その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は今野浩一郎さん、佐藤博樹さんの『 マネジメント・テキスト 人事管理入門(新装版) 』。「まえがき」をお届けします。

【まえがき】

 本書は2つの思いをもって書かれている。ひとつは、人事管理は経営管理の一分野であるという視点に立った、「いまを知ることができる」標準的な教科書を書きたいという思いである。これまでも多くの人事管理の教科書が出版されているが、労働経済、労使関係あるいは社会学などの観点を重視する教科書が多かったように思うし、経営学の観点から書かれた教科書でも「いまを知る」という点では力不足であったように思う。

 もうひとつは、本書を出発点にして、より専門的なことを勉強したり、研究したりするための標準的な教科書になればということとともに、これから企業で働く学生にも、いま企業で働いている人にも、人事管理の仕組みを理解するうえで役立つ教科書であってほしいという思いである。そこで、あまり理論的なことに偏らずに、もっぱら企業は何をねらって、どのような仕組みを作り、それがどのように機能しているのか、という人事管理の実際とその背景を知ってもらうことを心がけた。

 こういうと、人事管理を知らなくても企業のなかで生きていけるといわれそうであるが、いま、働く場としての企業は大きく変化しつつある。企業のなかで働き、それで得た報酬で生活の糧を得る。誰でも普通に経験することなので、誰にとっても「どのような仕組み」のもとで働き、「どのようにして」報酬を得るかは職業生活を送るうえで重要であるし、職業生活を上手に送るには、それについて正しく理解しておくことが必要である。

 これまでは、このことに無頓着な人が多かったのではないか。終身雇用制や年功制のもとで、会社に入りさえすれば、雇用は守られ、給与も上がると信じられてきたからである。しかし、現実は大きく変わりつつある。30年も40年も働きつづけることになる職業生活のなかで、会社は絶対につぶれないし、リストラに遭うこともないと確信できる人は何人いるだろうか。これからの時代は、自分のキャリアは自分で考え、自分で作っていかなければならない。そのためには、人事管理の仕組みを十分に理解することが必要である。「自分で決めて、自分で行動する」には、行動する場を律している仕組みを頭のなかに入れておかねばならないのである。

 本書は、こうした思いをもって、われわれ2人がこれまでの研究活動のなかで蓄積してきたこと、考えてきたこと、経験してきたことを教科書としてまとめたものである。2002年に第1版を出版し、これまで多くの研究者、学生、そして企業の方に活用していただいたが、この間に人事管理や人事管理を取り巻く環境に多くの変化があった。それを踏まえて第2版は各章に用意した事例をいまを反映する内容に書き換え、この第3版は統計データをできる限り最新にするとともに、いま人事管理上問題になっているテーマの解説をtopicとして追加した。第1版、第2版にも増して多くの読者に「この本を読んだから、いまの人事管理の骨組みが分かった」と感じてもらえることを願っている。


 第3版の改訂にも我慢強く付き合っていただいた日経BP日本経済新聞出版本部の堀口祐介さんに深く感謝したい。


 「マネジメント・テキスト」シリーズの装丁・レイアウト一新にともない、『人事管理入門(第3版)』も記述に変更を加えず、レイアウトのみ新たにした。新しい革袋に盛ることでさらに多くの読者に読んでいただければ幸いである。

2022年3月
今野浩一郎
佐藤 博樹


【目次】

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