その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は沼田昭二さん、神田啓晴さんの『 業務スーパーが牛乳パックでようかんを売る合理的な理由 』です。
【はじめに】
牛乳パックに水ようかんを入れて売ろう、とは、普通は考えない。
水ようかんだけではない。杏仁豆腐、プリン、コーヒーゼリーやパンナコッタ、レアチーズなどのスイーツを、すべて牛乳パックに入れて売っているのが、「業務スーパー」だ。
1リットルの牛乳パック入りだから、当然、でかくて重い(重量約1キログラム)。口を開いたら密封できないから、一度開けたら食べきるか保存の方法を自分で考えないといけない。
「これ、誰が買って、どうやって食べるの?」
ところがこれが人気なのだという。まず、単価がめちゃくちゃ安い。パッケージには「7~8人分」と記されていて、価格は311円(23年10月時点)だから、1人当たりおよそ40円。いくら安くても食べきれないのではもったいない、と思うところだが、ネットを検索すると出るわ出るわ、「業務スーパーの水ようかんのおいしい食べ方」が。余った分は冷凍すればいいし、凍ったままアイスのように食べたり、レンジで温めて形をアレンジし、生クリームを掛けたり、溶かしきっておしるこの汁にしたり、と、活用法は様々だ。
この他にも、容量1キログラムのポテトサラダとか、500グラムの冷凍ブロッコリーとか、豆腐パックに入った冷凍チーズケーキとか。個性的というか、ちょっとクセの強い「変」な商品が業務スーパーの店頭には並んでいる。
基本的には大容量で日持ちするものが多く、価格も安い。そこで「こんな商品がある。こう使えばコスパがいい」と、ネットで情報を交換しつつ、使いこなしている人が増えて、それが昨今の「業スー」ブームを支えている。もともとは業務用と大家族向けにと始まった業態が、ネット時代にも適応して新しい顧客を開拓し続けている格好だ。
この「業務スーパー」をフランチャイズ方式で展開するのが、1981年に沼田昭二氏が創業した神戸物産。同社は99年までは兵庫県南部でたった2店舗のスーパーを運営する中小企業だった。
業務スーパーのFC1号店の開店は2000年。そして23年後の今、時価総額は1兆円を超える(23年10月12日終値)。売上高は4068億円(22年10月期)で24期連続で増収。業務スーパーの店舗数は全国1038(23年9月時点・直営店は3店舗のみ)にまで広がった。
筆者(神田)は、偶然にも神戸物産の創業の地、加古川市に近い神戸の出身で、業務スーパーの前身となったスーパーはよく使っていた。だが業務スーパーは、あまり独身男性に縁がある店でもないと思っていたので、大人になってからは何度か利用しただけだった。取材のため近所の店舗に行ってみると、そもそも店内が普通の食品スーパーと全然違うことに驚いた。店の中央に大きな冷凍食品の売り場がどんと置かれ、商品の多くが段ボールのまま陳列されている。暖色の照明で彩られた他店と比べたら殺風景、とも思えるが、大賑わいのお客さんは気にする様子もない。そして、そこで売られているよそでは見たことのない商品の数々──。
店も変なら、商品も変。でも、だからこそ業務スーパーは伸びている。
本書は21年2月号から日経トップリーダーで連載中のコラム「業務スーパー創業者 沼田昭二 利益を生む鉄則」を基に、追加の取材や合計30時間以上におよぶ沼田氏へのインタビューの内容を加えたものだ。業務スーパーを見ていて感じる「変」の裏側には、もうけを生み出すための沼田氏流の「ドル箱作り」の思想がある。
本書の目的はただ1つ。その沼田氏の思想を具体的な事例を通して解き明かすことだ。なぜ牛乳パックで水ようかんを売るのか。その合理性にきっと驚かれることだろう。
【目次】


