その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は三木朋和さん、天野秀俊さん編著の『 データマネタイゼーション 企業の情報資産で稼ぐための教科書 』です。
【はじめに】
あなたの会社や組織には、存在があまり知られないまま保管・蓄積され続けているデータがないだろうか。
顧客との取引記録や従業員に関する情報、製造設備の検査結果、マーケティングの効果測定──など、データは多くの業務活動によって、日々作られる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器が生み出す大量のデータなども加わり、企業が蓄積するデータは今この瞬間も増え続けている。
その多くは業務の改善などに役立てられるものの、中にはシステムの奥底に埋もれるデータも出てくる。社内での価値が認識・共有されないまま漫然と放置されたり、定期的に更新されるものの、その目的や存在意義が曖昧なまま停止や廃棄に至らないケースなど、データが埋もれるには様々な理由があるだろう。長く事業を続ける企業や、多様なビジネスを展開していたり、デジタル化が進んだ企業であれば、なおさら思い当たる節があるかもしれない。
そのままでは使い道に乏しく、保管や運用、セキュリティー対策といったコストをまかなえない「埋もれたデータ」。掘り起こして新たな加工や分析を加えることで、新たな企業の「資産」として課題解決や成長に結びつけることは可能だろうか。
答えはイエスだ。
1つの解は、データから得られる知見を経営課題の解決や素早い意思決定に生かす「データドリブン経営」だ。多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略において、社内に蓄積されたデータの活用は重要な経営テーマの1つだ。一部の先進企業では、社内全体で利用できるデータの分析基盤の構築や、データ分析の専門家であるデータサイエンティストの採用・育成なども進んでいる。
そしてもう1つの解が、本書のタイトルである「データマネタイゼーション」である。聞きなれない言葉だが、英語のスペルでは「Data Monetization」で、「データで稼ぐ」こととほぼ同義と言ってよい。
企業や組織がデータを単にためこむのではなく、社外に販売して収入を得たり、自社の経営改善に活用したりするなどで、新たな価値の創造につなげる取り組みを指す。多くの企業が社内にデータを保有している現在、データマネタイゼーションのチャンスは、業種や規模を問わず幅広い企業に広がっている。
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とはいえ、一言でデータマネタイゼーションといっても、具体的なイメージがわかなかったり、自社に当てはめた際に、次のような疑問が頭をよぎるケースもありそうだ。
・ 「虎の子」であるはずの自社データを社外に売ってしまって、本当に大丈夫なのだろうか。
・ そもそも社内に分散するデータの全てを一元的に把握するのは不可能ではないのか。
・ データは自社の製造や取引に特化した形式で作っており、見直しに必要な費用や手間に見合うメリットはあるのか。
・ どんな組織や人員を担当に据えればよいのか。
・ 仮にデータビジネスを新事業として展開する場合、既存の事業とのすみわけはどうすべきか。
・ パーソナルデータをマネタイズしたいが、個人情報保護に関する規制の厳格さが増すなかでサービスをどう設計すべきか。
・ 実際にデータを販売するとして、売り先をどのように見つければよいのだろう。
・ いったい何をどこから、どのように手をつければよいのか見当もつかない──。
データマネタイゼーションの入門書である本書では、こうした多くの疑問に答える実践的な解説を試みた。取り巻く環境の著しい変化に対応し、最新の潮流や事例も多く紹介している。
これまでデータマネタイゼーションの幅広い範囲をカバーしている書籍は特に海外では多く出版されてきたが、日本ではあまり増えてこなかったようである。データマネタイゼーションの普及には、そうしたノウハウの共有や浸透が不可欠と考え、本書では実際に準備や導入、運用を進めるうえで役に立つ情報を、できるだけ平易な表現かつ幅広い観点で紹介する。データがもたらす新たなビジネスチャンスと、そこに至る道筋を示すことも本書の目的の1つだ。
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すでにデータは、現代社会における重要資源として欠かせない存在だ。企業の持つデータの価値もまた膨大であり、知的財産などを評価する米オーシャン・トモの試算では、米主要企業の株式時価総額の約9割はデータなどを含む無形資産に由来しているという。データマネタイゼーションとは、そうした無形資産の価値の最大化を目指す1つの試みでもある。
米スタンフォード大学のリチャード・ダッシャー教授は、デジタル化による第3次産業革命(第1次は機械化、第2次は同大量生産)の次に来る第4次は、デジタル化による新たな価値の創造になると2000年代前半に指摘した。データマネタイゼーションがもたらす価値創造がどれほどか、もうすぐ明らかになる。
■本書の構成
本書はデータに関わる全ての人を対象とするデータマネタイゼーションの入門書だ。企業の情報資産で稼ぐために必要な情報を5つの章で紹介していく。
第1章「データマネタイゼーションの実像」では、豊富な事例とともにデータマネタイゼーションの潮流を明らかにし、現在に至る歴史を振り返る。取り巻く環境や、影響の大きいテーマを取り上げながら、今後の姿を探る。
第2章「データマネタイゼーションの点検」では、導入に向けた準備段階として、企業が保有するデータの種類や、分析などの活用法を紹介する。データマネタイゼーションに取り組む意義や実践的なポイントも示す。
第3章「データマネタイゼーションはいろいろ」からは、導入に向けた実践編だ。自社の事業における位置づけや、新規事業として取り組む場合のパターン、データによる価値の提供方法などを解説する。自社のデータマネタイゼーションがどのパターンになるかを確認しながら読み進めてほしい。
第4章「データマネタイゼーションを成功に導く」では、過去の事例の分析でわかったノウハウを「勝ちパターン」として紹介。自社の悩みや課題の解決につながるヒントを示す。
最終章となる第5章「方法論としてのデータマネタイゼーション」では、特に初期段階で重要になる5段階のフェーズを詳しく紹介する。アイデアの抽出から、事業計画を立てて、成長に結びつけるプロセスを、順を追って詳細に示した。
【目次】


