その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大塚啓二郎さんの『 なぜ貧しい国はなくならないのか(第3版) 正しい開発戦略を考える 』です。「第3版はしがき」をお届けします。
【第3版はしがき】
多くの方々が本書の初版と第2版を読んで下さり、第3版まで出版できるまでになったことは、筆者にとってこのうえない喜びである。「はしがき」で言いたいことのほとんどは、初版と第2版ですでに書いたので、付け加えることはない。第3版では、第2版の最新データを2015年から2020年まで延長したことが、大きな変化である。この第2版の改訂版は、北京大学出版社から中国語で、またSpringer Nature社から英語で出版されることになっており、海外の読者からどんな反応があるかは大きな楽しみである。
第3版の最大の特徴は、第8章に「低迷する日本経済への応用」を加えたことである。著書全体のストーリーとは少しずれているように思われるかもしれないが、実はそうではない。筆者自身は、アフリカの貧しい国の開発と、アメリカや日本のような先進国の発展の問題との間に、本質的な差はないと常々思っている。残念ながら依頼がないのだが、地方創生のアドバイザーを依頼されたら、著者は喜んで引き受けたいと思っているし、目算もある。著者のこれまでの経験と知識は、地方創生に役に立つと確信しているからである。
しかしながら、筆者が「こうすべき」だと思っていることと、日本が実際に「やっていること」は、あまりにも異なっている。このままでは、日本経済は停滞を続け、先進国から転落して中進国になってしまう可能性が高いと思う。まわりのアジアの国々からは見下されるようになるだろうし、十分な所得がないので老後の生活はどんどんみじめになり、安全保障もおぼつかなくなるであろう。日本が貧しい国にならないためにはどうしたらいいか、新たに第8章で議論することにしたのである。日本の将来を考えている多くの読者に、読んでいただきたいと願っている。
本書は、「経済学を知らない人でも読める開発経済学の本」であるが、最近、専門家向けに筆者の40年にわたる研究の集大成の著、『「革新と発展」の開発経済学』(東洋経済新報社、2023年)、Transforming Poor Economies: Effective Development Strategies for Agriculture and Industry, Edward Elgar, 2024を出版した。研究書なので、「経済学を知らない人」には辛いかもしれないが、計量経済学的分析をカットし、数式を使うようなテクニカルな部分は最小限にして、読みやすくしたつもりである。開発というテーマに関心のある方には、一読をお勧めしたい。
第2版に続き、油谷章代さんに図表のデータのアップデートをお願いした。また、改訂にあたっては、日経BPの堀口祐介氏にお世話になった。記して感謝したい。なお第2版と同じく、第3版を教科書として使っていただける先生方には、お名前と所属と講義名を otsuka@rieb.kobe-u.ac.jp に連絡していただければ、パワーポイントファイルを進呈したいと思っている。
2025年10月 大塚啓二郎
【目次】



