ソフトウェアエンジニアが、マネジメント職に進むのではなく、技術力を武器に「超上級エンジニア」として生きるための指針を示す『 スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ 』。ZOZO VPoEの瀬尾直利氏がその読みどころを示します。

 「スタッフ」という言葉を目にすると、すぐに「職員」を連想されるかもしれません。しかし、本書『スタッフエンジニア』における「スタッフ」の意味は全く違います。スタッフエンジニアはシニアエンジニア(上級エンジニア)よりも上のランクのエンジニアを指すので、スタッフを「超上級」と捉えることもできますが、より適切な日本語としては「参謀」という言葉が近いでしょう(どうやら、将軍を支える「杖(つえ)」から「参謀」の意味が派生したようです)。

 本書は、スタッフエンジニアを典型的な4つのタイプ「テックリード」「アーキテクト」「ソルバー(解決者)」「右腕(ライトハンド)」に分類したうえで、それぞれの役割とそこに至るための方策を教えてくれます。読者がもし、シニアエンジニアの延長線上にスタッフエンジニアがあると考えているのであれば、それは全くの誤解であると教えてくれます。テクニカルスキルを磨くだけではスタッフに到達できないことは、特に本書の第2部で示されている現役のスタッフエンジニアたちの体験談を読むとよく分かるでしょう。

 日本ではまだ「スタッフエンジニア」という呼称は一般的ではありませんが、日本のIT企業でマネジャーとエキスパートという別々のキャリアラダー(キャリアアップの道筋)を分けて用意している事例は増えつつあると思います(私の所属する ZOZOもそうです)。本書を読めば、エンジニアがテクニカルエキスパートの道を登り詰めて活躍し続けるためのヒントおよび戦術をつかむことができるでしょう。

<評者> 瀬尾 直利(せお・なおとし) 株式会社ZOZO VPoE
光学機器メーカーにて組み込みシステムの開発に携わった後、2012年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2019年SREスペシャリストとして株式会社ZOZOテクノロジーズ(現株式会社ZOZO)に入社。2022年4月よりVPoEに就任。現在は、技術本部 本部長 兼 VPoEとして全社の技術戦略策定やエンジニア組織開発を推進。社外活動として、Ruby、 Fluentdのコミッターを務める。

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