗ってくる可能性は非常に高いでしょう。あれ? 一般社員のみなさんが、上司の動きを決めることができていますよね。

 そう、つまり相手の目的を理解し、それをかなえるチャンスという状況をつくれば、たとえ権威がある人でも動かせるのです。この力学をうまく扱う能力が、まさに状況定義能力なのです。「大口顧客となりうる企業の社長との面談はどうセッティングすればいいんだ!」と思われるかもしれませんが、その方法は本書を読み、仕事で実践していただければ分かるようになっています。第5章で詳しく解説していますが、上司の目的を理解し、かなえるために何をすればいいかは、ChatGPTに聞けば大抵分かります。この状況定義能力とChatGPTの組み合わせは、みなさんにたくさんの選択肢(自由)をもたらしていくに違いありません。

 目的をいち早く設定し、目的達成のための問題をあぶり出し、解決を繰り返して目的を達成するサイクルが重要だと前述しました。自分だけでなく、周囲の人も含めた仕事の目的を考えながら仕事をしていると、次第に状況が定義できるようになっていきます

 そして面白いことに、自分や他人の仕事の目的を理解し、それぞれの目的達成のためにどうすればいいかはChatGPTがヒントをくれるのです。ChatGPTの助けも借りながら上司の目的を理解することで、上司が自分自身でできていないことすら、部下である一般社員が提案、あるいは実行にまで移すことができます。すると、上司からは「君がいないと困る」と言われるようになります。そうなれば、出世にもつながっていくことでしょう。「上司を従える」ことで、自分が働きやすい環境をつくれるだけではありません。ChatGPTを活用し、仕事も目的を明確化し、理解を深めることで、成功のスパイラルが生まれていくのです。

さあ、〝ChatGPT無双〞を始めていこう

 ChatGPT(などの生成AI)が仕事で活用される時代になっても、成果を上げるための仕事術の根幹は、実は変わりません。そういった仕事術が身に付いている人はChatGPTを活用することで、より無双状態になることができる、というだけです。

 一方、これまで「自分はあまり仕事ができない」「成果が上がらない」と感じていた人にはチャンスです。本書には成果を上げるための仕事術のコンセプトと、それを実際に学び、実践するためのChatGPTの使い方がふんだんに載っています。そうして「知識」で武装していけば、無双状態にすぐに近づけます。本書では、仕事術の根幹となるノウハウと、ChatGPTの活用法を詰め込んでいます。今、みなさんがどんなスキルを持っているかは基本的に問いません。誰でも本書に書いてあることを実行すれば、すぐに成果が上がります。

 ぜひみなさんも、今日からChatGPT無双をしてください。さあ! 始めていきましょう!

田尻 望
株式会社カクシン 代表取締役CEO


【目次】

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