その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は長澤哲也さんの『 これだけは知っておきたい 取適法 下請法から中小受託取引適正化法でこう変わる 』です。
【はじめに】
「良い製品・サービスであっても、安く調達するのが当然だ」
「受注者はコストを削り、値下げ競争を行うのが当然だ」
「下請けは元請けに従うのが当然だ」
──これらは、実際に口に出すかどうかはともかく、多くの経営者や発注担当者において、これまで共通して持たれていた意識ではないでしょうか。しかし今、このような意識の変革が求められています。
このように言われると、「コストを下げるよう努力するのは当然であり、競争を否定しようとしているのか」とお怒りの方もいらっしゃるでしょう。競争は経済の基本原理です。発注先を競い合わせて、その結果、無駄なコストを削ることは、たしかに当然のことです。
しかし、「価格は下がって当たり前」というデフレ経済が長く続き、「発注担当者の仕事は委託先から値下げを勝ち取ることだ」というマインドが刷り込まれていないでしょうか。それだけだと、発注企業が提供する製品はいずれコモディティ化し、外国製品に市場を奪われるか、革新的な製品に市場を取って代わられることになりかねません。
企業の持続的な成長にとって重要なのは、不断のイノベーションです。イノベーションは、自社のみで行うには限界があります。企業は、外部の事業者と協業することを通じて、革新的な製品を生み出し、また、革新的なコスト削減を果たすことが期待できます。
企業にとって、外注先を、単なるコストダウンの手段としての「下請け」ではなく、イノベーションを実現するための「パートナー」と位置付けることは、サプライチェーン全体の成長にとって欠かせない視点です。これからの競争に勝ち残るには、デフレマインドを前提としたコストダウン思考から、価値創造思考への転換が求められることでしょう。
外注先と共同でイノベーションを実現するには、その前提として、外注先との取引を適正なものとする必要があります。外注先が提供する価値に見合った適正な対価を支払い、不合理な負担を負わせないという「当たり前」の取引が行われなければ、外注先との信頼関係は生まれません。
取適法とは、外注先のうち、規模の違いにより取引上の立場が弱くなりがちな委託先について、取引が適正なものとなるよう規律する法律です。旧下請法は、2026年、取適法に生まれ変わりました。その際、変わるべき「取引慣行」として示されたのが、冒頭に記した「意識」でした。取適法は、取引におけるパラダイムシフトを図ろうとするものなのです。
本書では、取適法のエッセンスをできるだけ分かりやすく解説することを心掛けました。現場の方からよく質問されるポイントや具体的な事例を盛り込みながら、取適法の「これだけは知っておきたい」知識を厳選してコンパクトにまとめた入門書です。本書により、一人でも多くの方が取適法の意味を正しく理解して、ご自身の業務や自社の発展に役立てていただけると幸いです。
2026年1月
長澤哲也
【目次】




