その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は下 寛和さんの 『プライシングの技法』 です。

【はじめに プライシングの世界へのいざない】

 少し前にレシートの写真を撮るだけでお金がもらえるアプリが話題になった。
 家のゴミ箱に捨てるだけだったレシートを情報として提供すると1枚最大10円で買い取ってもらえるというものだ。報酬は決して高くないが発想は従来とは一線を画している。当時メディアで目にして感心したことを覚えている。

 気がついたら財布の中にレシートがたまっていくように、私たちは毎日消費行動を繰り返している。外食やコンビニでの買い物、カフェに立ち寄ったりと、1日の中で何度もお金を支払うシーンがある。
 そして私たちは支払いのつど、知らず知らずのうちに値段に対して商品・サービスの価値が見合っているかを目利きしているのだ。その意味で私たちは一人ひとりが価格のプロであり、プライシングはとても身近なテーマだといえる。

 一方で、価格を決める側の目線で見るとどうだろうか。ハイブランドのシャツや自動車、1億円を超える不動産の値段を誰がどのようなロジックで決めているか、どのくらいの利幅をとっているかなど、意外と値付けのカラクリは世に知られていない。
 身近でありながら知らない世界も多い。プライシングとはそういった不思議なテーマである。本書が謎多きプライシングの世界を知るきっかけとなり、プライシングという技法を駆使することで、日本企業の業績向上や経営体質強化の一助となれば幸いである。

 なお、本書で取り上げる事例はB2C(企業と個人の取引)の商品・サービスを中心としている。一部、B2B(企業と企業の取引)も取り上げているが、B2Bの値決めには企業間の力関係や取引量、価格交渉が絡むため解説が複雑化する。そのため、わかりやすさとプライシングの基本を理解いただくという観点で、読者の皆さんになじみのあるB2Cを題材にして話を進めたい。


【目次】

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