管理職に就いたけれど、自信が持てない、悩みが尽きない…何かヒントはないか──そんなときぜひお薦めしたいのが、市原義文さんの著書『いつも結果を出す管理職が必ずやっている80のこと』です。本書に一貫している、簡潔で分かりやすく、真っすぐに届く言葉は、どのような経験から導き出されたのでしょうか。市原さんご自身に語っていただきます。今回は1回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

失敗あってこその「転ばぬ先のつえ」

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 今回から、『 いつも結果を出す管理職が必ずやっている80のこと 』を取り上げます。ゲストには、本書の著者であり、経営コンサルタント、またシャイン&コー代表取締役社長の市原義文さんと、編集を担当された小田舞子さんにお越しいただきました。

市原義文(以下、市原) よろしくお願いします。

小田舞子・日経BP(以下、小田) よろしくお願いします。ではまず、私から市原さんのご紹介をします。日産自動車や外資系大手コンサルティングファーム、またローソンなどで、多数の新事業の企画立ち上げに従事されました。ポイントサービス「Ponta」を企画立案したのは、市原さんなんです。そして現在は、経営コンサルタント、またシャイン&コー代表取締役社長として活躍されています。実は、市原さんと私はすごくお付き合いが長くて。

様々な企業で「管理職」を請け負い、活躍してきた市原さん。その経験から導き出されたノウハウが本書には詰め込まれています
様々な企業で「管理職」を請け負い、活躍してきた市原さん。その経験から導き出されたノウハウが本書には詰め込まれています
画像のクリックで拡大表示

市原 小田さんとお会いした20年くらい前は、外資系のコンサルタントをしていましたね。現在も、経営コンサルタントとして様々な企業のコンサルティングをしますし、組織の中に入り込んでマネジメント代行もしています。本書はシャイン&コーの代表取締役として書きましたが、マネジメント代行の延長として企業に入ったときには、この本の中身とまったく同じことをしています。

尾上 管理職という仕事のアウトソースも請け負っているわけですね。

市原 COO(最高執行責任者)やCAO(最高管理責任者)もやっていました。マーケティング本部長として、商品開発を請け負ったこともあります。

 企業からのニーズは様々ですが、例えば「新商品が出来ないから作ってほしい」と言われ、よくよく社内を見ると、そこにいるスタッフの活用がうまくいっていないことがあります。その場合、「他の知見を持った会社とつなげればうまくいきそうだ」となれば、そういう会社を探してきて、つなげることも。つまり社内のリソースだけでうまくいかないなら、外部のリソースとうまく組み合わせればいいのです。問題の本質的な原因は何かを探して、それに見合う対応策を取ると、業種や業界など関係なく、やれることが多いと思います。

尾上 この本のテーマでもある「管理職」という仕事には、共通している部分があるということですね。

市原 そうですね。管理職の人たちというのは、本書でいう課長や部長などの中間管理職の人たち、そしてさらに上の人たちです。いろいろな企業に行って思うのですが、自分の部下にいかにうまく振る舞ってもらうか、動いてもらうかによって、成功するかしないかが変わってきます。私は自分が管理職として中間管理職をまとめてきた経験もあるので、それをいろいろな視点から本書にまとめました。

尾上 ポイントサービスの「Ponta」を成功させた一方、必ずしもうまくいった話ばかりではないとも書かれています。

市原 はい。失敗や心の傷ともう一度向き合い、それを活字にする作業を通して改めて考えてみると、「やはり、あの当時こういうことをもっとやっていればよかったな」という思いが心の傷の本質になっていることが多くて。そういった思いを「転ばぬ先のつえ」みたいな形にできたらと思い、「80のこと」を提案しています。自分もたくさん失敗してきましたが、失敗から学ぶことは多いです。

「管理職」って何? 不安を払拭したい

尾上 小田さんは20年来のお付き合いがある市原さんに管理職というテーマで本を書いていただいたわけですが、本書を通して、管理職について改めて考えたことはありますか。

小田 今、男女共に「管理職罰ゲーム」と言われていて、管理職にネガティブな印象があると取材を通じて聞いていました。そしてそれが自分の問題意識にもなりました。でも、管理職ってすごくやりがいがあるし、楽しそうでもある。一方、管理職って何をやっているか分からないところもありますよね。

 そのような疑問や不安を払拭するために管理職の経験が豊富な方に分かりやすく書いてほしいと思ったとき、市原さんが思い浮かんだのです。でも最初は、市原さんのなさっていることはすぐにイメージしづらい部分もあり、私が携わっている「日経クロスウーマン」というウェブメディアの管理職特集で取材して、3時間くらいお話ししたんですよね。

市原 次の日にまたZoomで1時間半くらい話したので、インタビューは4時間半くらいでしたね。

小田 そうなんです。市原さんのパーソナルヒストリーはとても面白くて、しかも複雑でバリエーションに富んだ経験をされています。そして管理職への向き合い方となる軸について、より知りたくなりました。管理職としてやることは実際には80以上あると思うのですが、「これをやれば取りあえず合格」というものを市原さんに教えてほしくて、1冊にまとめた形ですね。

管理職が罰ゲームになってしまう理由

尾上 市原さんも、管理職はみんなが目指すポジションではなくなってきていると感じますか。そしてそれはなぜなのでしょう。

市原 これは私の考えですが、デフレのときに管理職が便利に使われていたという面があると思います。例えば、一般の社員だったら残業代が付くけれども、管理職だったらいらないよね、とか。残業代が付かないから、会社としてはコストが変わらないわけです。「君は管理職なんだから頑張れ」ということもあったでしょう。そうしてどんどん投資規模が小さくなり、大きな仕事を動かせる管理職は少なくなってしまった。

 そうなると、「あの人みたいになりたい」という管理職のロールモデルがどんどん減ってしまいます。他にも複合的な要因が絡まり合い、今は「管理職になって、こんなことをしてみたい」と考える人が減ってしまったのかなと思います。

 私自身、管理職は大変でしたが、振り返ると、あのとき管理職をやって本当によかったと思うことが多いですし、周囲には「すごい」と思える人もたくさんいました。最近は「罰ゲーム」と言われているかもしれないけれど、5年後、10年後に「あのとき管理職をやっていてよかった」と思えるときがくるでしょう。そのことを伝えられないのは非常にもどかしく感じていたし、失敗したとしても、その後必ず「やってよかった」と思えるときがくると信じて、本書を書きました。

文/三浦香代子 構成/山崎 綾、市川史樹(日経BOOKプラス編集)

音声でこの記事を楽しみたい人は…