その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は浅川和宏さんの『 マネジメント・テキスト グローバル経営入門(新装版) 』。「新装版まえがき」と「まえがき」をお届けします。

【新装版まえがき】

 本書は、2003年に刊行した『マネジメント・テキスト グローバル経営入門』をレイアウトを一新して同一内容で新たに提供するものである。本書の刊行以来、グローバル経営をとりまく環境はさまざまな変化を見せてきた。新興国の台頭、国際ベンチャーの躍進、デジタル革命による国際ビジネスの変化、SDGsへの取り組み、ダイバーシティーとインクルージョンの重視、コロナ禍のもたらしたグローバル経営への影響など、枚挙にいとまがない。そしてその間、これらの今日的トピックスを扱った多くのグローバル経営関連の書物も刊行されてきた。

 その一方で、学問分野としてのグローバル経営研究は、この20年間、細分化されたテーマにおける実証研究の方向へと向かったため、膨大な精度の高い実証分析が蓄積された半面、グローバル経営全体を俯瞰するの理論そのものは発展が停滞した時代でもあったといえよう。そのため、本書で紹介されたグローバル経営理論は、今日においても入門レベルとして依然修得すべき内容に変わりはない。

 本書で紹介したグローバル経営理論のなかには刊行当時かなり斬新なものも含まれていたが、約20年後の現在、日本企業にとってようやくこれらの理論が現実のものとして必要な段階に至ったといえる。それゆえ、グローバル経営を学ぶ学生や実務家にとって今こそ本書で取り上げた本質的考え方を理解する必要があるだろう。

 その意味で、本新装版では、最近の具体的現象に合わせて改訂は行わず、グローバル経営の本質的考え方に特化した本書のこれまでの内容をそのまま掲載している。したがってこれから本書をはじめて手にする読者の方々は、是非ともまずここで紹介するグローバル経営の基本的考え方を体系的に理解したうえで、より今日的なトピックスの考察を行っていただきたい。最後に、グローバル経営のロングセラーとなった本書を、出版約20年後に新装版としてデザインチェンジしてくださった日経BP日本経済新聞出版本部の堀口祐介さんに改めてお礼申し上げたい。

2022年2月
浅川和宏


【まえがき】

●組織論・戦略論をベースに体系的に解説

 本書は、グローバル経営の論理を解説する入門書である。学部でグローバル経営を学ぶ学生に十分理解できるようにわかりやすく記述しているが、内容的には大学院修士課程の学生の教材としてもふさわしいレベルとなっている。企業実務につきながらグローバル経営の論理に関心を抱いている方々にも参考になるような内容づくりにも努めた。

 政治、社会、文化など各国のさまざまな条件が考慮されているため、グローバル経営は非常に複雑に見える。それだけに、どのような論理で組織が構築され、戦略が実行されているかの理解が不可欠である。そのような前提に立ち、本書では、グローバル経営の理論フレームワークを網羅するように心がけた。

 本書の特徴は、グローバル経営は単なる国内のオペレーションの延長ではないとの前提に立ち、組織論・戦略論をベースに体系的に解説している点にある。各章は、重要な基本的視点をまず提示したうえで、あらたな動向に関する筆者のパースペクティブを示すというパターンで、一貫性を持って記述されている。欧米での数多くの先行研究の成果を踏まえ、最新の理論もできる限り紹介した。

 したがって本書の構成は、従来の教科書と異なり、マーケティング、生産、財務などといったファンクション別の章立てとはなっていないが、欧米のビジネススクールなどで教えられているグローバル経営の標準的内容を盛り込んだテキストとして、学部学生はもとよりこれから内外のMBAを志す方々にも有益であろう。

 さらに、現在岐路に立つ日本企業のマネジャーの方々にとっても、本書で紹介したグローバル経営の論理は有効だと考える。海外のビジネスマンと互角に勝負するためにも、グローバル経営の理論武装はますます重要となろう。多くの日本企業はすでに海外に拠点を設置してはいるが、いかなる基準でどのような付加価値活動を海外のどこに「配置」し、かつそれらを世界規模でいかに「調整」すべきか、未だ模索中であるといえよう。オペレーションを海外に出すことは国際化の第一歩であるが、グローバル経営の本当の課題に直面するのはこれからであるといえよう。そこで必要なものは、なによりも世界に通じるグローバル経営の理論武装ではないかと思われる。

●本書の読み方

 本書はとくに次のように使ってほしい。グローバル経営についての考え方全般を学びたい方は、数々の引用文献や個々の理論フレームワークの細部にはこだわらず、とにかく本書をざっと一読し、全体像を理解していただきたい。またグローバル経営理論についての理解を深めたい方は、とくに第Ⅰ部をじっくり学習し、引用文献にも適宜目を通していただきたい。そしてグローバル経営の各論に興味をお持ちの方は、第Ⅰ部を簡単に読みつつ各自の関心テーマの章に進んでいただいても構わない。

 なお、本書では前述のとおり多くの研究文献を引用しているが、それは入門レベルの学習の後でより高度な学習を志す方への道案内の意味を込めている。とくに学生の読者は早い段階からなるべく原典にあたって学習を進めていただきたい。また、グローバル経営に関する学期末レポートや卒業論文の作成にあたっても役立つように、参考文献リストをできるだけ充実させるよう努めた。本書をじっくり学習することで、グローバル経営に関する研究の最新動向をある程度理解することができる。

 また、各章には、その章の内容を要約した「本章のポイント」、case、columnなどが挿入されている。適宜参照されたい。


 本書執筆にあたっては、多くの方々にお世話になった。グローバル経営分野の先学、同僚をはじめ、多方面の方々との知的交流は本書を纏め上げるうえで大変役立った。また参考文献を入念にチェックしていただいた長田悦子さん、索引キーワードを拾っていただいた菅原聡、三好廉昭、武元勝の諸君、そして文書整理等を手際よくこなしてくれた村田亜紀子さんにも改めて感謝したい。そしてとくに雑事にかまけて筆が滞りがちな筆者を励まし辛抱強く見守って、適切な進捗管理をしてくださった日本経済新聞社出版局の堀口祐介さんにお礼を申し上げたい。

2003年11月
浅川和宏


【目次】

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