その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は間瀬英之さん、身野良寛さんの『 量子コンピュータまるわかり 』です。
【はじめに】
量子コンピュータと聞いて、「今のコンピュータよりも桁違いに高速なコンピュータ」「IBMやグーグルなど海外を中心に開発が進んでおり、日本でも競争が激化していると新聞記事で読んだ」「実際の業務で利用できるまで、まだ何十年もかかると聞いたことがある」などと漠然としたイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
また、実際のところ、「量子コンピュータの現在地はどこなのか」「どの企業がどのようなユースケースを検討しているのか」といった疑問を持つビジネスパーソンも多いと思います。量子コンピュータが広く社会で利用されるには、乗り越えるべき課題がたくさんありますが、今後、技術が指数関数的に進歩して、それらの課題が解消される可能性があります。
アマラの法則をご存じでしょうか。われわれは、技術が与える社会や経済への影響について、短期的には過大評価を行い、長期的には過小評価をする傾向にある、というものです。指数関数的に成長を続ける技術に対して、リニア思考で未来を予測しては打つべき手を見誤ってしまいます。正しく技術を評価し、活用するためには、最新動向を追い続け、その仕組み・本質を学ぶことが重要です。
本書の目的は、ビジネスパーソンが本書を通して、量子コンピュータの全体像の把握、最新の技術や活用動向への理解を深め、自社の経営戦略や事業立案に役立ててもらうことです。
第1章は、量子コンピュータの全体像を把握できるように、実用化の現在地や、2種類に大別される量子コンピュータの概要、ハードウェアの仕組みを解説しました。第2章は、クラウドプラットフォームとソフトウェア開発キットの動向、代表的な量子アルゴリズムの概要について記載しました。第3章では、量子コンピュータを開発するハードウェアやソフトウェア企業、スタートアップの動向、産官学コンソーシアムの動向を紹介しています。
第4章は、各国(北米、欧州、アジア・オセアニア)の政策動向、標準化団体の動向、特許の動向を記述しました。第5章、第6章では、金融、化学、情報、製造分野における民間企業や大学・研究機関の実際の取り組み事例を解説しました。
最後の第7章では、量子コンピュータの未来と題して、克服すべき課題、今後のロードマップとマイルストーン、人材育成、技術進化の方向性、量子コンピュータ業界の展望を考察しました。
「量子コンピュータはマイクロソフトがスライドで発表したことだが、私は本当に理解できない。私は物理や数学について、かなりの知識を持っている。だが、スライドの内容はまるで象形文字。それが量子コンピュータだ」
これは、2017年にマイクロソフトが量子コンピュータのビジョンを提唱した際に、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで同社の共同創業者ビル・ゲイツ氏が語った言葉です。このように、量子コンピュータは非常に難解ですが、本書は大学で物理や数学を未習の方でも抵抗なく読めるように、わかりやすく丁寧な説明を心がけました。
本書がビジネスパーソンにとって、量子コンピュータの現状を理解し、利活用の検討の一助となれば幸いです。
2023年11月
間瀬英之
身野良寛
【目次】





