その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」をご紹介します。今日は森本千賀子さんの『 リミットレス時代の転職術 「選ばれる人」の新常識 』。「プロローグ」をお届けします。

【プロローグ】

「ネット関連企業のサービス開発から、地域活性化支援企業の事業開発室長へ」(30代)
「大手重工系メーカーの営業から、ITスタートアップの営業マネジャーへ」(30代)
「コンサルティングファームから、外食企業の幹部へ」(20代)
「人材関連企業の人事部長から、ITスタートアップのCHRO(最高人事責任者)へ」(50代)
「介護施設の施設長から、リゾートホテル運営会社の経営メンバーへ」(40代)

 これらは実際にあった転職事例です。
 一昔前まで、「異業界への転職は20代が限界」「転職は35歳が限界」などと言われていましたが、昨今、30代、40代、なかには50代でも新たな分野にチャレンジし、転身を成功させているケースは少なくありません。
 本書のタイトルにある「リミットレス」とは、「限界・制約(リミット)がない」こと。「リミットレス時代の転職術」という言葉どおり、「転職」において、かつて存在した限界点や制約は消えつつあります。
 本書を手に取っていただき、誠にありがとうございます。森本千賀子と申します。
 私は30年以上にわたり、「転職エージェント」として活動しています。新卒でリクルート人材センター(現・リクルート)に入社し、企業に対する人材採用コンサルティング、ビジネスパーソンに対するキャリアコンサルティング、転職活動支援などに携ってきました。2017年に独立し、株式会社morich(もりち)を設立。企業とビジネスパーソンの皆さんの橋渡し役として、これまで4万人以上のビジネスパーソン、5000社以上の企業と出会い、2500人以上の転職をお手伝いしてきました。

 この30年の間に、転職市場は大きく様変わりしています。私が転職エージェント業を始めた頃は、転職に対して後ろめたさやネガティブなイメージを持たれがちでした。
 ところが近年、大企業の「終身雇用」が崩れるなかで、転職は誰にとっても「当たり前の選択肢」として捉えられるようになっています。ビジネスパーソンにとっては、勤め先が敷いてくれるキャリアのレールに乗って進むのではなく、個人が主体的に考えて行動していく「キャリア自律」が求められるようになりました。
 中長期的・戦略的にキャリアを築くため、積極的に転職する方が今、増えています。
 かつての中途採用では、同業種・同職種の経験者を求める求人がかなり目につきましたが、冒頭に挙げたとおり、異業種への転職の機会、チャンスも増えています。

 業種・職種の枠を超える転職は「越境転職」とも呼ばれます。その背景には、まず労働人口の減少により人材の確保が難しくなっていることがあります。加えて、産業構造の変化に伴い、既成概念を塗り替えるような変化が起こっていることも挙げられます。
 各企業では、変化に対応するために事業・組織変革や新規事業開発への取り組みを強化しており、業界・業種の垣根を越えて、自社にない新たな知見・スキルや情報を取り入れたいというニーズが高まっているのです。ダイバーシティ(多様性)を意識して、いろんなタイプの人材を採用しなければならないと話す採用担当者、企業経営者も増えています。
 実際に私が転職相談を受けた方に求人をご提案すると、「自分がこんな業界(企業)に行けるなんて」と驚かれるケースが多々あります。こうして今、企業も個人も、業界・業種や職種の枠を超えて、採用する/転職する動きが加速しているのです。

 転職活動でリミットレスとなっているのは、業種・職種の選択肢だけではありません。
 コロナ禍を機に「リモートワーク」が拡大。フルリモートワーク、あるいはリモートワーク+出社を組み合わせたハイブリッド型の勤務形態を定着させた企業が多数あります。これにより勤務地・居住地の制約も緩和されました。実際、東京在住のまま関西エリアなどの企業に転職し、リモートで働くといった事例は、数多く生まれています。
 このほか、「大手企業からスタートアップへの転職」がトレンドになっていたり、以前はほぼ見られなかった「中小企業やスタートアップから大手企業への転職」の事例が増えていたり、これまで男性しか採用されなかったポジションに女性が迎えられたりと、転職におけるリミットがどんどんなくなっていると実感しています。

 さらに、キャリアの築き方そのものが「リミットレス」へと向かいつつあります。
 例えば、これまでとは異なるビジネスを経験してみたい、新しいスキルを身につけたいなどと考えた場合、以前ならまず「社内異動」の道を模索し、叶わなければ転職に踏み切らざるを得ませんでした。
 しかし、昨今は「副業」という手段で他社のビジネスを経験することもできます。副業を解禁する企業が増え、企業と副業希望者のマッチングサービスも広がっているため、転職というリスクを取らなくても新たなチャレンジが可能になっているのです。私が日頃お会いするビジネスパーソンの多くは何らかの副業をしており、副業を活用してスキルアップを図っています。副業で得た経験を活かし、本業で活躍している方も大勢います。
 また、「転職」ではなく「独立起業」の道を選択する方も増えてきました。人材獲得競争が激しくなるなか、企業側にも以前のように「正社員でなければならない」という制約を外し、多様な雇用形態を受け入れる動きが増しています。そこで、専門スキルを活かして個人事業主(インディペンデント・コントラクター=IC)となり、複数企業と業務委託契約を結ぶスタイルで活動し、理想のワークライフバランスを実現している方が大勢います。

 仕事や働き方を考えるうえで見逃せない変化がもう1つ。生成AI(人工知能)の台頭です。これまで人間の手で行われてきた仕事の多くが文章やさまざまなコンテンツをつくってくれるAIに取って代わられているという事実があります。今後、事務仕事(特に、チェックや入力の作業など)のAIへの代替が加速していくでしょう。引き続き人間が担うものとして残る業務においても、そのやり方は大きく変わっていきます。

 1人ひとりの生き方、働き方が根本的に問い直される時代がやってきているのです。
 このような新しい環境で、あなたは、これからどのように働きたいですか。
 これからの人生をどのように充実させたいでしょうか。

 本書では、「リミットレス転職」「リミットレスキャリア」を実現するための方法を3章にわたってお伝えします。
 第1章では、「越境転職」「非連続キャリア」「ジョブ型雇用」「業務委託」「スタートアップ転職」「副業」など、今の時代のさまざまなキャリア構築の手段・働き方をご紹介します。
 第2章では、転職を検討する場合、どのような転職活動の手段があるのかを挙げました。近年、企業の採用手法が多様化しており、求職者にとっては情報収集ルートが増えています。チャンスを広げるため、複数の手段やツールを活用するといいでしょう。
 第3章では、自分らしいキャリアを歩むために意識しておきたいこと、準備しておくとよいことについてお話しします。

 これからお伝えする内容が、あなたのキャリア構築や転職活動において、ご自身のリミットを超え、新たな可能性を広げていくためのヒントになればとても嬉しく思います。

 2024年10月

森本 千賀子

【目次】

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示