先が読めない世の中を生き延びるには、「声がかかる」ことが不可欠だ。そのために求められるのが、「周囲から必要とされる力」だと言えるだろう。 『なぜか声がかかる人の習慣』 は、その力を習得するための方法を伝授する一冊だ。3回目の今回は、著者の高橋浩一さんに、声がかかる人の4つのタイプについてお話を聞いた。(聞き手は、日経BP編集者の雨宮百子)

「声がかかる力」は働き方の自由度を上げてくれる

雨宮百子・「日経BP」編集者(以下、雨宮) 今回は、声がかかる人の4つのワークスタイルについてお聞かせいただけますでしょうか。

高橋浩一(以下、高橋) 声がかかるというのは、自分の身近な人から直接的に声がかかる場合だけではなく、「この人を紹介してほしい」と間接的に声がかかったり、知り合いが他の人に紹介してくれたりというケースもあります。さらにその先には、「世の中から声がかかる」というケースもあります。例えば、見知らぬ人から取材や相談の依頼がくるような場合ですね。

 そうした「声がかかる人」のことをインフルエンサーということもできますが、僕はこの言葉だけでは表現できない部分もあると思っていまして、そのあたりも本書に詳しく書かせていただきました。

雨宮 高橋さんはこうした「声がかかる人」には、プロフェッショナルな組織人、売れっ子副業ワーカー、仕事を選ぶフリーランス、身軽な経営者という4つのワークスタイルがあると述べられていますね。

高橋 はい。そしてこの4つのワークスタイルをそれぞれ実践する人は、「世の中から声がかかる」という最終段階までいったときに、「いつ」「誰と」「どこで」「どんなふうに」働くのかということを選べるようになります。働くうえでの自由度が上がるのです。

「声がかかる」状態になると、自分で自由に働き方を決められる
「声がかかる」状態になると、自分で自由に働き方を決められる
画像のクリックで拡大表示

雨宮 4つのワークスタイルについて、具体的に教えていただけますでしょうか。

高橋 ざっくりと言うと、働くときの所属が「自分の会社か、他人の会社か」、そして、「個人で稼ぐのが得意なのか、組織で稼ぐのが得意なのか」。この視点で分類をしています。

 まず1つ目は、プロフェッショナルな組織人。分かりやすく言えば、Twitterなどで個人名と会社名を出して発信をしていて、かつ名前が売れている人ですね。『1分で話せ』(SBクリエイティブ)の著者であるヤフーの伊藤羊一さんなどがその例です。

 組織とセットで名前が売れているこのようなケースでは、個人の名前を出すことが会社のメリットになりますし、個人としても会社の名前を出すことにメリットがあります。組織との間ですごく良い関係ができているのですね。

雨宮 次に、売れっ子副業ワーカーはいかがでしょうか。

高橋 他人の会社に所属しているけれども、その所属先を明らかにしないままで稼いでいる人ですね。例えば『転職と副業のかけ算』(扶桑社)の著書で有名になったmotoさんは、現在ではキャリアや本名も公開していますが、当初は伏せていました。ただ、それでも影響力があるし、どんどん声がかかる。こうした人を、売れっ子副業ワーカーとしています。

雨宮 近年では、SNSなどで有名になって本を出版するような、このワークスタイルの方が増えていますね。3番目の、仕事を選ぶフリーランスについてはいかがでしょうか。

高橋 自分の事業をしていて、自らの職人芸で食べていくというパターンの人たちですね。統計によると、組織で勤めているときよりも収入が増えたというフリーランサーは、実はそれほど多くありません。自由を得る代わりに会社員時代並みの収入は諦めているという人が多いようです。

 ただ、もちろんそういった人ばかりではなく、仕事を選べるのでどんどん稼げるという人もいます。たくさん声がかかるので、その中から自分がやりたい仕事を好条件で選ぶことができる人ですね。

雨宮 自由で楽しそうな働き方ですね。

高橋 そうした人たちは、「個の時代」にうまく乗っています。SNSにもフィットしていて、自分のブランドを前面に出していくことができます。ただし、誰もがすぐにそうなれるというわけではないのですよね。

雨宮 最後は、身軽な経営者ですね。

高橋 世界的に見てもそうですが、日本でもこの数年で、スタートアップの道に進む人が増えてきました。資金調達をして、そのお金を使って急スピードで成長していくというやり方ですね。

 しかし僕は、必ずしも急成長を目指さなくても、例えば自分や家族の生活が成り立つ程度の収益を目指すというのもありだと思っています。ある程度の自由を得た状態で、身の丈に合った事業を回していく。コロナ禍の影響もあり、このスタイルは今後ますます増えていくのではないでしょうか。

雨宮 昔と比べると起業のハードルも下がっていますしね。

 高橋さんはこのワークスタイル分類について、いずれかのスタイルに属さなければならないということではなく、こうした要素を軸にして自分の立ち位置をグラデーションで捉えていけばいいと主張されていますね。

「声がかかる力」は「個人としての営業力」

高橋 「個の時代」「副業解禁」などといわれると、世の中の流れにあおられて、独立や副業をしなければと考える人もいます。しかし、どのような働き方をしていても、人から声がかかる度合が上がっていけば、自由度は高くなっていく。そのようにして自分で選べる範囲が広がっていくということが大事なのだと思います。

雨宮 ありがとうございます。では、この3回目のまとめをお願いします。

高橋 「声がかかる」というのは、必ずしも、有名にならなければできないことではありません。もちろん、そうした要素もあるに越したことはないのですが、本書では、人から必要とされること、そして、誰とどのように働くかといった選択を自由にできるようになることなどに焦点を当てて、「声がかかる」ということを考えてみました。

 「声がかかる力」は、「個人としての営業力」ともいえるのかもしれません。コツをつかめば誰にでも手に入れられるものですので、ぜひ本書を参考にしていただければと思っています。

構成/谷和美

音声でこの記事を楽しみたい人は…