Twitterのフォロワーは12.5万人、副業でつくったメディアを10億円で売却した、元会社員のmoto(戸塚俊介)氏。新刊『WORK 価値ある人材こそ生き残る』の刊行を記念して、青山ブックセンター本店(東京・渋谷)でトークイベントが行われた。イベントではmoto氏が考える「市場価値を高める方法」について詳しく語られた。本記事では、その一部をご紹介する。

<前編から読む>

仕事をただするだけではなく「最終的にどうなりたいか」を考える

『WORK 価値ある人材こそ生き残る』には、「やりたいことを伝えないとチャンスは来ない」という話が書かれていました。motoさんはいつからそれを周囲に伝えるようになったのでしょうか。

moto・戸塚俊介氏(以下、moto):僕は新卒で入社したホームセンターからですね。入社初日から「将来は店長になりたいです」と言っていました。最初の仕事がレジ打ちだったんですが、与えられた仕事だけこなしていたらアルバイトと変わりません。ですので、仕事の幅を広げるために、「お店の売り上げの見方を教えてください」とか「従業員の採用に関わらせてください」などと、本来の業務と近い領域の仕事からもらえるように上司にお願いしていました。今思えば、新卒だから許されていた部分があるかもしれませんが、自分がやってみたいことや、知っておきたいことを周囲に伝えたことで、いろいろなことを教えてもらうことができました。

 とはいえ、例えば中堅の社員の人が、エンジニア未経験の状態で「エンジニアをやりたいです」と周囲に伝えても、希望は通らないと思うので、まずは自分の仕事の周辺の業務かつ、エンジニア業務に近いことから取り組むのがよいと思います。あるいは、副業などでエンジニアの経験を積むというのも一つの手ですが、「エンジニアになって、自分はどうしたいのか?」という視点も忘れずに考えておく必要があります。

<span class="fontBold">moto(戸塚俊介)</span><br>1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターに入社後、リクルートやスポットライト(現:楽天ペイメント)など複数社に転職し、営業部長や事業責任者などを務める。会社員として働きながら、自身の転職経験を基にしたウェブメディア『転職アンテナ』を立ち上げ、2021年4月に上場企業であるログリーへ事業を売却。現在はmoto株式会社の代表取締役を務める。著書『転職と副業のかけ算』(扶桑社)はベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」にノミネートされた。Twitterのフォロワーは12.5万人で「本質的なキャリアや働き方が分かる」として、SNS(交流サイト)でカリスマ的な人気を誇る。
moto(戸塚俊介)
1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターに入社後、リクルートやスポットライト(現:楽天ペイメント)など複数社に転職し、営業部長や事業責任者などを務める。会社員として働きながら、自身の転職経験を基にしたウェブメディア『転職アンテナ』を立ち上げ、2021年4月に上場企業であるログリーへ事業を売却。現在はmoto株式会社の代表取締役を務める。著書『転職と副業のかけ算』(扶桑社)はベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」にノミネートされた。Twitterのフォロワーは12.5万人で「本質的なキャリアや働き方が分かる」として、SNS(交流サイト)でカリスマ的な人気を誇る。

moto:資格を取るとかスキルを身に付ける、という目標や目的を持つのも大切ですが、「最終的に自分はどうなりたいか?」を考えることも必要です。もしエンジニアになれたら、在宅で仕事ができるようになる、給料が上がる、転職の選択肢が広がるなど、目先のメリットは多くあるかもしれません。しかし、エンジニアになることをゴールにしてしまうだけではもったいない。その先のキャリアをどうしていきたいか、エンジニアになることでどんなキャリアを歩みたいか、まで考えてみてほしいです。

 会社員としての職務というのは、キャリアや人生における目的を達成するための手段にすぎません。自分のキャリアにおけるゴールやなりたい姿を考えてみてください。

「仕事ができる」とは何か

本の帯には、「目の前の仕事に全力を尽くすことがあなただけの価値に変わる」という力強いメッセージが書かれています。自分だけの価値をつくって、仕事ができる人になるには、どうしたらいいでしょうか。

moto:「仕事ができる」という定義って曖昧ですよね。「これができたら、仕事ができると言える」という決まりは、会社や人によって違うので、僕は「成果を出す過程で学んだことを血肉にできているか」という点が大切だと思っています。

