『 数学女子 智香が教える 「数字に強い人」の仕事の進め方 』(日経ビジネス人文庫)の刊行を記念して著者・深沢真太郎さんのトークイベントが三省堂書店神田神保町本店にて開催されました。会場から寄せられた「数字で考えることが苦手で、悩んでいる」という相談への意外な回答とは?
『 数学女子 智香が教える 「数字に強い人」の仕事の進め方 』の刊行にちなんで、読者の皆さんから寄せられた質問に答えます。
最初に「ストーリーありき」で考えない
Q1 深沢さんのお話 では、人間がする仕事は「1 計測」「2 計算と分析」「3 意味づけ」「4 伝える」の4つで、1 → 4の順番に行うとのことでした。しかし、最初にストーリーありきで、それに意味づけし、都合のいいデータを集めて、計算する……と4 → 1と逆算するアプローチもあるのでは?
深沢真太郎(以下、深沢) これについて、僕の答えは一貫して「ない」です。4 → 1へと逆行することはありません。なぜなら、僕の考えとしては「物事を定義しないとスタートできない」からです。最初に「答えありき」で始まることはないですし、そこから定義して、分析し、体系化して、それを個々に合わせて伝えるという順番が揺らぐことはありません。
「なぜ?」と聞かれると困るのですが(笑)、数学を学んできた人間だからでしょうね。それぐらい「数字」と「順番」にこだわっています。
Q2 最近タクシー広告で、ある女性タレントが「知性とは黙ること」と語っているのを目にしました。SNSでも話題になっていましたが、この言葉についてどう思いますか。今はSNSなどでの誰かの発言に、皆が脊髄反射的に即答する傾向があります。だから、「黙る」ということが注目されているのでしょうか。
深沢 これは「余計なことを言わないのが知性である」という意味合いでしょうか。僕が実際にその広告を見ていないので推測になりますが、時と場合によっては「自分の言葉で話すことこそが知性」だと思います。知性には黙る一面もあるけれども、黙ってはいられない一面もある。「真の知性」とは、今は「黙るべきか」「自分の言葉で話すべきか」を見極められることなのかもしれません。
なぜ、「黙る」ことが重視されるのかを考えると、今はSNSで炎上したり、ディスり合戦になったりすることがよくありますよね。僕も、完璧に自制できるわけではありませんが、「数字」を扱っている以上、ブレーキをかけるように気をつけています。エスカレートしていいことは一つもありませんからね。あえて沈黙することを選ぶ。
ただ、こう言うと「数字は冷たい」「数字を扱っている人はクール」と誤解されがちです。とにかく楽しそう、面白そう、愉快、エモいといった面を見せないと受け入れてもらえないので、その点にも注意しています。
数字は「おでん」における「カラシ」の役割
Q3 昔から「数字で考える」ことが、とても苦手です。仕事で初めてSNS広告を任され、商品を売ったことがないし、どうしたらいいのか毎日悩んでいます。「数字で物事を考える」上で一番大事にすべきことは何ですか。
深沢 これは読者を代表した声ですね。まず、「数字で物事を考える」「数字を言葉の主役にする」という、その発想を一度捨てましょう。今までやったことがないのに、難しいですよね。人間は「嫌だな」と思っていることは、どれだけ頑張ってもできません。これは断言できます。
では、どうすればいいかと言うと、まずは身近なことに数字を入れて話してみてください。数字を主役ではなく、脇役や添え物にするのです。たとえるなら、数字を「おでん」ではなく「カラシ」にするイメージです。
先輩や同僚と話すとき、1日1つでいいので、数字を入れてみましょう。相手に時間を取ってほしいとき、「ちょっといいですか」ではなく、「10分ほどいただけますか」と言ってみる。少しずつ会話に数字を入れられるようになると、相手の反応がよくなってきます。
相手が口を開くたびに「何で?」「えっ、本当に?」「具体的には?」「どのぐらい」といった面倒くさいツッコミを入れられることも少なくなるはずです。
本来、人は「どうして?」「本当に?」「どのぐらい?」といった質問はされたくないんですよね。それを回避するために、少しずつ会話に数字を入れていく。そうすると考え方が変わり、行動が変わってきます。
生産性の高い人は「数会話」が得意
いきなり「数字で物事を考える」のは大変ですが、今お話ししたように「日常会話に少し数字を入れてみる」のであれば、ハードルが高くないと思います。そのうちに数字を会話に入れることが楽しくなってきたら、しめたもの。
僕はこれを「数会話」と呼んでいます。「数字」で「会話」するから「数会話」です。
僕の経験上、生産性の高い会社や楽しそうに仕事をしている人を見ると、「数会話」が上手なケースが多いです。もし、上司が「数会話」が好きなら、相手に合わせたほうがいい。
こびるわけではなく、「相手に合わせたコミュニケーション」は基本ですよね。
「本当に?」「どのぐらい?」といったツッコミが入りそうなのであれば、事前に具体的に答えられるような数値を用意してから会話する。そうすると必然的に数会話になり、「数字で物事が考えられる」ようになってきますよ。
取材・文/三浦香代子 構成/酒井圭子(日経BOOKSユニット) 写真/稲垣純也
『 数学女子 智香が教える 「数字に強い人」の仕事の進め方 』
今、武器となるのが「数字で語れる習慣」。ビジネス数学・教育の第一人者が、会議・報告・提案・営業で役立つ数字の使い方を、業務効率化や損益判断、広告効果、マーケティング、意思決定などを題材にやさしく解説。生成AIを生かす質問力も身につく実践的な一冊です。
深沢真太郎著/日本経済新聞出版/990円(税込み)