 これまでの仕事でどんなミッションを与えられ、どう難局を乗り切ってきたのか。その結果をどう見ているのか、同じことをするなら何をするのか。一つの仕事における一連のプロセスの中で、その人の価値はつくられていくと思います。自分の頭で考え、試行錯誤した経験が自分自身の価値になるのです。

仕事のやり方や課題に対し、素直に疑問を持つ

よく「優秀な人ほど素直だ」と言われますが、なぜなのでしょうか。本の中でも素直さは大事だと書かれています。

moto前回の記事でも少し話しましたが、上司に頼まれた仕事に対して「この仕事のやり方で本当にいいのか?」「もっと効率化できないか?」という疑問や違和感を持つ、という意味での素直さも大事なんですよね。言われたことをそのまま実行する素直さも大切ですが、本当にこれでいいのかと立ち止まって、自分なりに思考を巡らして考えることも必要です。また、感じた違和感を周囲に相談できる、という点にも素直さは表れます。違和感に対して素直になることで、周囲の意見をもらったり、自分の頭で考える機会を得られたりするので、成果の最大化につながるのではないでしょうか。

 これは僕の経験ですが、素直さというのは、仕事の課題に対しても役立つことがあります。僕が営業をしていたときは、クライアントが持つ課題に疑問を持つようにしていました。

クライアント自身が課題だと思っていることが、本当は違うところに問題があるかもしれない、ということですか?

moto:はい、そうです。僕は、クライアントの企業から「新卒学生のエントリーが集まらない。集客の時期を間違えたことが原因だ」と言われたことがありました。「確かにそうですね、来年は集客の時期を変えましょう」と言えばそれで済んでしまいますが、僕は「本当に集客の時期が悪かったことが原因なのか?」と、自分が素直に思ったことも調べるようにしていました。本当は時期ではなく、リーチする手法に問題があったのではないか、同じ時期に募集していた他社はどうなのか、など、事実を確認した上で、再度提案をするようにしていました。

 営業はお医者さんと同じような感じで、本人が「喉が痛いから風邪だ」と言っていても、「本当は別の病気が隠れているかもしれない」と考えて事実確認をしてから結論を出す方が確実に課題を解決できます。言われたことに対して素直に行動するだけでなく、言われたことに対する違和感に素直になることも大切なのではないかと思います。

誰が言ったかではなく、何を言ったかを考える

本の中で、働く上では保身よりも成果を優先することも大事だと書かれています。

moto:はい、僕がリクルートに転職した初日に、「転職したばかりのお前から、今のチームにダメ出しをしてほしい」と部長から声をかけられたことがあります。でも、新参者の僕が入社早々にダメ出しをして、チームの雰囲気を悪くするのは申し訳ないので、もう少し働いてからにさせてください、と伝えました。すると部長は「それはお前が嫌われたくないだけの話だと思うよ。自分がどう見られるかより、組織としてあるべきは何か?を考えろ」と言われたのです。これは衝撃的でした。自分がどう見られるかとか、上司にどう評価されるかを気にして働くのではなく、組織にとって何が一番良いのかを考えて行動することが大切なのだと学びました。

 誰が言ったかではなく、何を言ったかを考える、ということの意味がよく分かった気がします。自分の保身より成果を出すために必要な意見を出すことが、組織で成果を出す人に共通していることかもしれません。

(写真:BsWei/shutterstock.com)
(写真:BsWei/shutterstock.com)

(構成:梶塚美帆=ミアキス)

日経ビジネス電子版 2022年3月29日付の記事を転載]

仕事に探される人になろう!

本当に「安定」した働き方とはなんでしょうか?
それは、「仕事に探される人」になることです。どの会社にいようとも、あるいはフリーでも、市場価値の高い、本当に仕事ができる人間になることが、結局いちばん安心です。

では、そうなるにはどうしたらいいのでしょうか。
それは、「自分だけの経験」を重ねることです。目の前の仕事に一生懸命になりましょう。それを一つひとつ重ねることで、確固とした自分だけの価値ができていくはずです。

★給料はもらうものではなく、稼ぐもの
★会社名は錯覚資産
★誰もやりたがらない仕事はチャンス
★「意志」のない受け身の人間は、いつまでも仕事ができない
など、自分の価値を高める70の考え方をお伝えします。